第10章 税金とは何だろう?

第39話 納めたことがある税金は?

 師走の慌ただしい休日。


 大そうじと年越しの準備のために、パパ、ハル、カノの三人はホームセンターへ車で出かけた。ママから頼まれた買い物リストを片手に、混雑する店内で日用品や正月用品を探す。大そうじで活躍する洗剤、特売されているトイレットペーパー、玄関の正月飾りに、缶ビールの箱などを購入。


 ひと通りの買い物が終わり、車のトランクへ買ったものを詰め込む。駐車場は冬の寒さだったが、暖房の効いた店内より心地よかった。とはいえ、すこし時間が経つと身体が冷えてくる。三人は車に乗りこみ、パパはエンジンをかけた。車のエアコンはすぐに暖かい風を届けてはくれないようだ……。


「いやー、やっぱり先週買い物に来るべきだったよー。人が多くて、つかれたー」


 カノは肩を落として、ため息をついた。


「ほんと、いつもの倍は人がいたよね。みんなが大量に買うから、レジも混んでいた」


「混んでいたねー。うちもそうだけど、他のみんなもカゴいっぱいに買うから、レジ進まないんだもん」


「お疲れさま。二人がいたから、買い物がはかどったよ」


 パパは、二人を労った。


「あ、そうだ、パパ。レジでの支払いで思ったんだけど……消費税ってどうして払わないといけないの? 今日の買い物、一万円こえていたよね。消費税だけで、八百円以上も払うなんて信じられないよ。もしファミレスに行ったら、美味しいランチを一人分食べられるくらいの金額だよっ」


 カノは、気に入らないらしく、口を膨らませて言った。


「そうそう、消費税って、まだ働いていないぼくら子どもも、払わないといけないよね。そこも不思議だよ。そもそも『税金』ってどうして払わないといけないの?」


「お、最近、お金のことには、目が光るね。それじゃ、家までの帰り道は『税金』の話をしようか。社会の仕組みのひとつとして、お金と切りはなせない、知っておくべきことだからね」


 そう言って、パパは続ける。


「まずね、基本的に『税金』は払うではなく、『納める』というんだ。まぁ、消費税の場合は、お金の支払いと同時にだから、『払う』って言いたくなるし、それが間違ってもいないんだけれどね。あとでくわしく説明するね」


「へえー、買い物でお金を払う時に、ついでに取られちゃうから、払うだと思ったよー」


 カノは、感心して言った。


「『納める』って、なんか特別な言い方だね」


 ハルは、気づいたことを述べる。


「子どもでも納めたことがある、支払ったことがあるのは、やっぱり消費税になるね。買い物をする時に、お金の支払いと同時に消費税を納めている。二人はこれをどう思う?」


「どうって、値段よりも高くなるから、イヤですよー」


 カノは、また口を膨らませる。


「そうだよね。税抜き価格で、手ごろな値段だと思っても消費税が入るとね……。例えば、三百円以内で買えると思ったのに、三百円よりちょっと高くなって、ショックさ。あまりうれしくないものだよ」


「まぁ、それはパパも同意だよ。高い買い物ほど、消費税率の影響が大きいからね。さっき、かのちゃんが言った、一万円だと消費税率十パーセントで、千円。ファミレスのランチ一人分だし。もっと高い買い物で十万円とかだと……」


「えっと、十万円の買い物だと……一万円になるわ。もういくつか洋服買えちゃうよ!」


 カノは、びっくりして言った。


「うわ、ゲームソフト買えちゃうよ」


 ハルも、驚いてる。


「さて、その買えば買うほど、たくさん納めないといけない消費税だけど、誰が受け取ることになっているか、わかるかい?」


「えっと、国? 政府?」

 

 そう言って、カノはお兄ちゃんの顔を見た。


「あと、都道府県といった地方自治体だっけ?」


「そう。国や地方自治体だ。みんなが納めた『税金』で、社会全体が良くなるようにお金を使うのが役割だね。『税金』というお金がどのように使われるのかは、あとで話そう。ちなみにね、パパが子どものころは、消費税率は三パーセントだったんだよ。それから五パーセントに上がって、今は一部食品は八パーセントだけれど、基本的には十パーセント」


「えー、どんどん上がってきているの? なんでー」


「二パーセントも上がるのはイヤだな。 なんで上げないといけないのさ。むしろ下げてほしいよ」


 二人とも文句を言っている。


「消費税なんて、なくなってもいいよねー」


 カノに同意をもとめられて、ハルもうなずいた。


「それは、『税金』で使うお金が増えているからなんだ。でも、その前に、身近な消費税以外にどんな『税金』があるのか話そう」

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