第二十話 お母さんに抱きしめられて/第一章追加詳細設定
見事ゴッフレードを倒すことが出来たビーチェとジーノ。
力を使い果たし地面に寝転がっていますが、二人の表情はとても
ビーチェがちょっと泣いちゃいましたけれどね。
ウスルラの防御魔法はすでに解除されましたが、街はシーンと静かです。
そこへバルとウルスラがやって来て二人を
「二人ともよくやった。やれば出来ると俺は信じていたぞ」
バルはしゃがんで、いつもよりずっと頭がくしゃくしゃになるくらい二人を撫でました。
「うっふっふ……」
「えっへっへ……」
ウルスラは浮いてる杖に座ったままこう言います。
「あなたたちのコンビネーションは素晴らしかったわ。どれだけ仲良しなのかしら。うっふふふふ」
「え? あ……」
「はははは……」
ウルスラが
確かに
すると、ルチアさん、パウジーニ伯爵、メリッサ先生が現場へ駆けつけてきました。
「ビーチェ! ジーノ! バルさまぁ! ウルスラさぁん!」
「おーい!! 野盗は全滅したのかあ!?」
「皆さん無事ですかあ!?」
三人が到着すると、ビーチェとジーノが寝転んでいる姿を見て青ざめています。
特にジーノは両腕が血まみれになっていますから。
ルチアさんは心配してバルに尋ねました。
「ど、ど、どうして!? 二人は無事なんですか!?」
「心配ない。こいつらは二人だけで野盗の首領ゴッフレードを倒したんだ。十年前の
伯爵がそれを聞いて身体が震えています。
ルチアさんとメリッサ先生もウルウル。
「――こ、この子たち二人だけでやったのか?」
「そうだ」
「ありがとう。本当にありがとう―― クッ……」
伯爵は半泣きになって二人に礼を言いましたが、感極まりそれ以上の言葉が出てきませんでした。
(あ…… 俺いっぱい悪党を殺しちゃったけれど、伯爵がそういう反応ならやっぱりいいのかな……)
「ジーノ…… こんなに血だらけになっちゃって…… 今回復魔法を掛けますね。お嬢様はビーチェをお願いします」
「わかりましたわ」
メリッサ先生とルチアさんが回復魔法を掛けようとしましたが……
ウルスラがいつの間にか亜空間魔法で出した試験管のような瓶を二本手にし、杖から降りて二人の元へやって来ました。
「それには及ばないわ。二人にはこの特製超パワフル回復ソーマを飲ませるから」
試験管の中にはまるで栄養ドリンクのような黄色い液体が入っていました。
ウルスラはそれを両手で一本ずつ持ちフリフリさせながら見せました。
「そ、それなら間違いなく治癒出来そうですわね」
「さっ これはお嬢様がビーチェに飲ませてあげて。私はジーノに飲ませるから」
ウルスラは試験管の一本をルチアさんに渡すと、彼女はジーノの顔の近くでしゃがんで飲ませようとしました。
「これを飲めばたちまち元気になって怪我の痛みも無くなるわ。ゆっくり飲みなさい」
「う……」
(うう!? ぱんつ! ウルスラのぱんつがこんな近くで丸見えだ! 暗くてちょっとわかりにくいけれど、太股の間に紫色の布が!! すっげぇ、初めて見た…… あんな色のぱんつがあるのか…… お尻に食い込んでる…… え? ちょっと透けてないか? クソッ 何で今が夜なんだよっ あの布の向こう側は何があるんだ!?)
「ゴクッ ゴクッ ゴクッ――」
(ぷぷぷっ ソーマを飲みながら見てる見てる。若い男の子の反応って面白いよねえ。私のパンチラはゴッフレードを倒したご褒美だから、飲み終わるまでじっくり堪能しなさい。それにしてもパッチリ見開いている目と鼻の穴がぷくぷく膨らんでるの、ウケるぅ!)
