修行、そして逃亡 《一》




「あなたと一緒に行かせて下さい!」

目の前のやたら綺麗な甲冑を着た男は僕に頭を下げて、そう言った


僕は口をぽっかり空けて「はぁ??」と言ってしまったよ。周りに誰も居なくて良かったな


その男はよ〜く見ると、あの助けた男ではないか。明らかに弱そうってか肌がぴちぴち…


「お断りしますわ…私の道中はあまりに過酷でね、あなたじゃついてけないのよ」

「そんな事は分かってます!でも…僕、強くなりますから!それにこれ」

男はインカムを差し出した。確かにそれは僕が捨てたあのインカムだった


「こんなもん返されたってさぁ…もう配信は

しないっての」

「しなくたってお似合いだから良いじゃないですか。ほら」

嫌がる僕に男はちょいちょいとインカムを装着した。男は嬉しそうに笑っていた


「まぁ勝手についてくればいいさ。その代わり

死んだって私は悲しんでなんかあげないんだから」

「見た目の割に口が悪いですね…そこが良いんですけど」


こうして、僕の旅に仲間が一人増えた

仲間ってかお荷物と言った方がいいかもしれないけれど


どすっ


「わ、わ!?人が降ってきたぁ!?」

「落ち着け、そんなもんここじゃ当たり前だ」


突如、上空から降ってきたそれは人の形をしていたが、やがて霧となって消えた


「…死んだか」

「そう…みたいですね。あはは」


今日もダンジョンには風が吹いていた

そして、誰かが不愉快に笑っていた

僕らはそれを踏みつける様に歩いた


それだけだった

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