第41話 富の再分配
「ね、国や、えっと地方自治体は、みんなからそんなに強制的にお金を集めて何をするの? きちんとした説明がないと、納得がいかないわ!」
カノは、真剣な顔で言い放つ。
「『税金』を集める目的はいくつかあるのだけど、基本は『富の再分配』だ」
「なんだろう……富をもう一回配るということ?」
ハルは、首を傾げて尋ねた。
「富って何かしら?」
カノも、質問する。
「富は簡単にいうとお金だね。ハルくんが言うようにお金を配りなおすという意味。お金をたくさん稼いでいる人ほど、所得税はとてもたくさん納めないといけないことはさっき説明したね。その集めたお金を、貧困で苦しむ人たちに、『生活保護費』として配布したらどうだろう?」
パパは説明しつつ、二人に尋ねた。
「あ、お金持ちの人から、貧困で苦労している人にお金が渡るわ。なるほど。それが『富の再分配』なのね」
「これは一例だけど、税金として集めたお金の一部は、社会保障としてそういった面で使われるんだ。社会保障というのは、貧困といった生活上の問題に対して国が生活を安定させるために行うサービスのことだよ」
「うーん。でもさ、世の中に喜ばれる価値を提供して、たくさんのお金を稼いだ人から、さらに税金をたくさん取るなんて、やっぱり納得いかないなぁ。逆にあまり稼いでいない人は、所得税も低いんだよね」
ハルは、不満を口にした。
「『富の再分配』の目的は、格差の
「その差を小さくして、どうなるの? 何のために?」
カノは、理由が知りたかった。
「国が発展していくために、もっとも大事なのは人材。つまり、人だ。たくさんの人が働いて、価値を生み出してくれることで経済が発展する。多くの人がすこしでも安心して暮らせるように、『富の再分配』を行うのさ。生きていくのに必要なお金が一定額あるけれど、それ以上稼いでいる人たちからは多めに税金を集めて、お金に苦しんでいる人たちに分配すれば、多くの人が生活できるだろう」
「あぁ、なるほど。だから、税金を集めて、再分配するんだね。でも、お金持ちの人は文句を言わないのかな」
ハルは、気になったことを口にした。
「お金持ちになる人は、前提としてお金についてしっかりとした知識を持っていると思う。二人が今まで勉強してきたことは、まだお金に関しての入門編だ。お金の知識を持っている人は、自分たちが万が一資産を失っても、税金から提供されている社会保障のサービスが再度挑戦できる機会をくれることを知っている」
パパは、一息入れて、続ける。
「お金のことをよくわかっているから、時に税金を納めずにより良い使い方をしている場合もある。例えば、寄付をたくさんすると税金が安くなるといったルールを知っていて、活用しているんだ」
「お金のことをしっかり知っているから、社会の仕組みを知っているから、うまく活用できるのか……。勉強って大事だなぁ」
ハルは、感想を述べた。
「これは何事にも通じることだけれど、それがどういうものが知りたかったら、とことん勉強することが大事だね。お金だって例外ではないのさ。さて、『富の再分配』というのが税金の原則なのだけど、その再分配の仕方はいろいろあるんだよ」
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