ウルスラがニヤニヤしながらジーノにソーマを飲ませていますが、何なんでしょうね。
飲み終えてウルスラが立ち上がると、ジーノはとても残念そうな表情をしていました。
「おっ 腕の痛みが消えた…… 何だか急に力が湧いてきたような……」
「ゆっくり立ってみなさい」
ウルスラに言われたとおりジーノは関節を気にしながらゆっくり動き、立ち上がりました。
「ビーチェ大丈夫? もう立てるの?」
ビーチェもソーマを飲み終えたようで、ルチアさんに手を取ってもらいながらヨロヨロと立ち上がりました。
「むむっ!? なんか戦う前より元気があるみたいだ」
「あたしもだよ!」
するとウルスラがニコニコしながら二人の前に立ちはだかりました。
「じゃ、回復ソーマの代金は一本二百万リラね」
「「へっ?」」
なんと、ウルスラは回復ソーマを飲ませた後で超高額の代金を請求してきました。
彼女の正体は血も涙もない魔女なのでしょうか。
「あ…… ああ…… この前のジャイアントボア倒したお金で足りるかな……」
「ど、どうしよう。家を直すからってとーちゃんに全部あげちゃった……」
と言いながら、二人はオロオロしています。
それなのにバルはクククッと横で笑っている理由は?
「え? 軽い冗談のつもりで言ったのに……」
「ウルスラひどおおおい!!」
「ほっ なんだあ。冗談だったのかよ」
ビーチェは頬を膨らませてプンスカ、ジーノはホッと胸をなで下ろしてました。
バルは冗談だとわかっていたのですね。
(この子たち…… 純粋すぎるわ。こんな田舎だからやっていけるかも知れないけれど、この先悪い大人に騙されないか心配ね)
「でも他人相手の商売で二百万リラで売っているのは本当よ。それくらい強力なソーマなんだから怪我や疲労から肌荒れまで全部完璧に生まれたままのようにね」
「ありがとうウルスラ!」
「ホント元気モリモリになったよ!」
「それは良かったわ。うふふ」
それを聞いていたルチアさんとメリッサ先生はこそこそと何か喋っているようですよ。
(ちょっと先生、生まれたままに戻るんですってよ。私の貯金で足りるかしら? 知ってたらボナッソーラで服を買いすぎなかったのに……)
(お嬢様はまだお若いから良いですよ。ああ、二百万リラか…… 貯金崩しても買えるかどうか…… でも欲しいなあ)
だそうです。
二人とも若いのに、人間の女はいつまでも歳を取りたくないのですよ。
私は神ですからその心配は無いですけれどね。
え!? ババ臭いですって!?
「それじゃ、すぐお母さんに知らせに行こう!」
「俺もとーちゃんとかーちゃんに、勝ったぞって言ってくる!」
ジーノとビーチェは一目散に自分の家へ駆けて帰っていきました。
この二人、心はまだ親に依存したいのですね。うふふ
ウルスラは杖を手に持ち、自分が凍らした賊たちやゴッフレードの遺体を眺めてこう言いました。
「さて…… 明るくなる前にこいつらを何とかしなくちゃね」
「向こうにもジーノが倒したバラバラ死体があるぞ」
「そう。街中だと片付けが大変なのよねえ。この街の自警団だけじゃとても……」
そう言ってウルスラは伯爵をチラッと見ました。
伯爵はビクッと小さくなって言います。
「ウルスラ様…… よろしくお願いします…… 埋葬場所は森の近くに耕作放棄した土地がありますのでそちらへ……」
「はあ…… わかったわ。こんなことをするのも久しぶりね。ねえバル」
「やっぱり俺もやるの?」
「当たり前でしょ。こーんな可愛い女の子が暗闇の中で一人死体処理ってある?」
「――あー、いいや。何も言うまい」
「ちょっとバル! 今思ったこと言ってごらん!?」
「知らん。さっさと始めるぞ」
「ウキーーーーーッ!!」
ウルスラは大人気なく
