196層 再会
「たぁぁすけぇえぇてええぇえっっ!!!」
それはそれは情けな〜い声だった。196層に
戻って、真っ先に聞こえた叫び。予感がするやつが…奴がロクでも無いことをしてる
走った先にいかにも性格の悪そうな半裸の
男が三人、それと背中に善と彫られた男が一人、ロープがどこかに垂れていた
「お前たちやめろ!何をしているんだ!」
四人はその目を私に向けた。モヒカンの弱そうな三人とかつての私である
「ぁあ?見りゃわかんだろ。コイツをマグマに近づけて遊んでんだ。中々面白いぜ」
「い〜やぁあああ!!あっ、熱いい!!溶けるっっ!!!」
ロープを握っている男は悲鳴を聴きながら、
くすくす笑った。それに合わせてかモヒカンもぐへぐへ笑ったりしてる
「大体よぉ、このダンジョンは無法だろぉ。
何しようが自由じゃんか」
「自由…だけど!私の!アバターでやるなって
言ってんの!!返せ!!私のアバター!」
「あぁ?」
私の元アバターは大きく笑って
「返したくてもねぇ、方法がわからんよ。
なんせあんな出来事は初めてだからよ。
へへっ…ま、返すつもりもないけどなぁ」
と、悲鳴のする方を向いたまま言った
そして、すぐさま武器を振り上げて襲いかかるモヒカンの男たち
だが、私はにやりと笑った
途端、攻撃を当てたはずなのに吹き飛ばれる
男たちである
「あーあー、残念。せっかく無敵の力が手に入るチャンスだったのに。あなたって面白いわぁ」
その四人がびっくりした顔と言ったら正に傑作だった。例えるなら幼児が猫を弄んでいて、急に噛み付かれたみたいな感じ
「おい、ツールズこれ代わりに持ってろ!」
「はい…」
ロープをモヒカンに託し、元のアバターは
私にずんずん歩いてきた
「お前、卑怯だぞ!俺がそのアバターだった
頃にはそんな能力無かったのに!」
男は今にも泣きそうだった
「卑怯ねぇ…欲しいんだこの能力?返して上げてもいいけどねぇ…あ、戻り方知らないから
無理だったわ」
「て、てめぇ!!」
やけになって蹴飛ばそうとするも、それを謎のバリアがぽよ〜んと弾き返した
「さて…あなた達の悪さを世界中に配信して
あげよっかしら。ボタンは確かこれか」
【配信を開始します】
「な、なに!?配信機材まで!どこまでずるいんだお前は!」
「ただのうさぎじゃいられないのよ…ごめんなさいっね!!」
僕は目の前でぺたんと座る元アバターに
渾身の一発をかましてやった!
つもりだったんだけど
ぽよっ
「あら?」
「あれ?」
攻撃は全く効かなかった。力が入んないって
言うか、相手が弾いたって言うか…
「もう一発!!たぁぁ!!」
ふにっ
次の攻撃も全くダメージは入らなかったらしい。すると、元アバターが急に立ち上がって
「ぎゃっーはっはっ!!!能力は無敵でも
攻撃力はカスみたいだなぁ!!やっぱり入れ替わって正解だぜ!!!」
と、高らかに叫んだ
僕もムカついて何度も殴って見るもほんとうに攻撃が通らない
>マジでぬいぐるみじゃん…
>なんだこの極端な性能
>うさちゃんがんばえー
>どうすんのこれ
コメント欄がいつの間にか…僕に呆れてる!?こんなはずじゃないのにぃ
「どうやら勝負あった様だな。さて、満足したことだしそろそろ行くか。おい、ツールズもう手をパーにしていいぞ」
「へっへっへ…わかりましたぁ」
はっ!握っている手をパーにするって事は…
ロープの先にいる人はまさか!?
やめなさ
「あーあ…君たち?」
どこかで聞いた声に振り向くと、そこにはあのきらきらカラコンに木刀を携えた西洋鎧のあな女が立っていた
「そゆね、悪いことすると痛い目に遭うって
おかあーさんから教わんなかった?」
「なんだと!女ァ!ごらぁああ!」
「ちょっと待って!」
「祈りの時間だけ頂戴よ」
「お、おう…仕方ねぇな」
女は木刀を地面に突き刺すと、片膝を立てて
目をつぶった
その時間が大体30秒ぐらい…かな
そして、目を開けた時
二人のモヒカンは既に倒れていた
あまりにも早かった、気づけば元アバターを素通りし、ロープのそばまで来てる女
そして、ロープを握っていた男を空中に放り投げ、上空、その上から木刀の一撃を振りかざしたのだった
こうしてモヒカンの三人は無惨にも散ったのだった…けれど
待てよ。ロープを握っていた男がやられたって事は
あ!
僕は気づいて、すぐさま穴へ飛び込んだ
悲鳴を上げていたのは男だったらしい。
てかそんな事気にしてる場合か!
マグマが!マグマが!
が、バリアが発動した事により僕は助かった
そこへ降ってくる男、涙目の男
「攻撃!私に攻撃して!なんでもいいから!」
「ふぇえ…そんな無茶なぁ!」
バリア発動時間はまだ把握して無いが、上手くいけば
そう、無茶苦茶ではあったが今日の私はなんかツイていたみたいで、見事男はバリアによって吹き飛ばされたのだった
よぉし、飛ぶぞぉ…そりゃ!
男が飛ばされた方向、僕は空を蹴ってそちら
へとジャンプしてみた。あ、
いけるかも!
重力に従ってまたマグマへと落下しそうな男、ちょうどその下に僕がいる
「もういっかい!!もう一度攻撃して!」
「わ、わかったよぁあああぁあ……」
涙をだらだら流しながら、男はなんとか足を振り上げ、僕へと攻撃した。これを待ってた
すぐさま僕の周囲1メートルにまたバリアが発動し、男はさらに上空へと浮かび上がった
そのあわあわする姿を眺めてる暇も無く、男はしっかりと女に抱かれ、マグマの外へ
僕もなんとか穴の周囲に落下する。仰向けだ
「はぁはぁ…なんとかなった。おい、女」
「ごめんよ、うっかりしていてね。でも結果的にはオーライだったじゃ無いかあはは」
「ばっきゃろ…どこがオーライだ」
投石の様に僕は女へ言葉をぶつけた
ところで何か忘れてるような…
「あ!」
「どした?」
ぴょこんと立ち上がり、僕は周囲を確認した
「奴は…背中に善って彫られた男はどうした!?」
「あぁ!!しまった!」
な、な、な、なんてこった…僕のアバターを
求めてここまで来たのに、あっさりそれを逃がしちゃなんのためにここまで来たんだ
「…うさぴょんがしっかりしないからぁ」
「一番近くにいたのはてめぇだろうが!!」
僕たちがわーわー口喧嘩していると
「あの」と男がそれを強引に遮った
「あなた達は結局…何者なんですか?」
薄ら笑を浮かべながら、さらに質問した
「ただのうさぎです!」と僕は返して
「ただの女プレイヤーです!」と女は返した
男は首を傾げて、やはり薄ら笑を浮かべた
「それにしたって、中々良かったね救出劇。
配信も中々盛り上がったんじゃない?」
「はい…あっ!」
僕は思い出して、配信画面のコメント欄を
見てみた。そこには視聴者数5963と
5963!?
「ど、同接が5000…にん…」
「おーすご。人気配信者じゃん」
「ふざけんなあああああ!!!明日からもう
外を歩けないよ!」
インカムをぶん投げ、僕は
【user100576467がログアウトしました】
僕はどうしたんだっけ?
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