ぼくはどっち?


次の日、登校中の僕は周りの目ばかり気にしていた


どうか、昨日の配信を誰も見てませんように


そう願いながら、鞄を頭に乗せてたりする朝


「そう言えば昨日ダンジョンでうさ…」


誰かが不意に吐いた言葉に僕はドキっとなった


「ウザったい奴に追いかけ回されてさぁ」

「あーそりゃよくないわ」


違ったらしい、胸を撫で下ろした。しかし、

どうして配信なんかしてしまったをだろうか

プリンスシバルの配信は大体が世界最大の動画サイト「OERVW0RLDオーバールド」に投稿される。あのサイトはなんせ世界最大である、虎を絨毯にしてもまだ金が余るぐらいのセレブから親が死んだら確実に死ぬ底辺まで色んな人が見ているだろう。だから今頃僕の知らないところで僕の悪口を言っているに違いない…


「うさぎってさぁうざいよね」


びくっ


「わかるーしりとかで3文字だからってすぐ使われちゃう」

「そうそう、臼井のじじいもほら…」


なんだだだの意味の無い会話だったらしい。

僕はさっさと学校へ向かうことにした


…授業


「おい!寺田!1236年にラーグン帝国の王となったのは誰か答えてみろ!」

教師は左手に教科書を持って、僕を指さした


「…ミグシアラクスでしたっけ?」

「正解、じゃあ1939年は?」

「んっと、アーガルドワイズかな?」

「おー、正解。寺田ぁ今日は冴えてるなぁ」

「ですかねぇ」


クラスのみんながニコニコ笑って、教師も

ニコニコ笑った。僕は何となく嫌な気持ちのまま席に座った


……休み時間


「てらっち配信者のゲスとって人知ってるっけ?」

「ああ、アイツか」


窓の外、雲が流れていた。グラウンドから

生徒たちがざわめいていた。配信者「ゲスと」

三年前ぐらいから話題になっているプリンス

シバル専門のダンジョン配信者


「昨日の動画で遂に240層までたどり着いた

ってさ。やば」

「はぁ?!そんなわけあるか」

「あるよ、だってほら」


友人が見せたスマホの画面には確かに

「祝 240層到達 ここまで長すぎた」と書かれた動画があった

…おかしい、昨日240層に奴が到達してるならば僕はどこかですれ違っているはず。だが、奴らしき姿は全く見ていないぜ

奴はどんな手を使って


「あーあ、俺もゲスとみたいな有名配信者に

なりたいなぁ」

僕の机にべったり顎を乗せ、とろけた笑顔の

友人であった

「有名配信者になってどうしたいの」

「そりゃ視聴者からお金集めて…」

「四年前からダンジョン配信での収益化は

禁止されてるけれど?」

「じゃあグッズを出して…」

「無理無理、売れないって」

「なんだよさっきから」

友人はコツンと僕の額を叩いた


「お前だってそう言っておきながら有名配信者になりたいって思ってんだろ?」

「有名…ねぇ」


僕は昨日の配信の同時視聴者数をふと思い出した。当たり前だがここの教室、いやこの学校にいる数百人誰も昨日の配信のうさぎがここにいる事は知らない


「虚像はいらない…って僕は思うけれど?」

「なんだそれ、意味わかんねーよ」


窓の外はおっきい雲が流れていた。窓際の席では女子生徒が何人かで一つの机を共有しながら雑談していた


「じゃあ聞くけど僕が学校に侵入して来たテロリストをたまたま倒したとするよ」

「はぁ??」


その時、友人と僕はしっかり目が合った


「では次の日から僕はテロリストを倒せる様になると思う?」

「…うむむ、ならない」

「それと同じこと、ゲーム内で有名になって力を付けたとこでここにいる僕はテロリストを倒せないさ。それが虚しいと思わないかい?」

「だけどっ…」


ぽすん。僕は友人の頭にそっと手を置いた


「つまらない話をしてごめんよ。ちょっとトイレで小便でもしてくるわ」

「お、おう…」


廊下に出るとガラスに僕の冴えない顔がうつっていた。にきびがぽつりぽつりとあり、目の下にクマがあるどこにでもいる様な顔

その後ろにゲーム内の僕がつまらなそうな顔して立っていたので僕は問いかけた



「いったいほんとの僕はどっちなんだろうね」と







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