その後バルとウルスラは百人を超える賊の遺体を、強力な念動力で伯爵が指定した土地へ運びました。
バルが気功波で大穴を開けたところに遺体を入れ、ウルスラが数千度の超高温魔法であっという間に灰にしてから埋めました。
後日伯爵は、墓標の代わりに討伐の記念碑をそこへ建てました。
そうそう。南北の
---
ペコラーロ家にて。
戦いの前にナリさんはビーチェを心配ないと見送った後、それでも我が子のことですから気が気でなりませんでした。
自分の部屋で無事を祈っていると、階段をドタドタと上がる音がしてきました。
「お母さん! ただいま!」
「ビーチェ……」
いつものように我が子が元気な声でただいまという声が聞こえた時、ナリさんは胸が張り裂けそうになりボロボロと涙が出ました。
また声が聞けたんだと……
「お父さんの敵討ちが出来たよ! ジーノと一緒にね!」
「――良かった…… 本当に良かった…… ううう……」
ナリさんはそれ以上の言葉が出ず、ビーチェを思いっきり抱きしめました。
ビーチェはまるで小さな子供が母親に抱かれているように、安心しきったとても優しい笑顔になっていました。
「あのねえお母さん。お父さんが力を貸してくれたんだよ」
「そうなの?」
「それでさっき空を見ていたら、流れ星が見えてね。お父さんがさよならって言ってる気がした……」
「そうかも知れないね。きっとお父さん、ビーチェに最後のお別れを言ったのかな」
ロマンチックですが、お父さんと本当のお別れだとしたら寂しいですね。
一方、ファビオ君は自分の部屋でグーグーと。
将来肝が据わった大人になりそうです。
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カヴァリエリ家にて。
帰宅したジーノは外の水道で血が付いた腕を洗い流しました。
それから恐る恐ると食卓の部屋へ入ると、未明でも両親と七つ上の兄が揃ってジーノを待っていました。
「あの…… ただいま……」
「ジーノ…… 倒したのか?」
「うん……」
「よく頑張った! うむ……」
ジーノのお父さんはバルと同年代ですがやや細身。
それでも同じように頭をクシャクシャに撫でています。
ジーノはそれを喜びと共に、懐かしさも感じていました。
「あはは、とうちゃんにこんなことされたの久しぶりだな」
「ジーノ…… 無事に帰ってきてくれて良かったよ…… ううう……」
「あああ、かあちゃんどうしたんだよ? 恥ずかしいな……」
今度はジーノのお母さんが彼を力一杯抱きしめました。
男の子は大きくなれば照れくさくて家族とのスキンシップが減っていく家庭が多いですね。
そんな生意気盛りの我が子でも、無事に生きて帰って来たのだからずっと心配していたお母さんは緊張感が
賊が襲来してきた時はジーノがすでに家を出ており、家族は見送ることが出来ませんでした。
ですがバルが彼に修行をつけている理由を家族は承知していますから、街の不穏な空気でそれを察したのでしょう。
「ジーノ、おまえ本当に強くなったな。びっくりしたよ。俺も十年前の事件はとてもショックだった。でも、何も出来なくて悔しかった。だからおまえのことを誇りに思う」
「あんちゃん……」
お母さんに抱かれているジーノに、七つ上のお兄さんが話しかけました。
彼もまた細身であまり身体を動かすタイプではなく、ジーノの元気さを羨ましく思っていたくらいでした。
その物静かな兄が珍しく言葉多く話してくれたのだから、嬉しさもひとしおでありました。
「ジーノ、明日…… もう今日ね。学校休みでしょ? よく休みなさい」
「わかったよかーちゃん。おやすみ」
---
ジーノは自分の部屋へ戻り、そのままバタンとベッドへ寝転びました。
すると彼はズボンの股間を両手で押さえて…… え?
