第十二話 あたしの身体を見て!
宿の部屋で、姫ソファーに座っているビーチェがベッドに座っているジーノに問いかける。
メリッサ先生か、それともウルスラみたいな女性が良いのかと。
まさかそんな質問をしてくるとは思わなかったのでジーノは戸惑い、思いついただけの言葉で応えました。
「いや…… まあ二人とも綺麗だし、先生は優しいし…… それぐらいだけど……」
「ふうん、そうなんだ――」
(思っていたよりつまんない返事だったな。質問を変えてみようか――)
「で、ジーノはどんな女が理想なんだ?」
「――おまえのかーちゃん…… ナリさんかな。いつも優しいし綺麗だし……」
「お、お母さん!? そ…… そうか。お母さんなのか……」
(もしウルスラと言ったらぶっ飛ばしてやろうかと思ったけれど…… おおお母さんか…… そりゃあたしはお母さんが大好きだし、ジーノも小さい頃から一緒に遊んでもらってるからわかるよ。それにジーノのお母さん怖いもんなあ。ううう…… あたしじゃお母さんに絶対叶わないよ……)
「いや、ナリさんのことが異性として好きってことじゃないぞ! 尊敬しているってことだからな!」
「当たり前だろ! お母さんは…… いや、何でもない」
(お母さんはバルが好きなのをわかってる。何でどっちもそれ以上くっ付かないのか知らないけれど)
今度はビーチェのほうがジーノの思わぬ返答に困っている様子です。
ジーノはああ言ってますが、ナリさんの裸を見て反応しちゃってますからね。(第三話参照)
「あああのさ…… ジーノはあたしがルチアの服や新しい服を着たときに可愛いって言ってくれたけれど、あれは本心なのか? ――お世辞じゃないよな?」
「――もも勿論だよ! 可愛いに決まってる! うん!」
「そっか…… わかった」
(ジーノの反応、どうも気持ちがこもっているように見えないよな。どうしたら
ビーチェのそういう質問の仕方もどうかと思いますけれど……
ジーノにとって考える余裕も選択肢も無くなりますからね。
そもそもビーチェはさっきからいくつかの質問をジーノしている理由というのは、
学校で好きな子に告白するのとは違い、特にビーチェとジーノの幼なじみという関係は小さな頃から生活を共にしていた家族のように深く、それが最近になって異性として徐々に意識し始めた訳です。
二人とも好きかどうかじゃなくずっと一緒が当たり前の存在だった故に、この先離れることがあるかも知れないと考えたことすらありませんでした。
しかしジーノの前に次々と現れたウルスラやメリッサ先生という外部の女性に対する彼の反応が気になって仕方が無かったんでしょうね。
(よしっ こうするしかない!)
ビーチェは何かを決心したようにソファーから立ち上がり、バスローブ姿のままジーノの目の前に向かいました。
「え…… あの…… なに?」
ベッドに腰掛けているジーノの目前に、ビーチェがズイッと立ちふさがるようにしている
「スゥー ハァー」
モゾモゾ―― ファサッ
ビーチェは一回深呼吸をした後、バスローブの結び目を解いて脱ぎ落としました。
彼女の裸体は暖色の
それにしてもビーチェは何を考えてこのようなことを……
(ななななな何が起こってんの!? ビーチェの裸は見慣れているけれど、こんなに近くで見るのは初めてだ……)
「ねえ、あたしの身体を上から下までよく見て。でも絶対触ったらダメだからね」
(うっわー いざこうしてみるとめちゃ恥ずかしい。ジーノの驚き顔が面白いけれど……)
「あ…… う、うん……」
ジーノはビーチェと目を合わせるのが恥ずかしくて、彼女の口元から座ったままゆっくりと視線を下げて見ていきます。
ぷるんと瑞々しい唇、程良く皮下脂肪がある皮膚に浮き出ている鎖骨とつるつるとした肩、はっきりわかる胸の谷間、そしてEカップからFカップへ順調に育っている乳房で視点が止まりジーノは凝視をしています。
(わー ジーノ、あたしのおっぱいめっちゃ見てるし…… こいつ本当におっぱい好きなんだな。小さい頃みんなと一緒にシャワー浴びてたとき、お母さんのおっぱいをよく触ってたっけ)
(改めて見ると、ビーチェのおっぱいってほんと形がナリさんによく似てる。やっぱり親子ってことか。おっぱいって、かーちゃんとナリさんのを小さい子供の時に触っただけだし、どんな感触かよく覚えてないんだよなあ。ビーチェには触るなと言われたし……)
