第33話 貧困にならないためには
「『貧困』にならないために、どんな予防ができるかを考えてみようか。さっきの話を逆にしてみると予防方法がわかると思うよ」
パパは、二人に問いかける。
「えっと、『収入が減る』の逆は、『収入を増やす』だわ」
「『支出が増える』の逆は、『支出を減らす』だよ」
「そうだ。まず『収入を増やす』前に、『収入を安定させる』ことが重要かな。安定させるためには、どんなことをすればいいかな?」
パパは、二人に促した。
「さっきのお話からだと、働いている人の健康はとっても大事だわ。病気や事故にあって働けなくなったら、治療費もかかってダブルパンチだもん。お金の話を聞いてきて、健康ってとっても大事だなって感じたよっ」
カノが、まずは答えたのだった。
「健康であることが、『貧困』の予防にもなるって……興味深いよなぁ。よく大人が『健康第一』って言うのがわかる気がするよ。カゼをひいて寝込んでいる時の……もったいなさ。あと、働ける人を増やすことも大切だと思う。万が一のことがあっても、収入がいきなりゼロにならないし。収入の川が多くなれば、ダムに水はためていくのも楽なはず」
ハルも自分の考えを述べた。
「そうだね。父親と母親、両方が働いている家庭は昔より増えている。それから、ちょっと付け加えるなら、前に話した『不労所得』もポイントだ。自分が働かなくても、代わりにお金をかせぐ仕組みがあれば、収入は安定するだろうね。まぁ、仕組みを作るのが、なかなか難しいかもしれないが」
「あ、家賃収入とか印税ってものね。なんだかそのお話はなつかしいな。あ、いま気づいたけど、わたしのおこづかいは、不労所得かも。何もしなくても毎月もらえるわ」
カノは、ヘリクツを言った。
「おいおい。そんなこと言って、家の手伝いもしないなら、おこづかいあげないぞ」
「あ、それは困るよー。ちゃんとお手伝いしますっ!」
「よろしい。話をもどすよ。働いている人の収入が増えるのも良いだろう。会社員の場合だったら、出世してお給料が増えるとか、よりお給料がもらえる会社に転職するとかがある。これでダムに流れこむ川が太くなる」
パパが、付け加えた。
「『収入を増やす・安定させる』ってことは、とっても大事だよね。だって、お金がないと生活にしていくのは大変だから」
「とても単純なことだけどね。時に人は収入が増えると、支出が増えてしまう。それで、お金を貯められなくなる場合がある。これだけ毎月稼いでいるから、来月も未来永劫、その収入が続くと勘違いしてしまい、お金を湯水のように使ってしまうこともあるんだ。病気になるかもしれない、ケガをするかもしれない、会社がつぶれるかもしれないといった、いろいろなリスクがあるのにね」
パパは、二人の顔をしっかりと見ながら言った。
「『支出を減らす』にはどうしたらいいのかな?」
「節約しましょうってことでしょ」
「お兄ちゃん、それはそうだけど、その節約ってどうしたらいいのさー」
「ダムの放水を減らすイメージだよ。例えば、水道代。お水を使えば使うほど、支払う金額は増えてしまう。水を出しっぱなしするのは、文字どおりお金を放水しているのさ。電気代やガス代もそうだね。ただ、全く使うことなく生活するのは難しいから、普段からお金とひもづけて、電気や水道を使うといいね。自然とムダ使いしないようになるだろう」
パパが代わりに答えた。
「毎月かかるお金を減らしていくのが良いってことか」
「みんなで協力することで、支出を減らすこともできる。一緒に住むことで、食事をまとめて作ったり、テレビや洗濯機を共有して使えたりだね」
「いわゆる家族ってことね。バラバラに住むよりも得なの?」
カノは、質問した。
「バラバラに住んでいたら、その分、家賃といった住むために払うお金も増えてしまう。食事だって、まとめてたくさんの作る方がムダは少ない。お金を賢く使うには、家族がそろっている方が良い場合が多いだろうね」
パパが、ニッコリとした顔で答える。
「『収入を増やす・安定させる』ことができて、『支出を減らす』ことができれば、ダムにはお金という水がたまっていくよ。この状態が良いんだよね?」
ハルは、確認する。
「そうだよ。毎月貯金ができる状態にすること。お金は保存ができて、何かあった時にさまざまなものと交換できると教えたね。将来かかるお金や万が一のことを考えて、毎月貯金できる状態を続けることが大事なんだよ。それだけで、『貧困』を予防することができる。だから、自分たちのキャッシュフローを把握することは、生きていく上で欠かせないことだとも言える。キャッシュフローのバランスが悪いままでは、何も良いことはないんだ。面倒でも、お金の流れを把握しておかないといけない」
パパは、優しい声で説明した。
「そうやってお金を貯めておけば良いのは、わかったわ。なんか不思議ね。わたし、貯金って欲しいものを買うためにするものだと思っていたよ。でも、生活していくために、貯金ができる状態でないといけないのね。他にも、『貧困』になりにくくするために、がんばれることってあるのかな?」
「うん。お金を貯めておくことも大事だけど、『投資』をすることも大事だ。といっても、自分や家族に『投資』するのが良いね。大学や専門学校を出るためのお金とか、資格を取るための費用とかがそれにあたる。学歴や資格があれば、お給料が良い仕事に就ける確率が上がるのは事実だからね。また、学校の勉強だけでなく、多くの本を読むことを、パパは二人にすすめたい。これも立派な投資だ。知識を身につけること、さまざまな考え方に触れることで、自分で論理的に考えられるようになる。これは一生役に立つスキルだからね。リターンは大きい」
「わたし、もうちょっと大きくなったら、パパの書斎の本借りて読みたいな」
「本が投資になるというのは、パパを見てればわかるよ。大人になってからも、本を読んで勉強しているんだって思ったけど、パパは自分に『投資』しているんだね」
「本は、短い時間でたくさんのことを学べたり、感じたりすることができるからね。まぁ、本を読むようになったのは、じいじの影響もあるよ。じいじも本が好きで、パパもじいじの本棚からいろいろ借りて読んだんだ。新しい考え方にふれるのは楽しいものだ。知らないで損をすることも減るだろうね」
「わたしたち子どもでも『貧困』にならないために……できることは勉強とか読書とかなのね。も、もうちょっと、勉強がんばろうかな」
「他にもぼくらができることはないの? 働ける歳ではないけれど」
「ん、そうだなぁ……。おうちの中の仕事は、たくさんあるでしょ、君たちにもできること。いわゆるお手伝い。お金はもらえないかもしれないけど、二人がお手伝いをしっかりやってくれると、心強いね」
「……そっか。わたしたちはまだ働けないけれど、お手伝いをすることでパパやママを助けてあげられるのね。おこづかいもほしいし、がんばろっと」
「ね、もし、もしもだよ、『貧困』な状態になってしまったら、どうしたらいいの? ぬけ出すためにはどんなことをしたらいいの? 『貧困』になんてなりたくないけどさ
」
ハルは、もっとも核心に関わることを質問した。
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