「――さっきからずっと俺の俺が元気すぎて収まらない。かーちゃんに抱っこされたときバレてないよな? 絶対ウルスラのソーマのせいだ。強力すぎんだろ…… うぅぅ……」
なんとジーノの男の子がウルスラのソーマの副作用でギンギンに元気になったままのようです。
あ―― えっ!? ジーノってばズボンを下げてあわわわわわわわ……
ジーノの男の子が…… どひえぇぇぇぇぇ!!
数分後。
――見ちゃいました…… 若い男の子をじっくりと。
私はなんて不純で意志が弱い神なのでしょう。
しかもまだ収まっていません。
ジーノは男の子を
(なんだこれ…… いつもならこれで
――また数分後。
(やっちまった…… よりによって、ボナッソーラでビーチェが裸になったときを思い出してしまった…… いつもならたまに街で見かける娼館のお姉さんのおっぱいとかお尻を思い出すのに……)
――さらに数分後。
(止まらない…… もうやっちまったどころじゃねえよ。この前ビーチェんちの風呂場で見たナリさんの裸を思い出してしまったぞ…… 俺、そんなに見境無いのか?)
――大変です。ジーノの男の子が全然収まりません。
厳しい戦いが終わって休むはずなのに、全然休まらないじゃないですか。
(あれからルチア、メリッサ先生、またウルスラに戻ったけれどまだ俺の俺は元気なままだ。……ちょっとまてよ? ビーチェも同じソーマを飲んだからもしかして今頃は…… 女はどうなるんだあ? 想像出来ないいいい!!)
――あれからジーノは十数回行ってやっと収まりました。
いくらソーマの効果とは言え、若い男の子の精力ってすごいですねえ。
さて次回から第二章へ入っていきます。
話はここからが本番ですよ。
ラ・カルボナーラに現れた黒髪の美女、かつてバルとウスルラがいたパーティーの仲間たち、ガルバーニャ国の王都、バルの故郷ヴィルヘルミナ帝国、ウルスラの故郷カーマネン国、まだまだお話することがたくさんあります。
是非このまま読み続けて下さると嬉しいです。うふふ
◇◇
第一章 人物・用語詳細追加
◯ミローネ(Milone) パウジーニ伯爵領の隣の領地を統治している伯爵
◯イデア(Idea) ミローネ伯爵婦人 切れ長の目の美人
◯カリーナ(Carina) ミローネ伯爵の執事 三十半ばの怖いお局(つぼね)様風女性
◯ブルーノ(Buruno) 盗賊団スパゲッティーニの首領
◯コンスタンツォ(Constanzo) 宿屋の受付にいるエロ爺さん
◯ベルティーナ(Bertina) パウジーニ伯爵家の、黒髪が綺麗なメイド(五年前)
◯ジラルド(Girardo) 亡くなったビーチェの父親
◯ゴッフレード(Goffredo) 十年前にアレッツォを襲撃した野盗集団ソーニョ・ネロ(Sogno Nero)の首領 三メートル超のだるま体型巨体にツルツル頭。正体はヴィルヘルミナ帝国にいる少数部族のヨックモック族(Jokkmokk)
◯ジルド(Gildo) ソーニョ・ネロの副官 細身で黒い鎧を纏っている
◆モンターレ(Montale) パウジーニ伯爵領境を越えてミローネ伯爵領最初の街
◆ボナッソーラ(Bonassola) ミローネ伯爵領の中心になる街
●ゲイティル(Geytil) ヨックモック族が崇拝する巨人の神。
※バルのチャーハン
チィエン国のウーチュアンという街に二年間滞在し、その間に街の食堂で働きながら作れるようになった。アレッツォでは激うまと評判が良い。
※バルの家
街道の裏通りにあり、ペコラーロ家の真裏がジーノの家で、その左隣の二階建ての一軒家。
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