下乳の張りの良さは抜群で、『THE おっぱい』と言えるほど見本のような良い形をしています。
ジーノは胸からお腹に視線を移しました。
薄い皮下脂肪の下で六つに割れた筋肉の形がわかります。
そこに綺麗に凹んだおへそ。
あれほど厳しい修行をしているのに傷一つ無いのはオーラの影響で自然治癒能力が大幅に向上しているそうで、バルやジーノも同じです。
それから下腹部、
(ここから赤ちゃんが産まれるのは知っているけれど、もっと見せろと言ったらボコボコに蹴飛ばされるに違いない…… ブルブル―― でもどんなふうになってるのか正直気になる……)
(ひいいい…… そんなところで止まって見つめるな! でもよく見ろって言ったのはあたしだし……)
太股は女子運動部のような
これは女の私でも羨ましく思います。
ふくらはぎから足首に掛けては均整がとれた丸みをおびており、サ◯エさんの脚と言われることは決して無いでしょう。
一通りビーチェの上から下まで見たジーノは再び顔を上げると、ビーチェの顔は赤くなり横に背けていた。
「で、あたしの身体どうだった?」
「え―― うんと…… 何というか―― 服を着ているよりずっと綺麗だった――」
「そうか―― うん――」
「じゃあこれで終わり! あたしもう寝るから!」
ビーチェは脱いだバスローブを拾い、下着も着けずにベッドに備え付けてあったガウンをサッと着て布団を被って寝転んでしまいました。
きっと恥ずかし過ぎてすぐにでもジーノから離れたかったのでしょう。
(ええエエッ!? なに!? ビーチェ本当にどうしたんだ? わけわかんないよおおお!)
ビーチェの気持ち――
これは私の想像ですが、意表を突いて考える余裕を無くし本心を暴くこと、家族のような存在のジーノが他の女に奪われてしまわないかと危惧を感じたこと、ジーノがヘタレとわかっていても手を出さないかどうか――
それらを確認したくて、思い切って彼の目の前で全裸になったと考えます。
とどのつまり、ビーチェはジーノに対して恋愛感情があるかどうか自分でもわからないけれど、いつも一緒にいたいしこれからも隣にいて当たり前の存在であってくれそう、自分のことを大切に思っている彼がやっぱり
それがジーノに伝わるのはいつなんでしょうね。うふふ
ジーノはしばらく呆然としながら、向こうを向いて寝ているビーチェを見つめていました。
ハッとして自分の手を股間に当ててますよ。うぷぷ
(や、やっぱりいい! 俺の俺が元気になりすぎてるう! ビーチェがベッドに入ってから五分は過ぎてるのに全然収まる気がしねえ!)
ジーノはビーチェがこっちを向きそうに無いのを確認して、バスローブをバッと脱いでシャツとぱんつをババッと履いてガウンを着て布団の中に入りました。
(ううう…… 俺の俺がまだ収まらない。どうしたんだ? ビーチェの裸のせい? いやいや、今日は美味しい物をたくさん食べたからそれで元気でしょうがないんだよ。うん、そうに違いない)
ジーノは何か納得したようで、目を閉じて眠りに入りました。
それにしても若い子の子ってあんなに元気なんですねえ…… むふっ
その後彼は布団の中でモソモソとしていましたが、スッキリして寝たようです。
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「おい! ジーノ起きろ! 起きろってば!」
「うう……」
ジーノが寝ている横から、彼が聞き慣れた声で呼ばれています。
目が覚めてゆっくり目を開けて声がするほうを向くと……
「わっ」
目の前にムチムチの太股が二つ並んでいました。
寝ぼけた目で上の方を向くと、ミニのプリーツスカートを履いて白いブラウスを着たビーチェが睨んでいました。
彼女は昨日買ったばかりの服を着てジーノを起こしていたんです。
それを一番に、彼に見て欲しかったんでしょうかね。うふふ
「やっと起きたか。ルチアがもうすぐ朝食だと言っていたから、早く準備しろ」
「ああ…… うん」
(昨日の試着と違って緑のチェックのスカートか…… ホントにぱんつ見えそうだが大丈夫なのか?)
「今日は緑のスカートなんだな。よく似合ってるぞ」
「えええあああいきなりなんだ!? ジーノのくせに!」
「えええ……」
あらら、ジーノに見て欲しかったわけじゃないの?
ゆうべあんなことがあったのに、元通りになっちゃったんでしょうか。
でも照れ隠しでジーノから視線をそらし、顔がちょっと赤いですね。
ジーノはノソノソと起き上がり、トイレへ行って顔を洗い、ガウンを脱いで用意してきた着替えを着て準備完了。
その間、ビーチェは姫ソファーで脚を組み冷蔵庫のぶどうジュースをグラスに入れて飲んでいます。
ぶどうジュース好きなんですね。
「あなたたち、もう準備が出来ましたか? 食事をしに行きますわよ」
ルチアさんが呼びに来たので、一階のレストランへ朝食を取りに行きました。
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宿のレストランはピークを過ぎているものの盛況です。
テーブルに並んでいるのは、麦コーヒーにクロワッサン、ヨーグルト、ジャム各種、それから甘い焼き菓子ビスコッティ。
この国の朝食は甘い物が多いんですよね。
運動しているビーチェたちはともかく、ルチアさんやメリッサ先生が全然太っていないのが不思議です。
「ボナッソーラの食べ物は何でも美味いなあ。こっちに引っ越したいよ!」
「お店はどうすんだよ?」
「お店もこっちへ引っ越そう!」
「今はあなたたちが魔物を倒した収入もあってそれなりの生活が出来ているけれど、こっちはほとんど魔物がいないのよ。お昼も営業しないとあなたのお母様やバル様の負担が大きくなるわ」
「――そうなのか……」
ジーノやルチアさんに指摘されてシュンとするビーチェ。
そこへ支配人がやってきました。
「失礼します、お嬢様」
「あら支配人。どうかなさいました?」
「先ほどミローネ伯爵の使いの方がいらっしゃいまして、モンターレでの件でお話がしたいと手紙を渡されました」
「ミローネ伯爵ですか」
ルチアさんは支配人から手紙を受け取ると、その場で封筒を開けて読みました。
支配人は一礼して下がっていきます。
「――お呼び出しよ。盗賊退治のことがミローネ伯爵までもう知らせが行ったのですね。取り調べの時に滞在先を話しましたからここまで使いが来たのよ」
「買い物をしたらお昼過ぎには出発をするつもりでしたが、遅くなりそうですね」
「お断りするわけにはいきませんし、伯爵家同士の付き合い上仕方が無いですわ。報奨金でも頂けたら良いのですがあのケチな伯爵は…… あら失言」
ルチアさんとメリッサ先生の会話から、この街の領主であるミローネ伯爵の屋敷まで行かなくてはならなくなったようです。最後のルチアさんの失言はわざと言ってみたかったんでしょうね。
ビーチェとジーノはそんなことより食欲を満たすためにモリモリと食べていました。
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宿をチェックアウトし、魔動車で出発。
最低限のお土産用として酒屋でボナッソーラ特産のワインをたくさん購入して、市街の高台にあるミローネ伯爵の屋敷へ向かいました。
土地が少ないので庭はかなり狭いですが、建物は随分と立派です。
ルチアさんの顔パスで四人とも堂々と敷地内へ入ることが出来ました。
「「「「「「いらっしゃいませ! ルクレッツィア様!」」」」」」
数人ばかりの若いメイドさんたちが玄関ホールで整列して出迎えてくれた。
息を切らしている子もいるので急いで集まったのでしょう。
「――すっげえ。こんなふうに出迎えてもらったの初めてだ」
「当たり前です。
「ん? ビーチェ?」
ジーノとビーチェはメイドさんや豪華な装飾をキョロキョロと見ながらルチアさんに付いて歩いていました。
ビーチェの言葉がちょっとおかしいのが気になりますが……
パウジーニ伯爵家よりお金を掛けた造りのようで気になったんですね。
ルチアさんがケチだって言っていたのに、ミローネ伯爵は自分のところにはお金を掛ける人ですか。
「ルクレッツィア様、ようこそおいで下さいました。どうぞ応接室まで」
「ありがとう」
二十代半ばのちょっと硬そうな眼鏡メイドさんの案内で四人は応接室まで向かいました。
年上美人お姉さん好き傾向のジーノはその眼鏡メイドさんの後ろ姿をじっと見ながら歩いているので、それに気づいたビーチェはムッとしていました。
さすがに場をわきまえて何もしませんでしたが、後が怖いですね。フフフ
さて次回はミローネ伯爵の登場ですが、読者様で期待している方はいらっしゃるんでしょうか。
今回はビーチェの裸で全力回転でしたからもう十分でしょう。うぉっっふふ
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