第30話 担保と連帯保証人
「そうだよ。お金を貸す側は、お金がきちんと増えて返ってくる『信用』を確実なものにしたいよね」
パパは、二人に確認する。
「それはそうだよ。損したくないのは、当たり前だね」
ハルは、うなずきながら言った
「なので、ひとつめは、『
「じゃ、この家も借金して買っているわけだから、何か『担保』を銀行とお約束しているの?」
ハルは、部屋の壁を指差して言った。
「そうだよ。万が一、お金が返せなくなったら、この家自体を銀行にわたすことになる。銀行はこの家を売って、返ってこないお金を補うね。そんなことにならないように、パパもママもがんばるけれどね」
「えー、お家がなくなっちゃうかもしれないの? それは怖いよー」
カノの顔が少し青くなる。
「確かに、なんかイヤだね。……でも、お金を貸す側は、すこしでも安心したいと思うから、そういった約束にするんだよなぁ、きっと」
ハルは、口もとに手を当てて言った。
「そして、もうひとつの怖いところ。こっちも、貸す側が損をしたくないからできた仕組みだと思う。『
「えーっ! 自分で借りてもいないのに、お金を払わないといけないの? そんなのありえないよっ!」
カノは、目を丸くして驚く。
「ほんと。なんで? そうしないといけないほど、お金を貸す側はケチなのかな」
「お金の貸し借りは、非常にデリケートなことなんだ。『お金』はいろいろなものと交換できる便利なツールだよね。それを後でより多くのお金を払うからといって、先にわたすのはやはり危険だと感じる人が多いんだね。貸したお金がどのように使われるかはわからないから、貸す側は戻ってこなくなる危険を何が何でも小さくしたいんだよ。さっき話した『担保』もそうだね。代わりのものがもらえるのが、『担保』だ。そして『連帯保証人』は、借りた本人の代わりに支払いをする人を用意することだね」
「なんか、その仕組みを知ったら『連帯保証人』なんて、絶対なりたくないよ」
カノは、真面目な顔をして述べた。
「そうだよね。代わりに払わないといけないって言われて、いいですよなんて言う人はいないんじゃないかなぁ」
ハルもカノの意見に賛成する。
「二人の言うとおり、知っていたら『連帯保証人』になんてなりたくないだろう。けど、『連帯保証人』になるのは、二つのパターンがあると思う。ひとつめは、家族のためにだ。例えば、子どもが借金をする際に、親としてはもし払えなくなったら肩がわりしても良いと考えるわけだね」
パパは一息ついて、より真剣な顔になって続ける。
「もうひとつは、『連帯保証人』がどんなものか知らずに安易になってしまうパターン。親友だから、恋人だからと思って、なってしまう。これは非常に危険だとパパは思う。その人間関係が切れたとしても『借金』の肩がわりは残ってしまうからね。親友や恋人との関係が終わり、自分が借りたわけではないお金を返さないといけないなんて最悪だろう。お金は社会の仕組み。きちんと知識を持っていれば、危険を回避できることも多い」
「パパのお話、とっても怖いけど、大事なことなのね。知らないと大きな損をすることもあるのね」
カノは、真面目な顔でうなずくように言った。
「やっぱりお金のことを勉強するのってすごく大切なことだ。ね、パパ、『連帯保証人』も……『担保』も……どうして貸す側が強い仕組みになっているの? 物々交換は、同じ価値の交換なのにさ」
ハルは、気になったことを質問する。
「それは、お金の基本に戻ってみればわかる。前に話しただろう。みんな、どうしてお金が欲しいんだい?」
「いろいろなものと交換できる便利なものだから」
カノが、しっかりと答えた。
「あ、そうか。お金を借りて……逃げちゃう人がいるからだ。貸した側をだまして逃げて、借りたお金を返さなくて良くなれば……苦労しなくてもお金が手に入るね。とても悪いことだろうけれど」
「そうなんだよ。お金をお金で買うという『借金』はそういう構造があるわけ。だから、貸す側に有利な仕組みが整ってきたのだろうね。ここから言えることは、逆に安易にお金を借りてはいけないということだ。お金を借りるという約束は、借りる側が不利なことが多いからね。安易にお金が手に入るからと『借金』をしてはいけないと思う。後でそれ以上のお金を返さないといけないし、返せないと周囲の人にも迷惑がかかるからね。しっかり勉強して、知識を持っておくことが大事だ」
パパは、大事なことだと真剣に説明する。
「『借金』の話、怖かったけれど……知ることができて良かった」
「ほんとだね。何も知らないで、借りたものを返せばいいのでしょってお金を借りたら、ダメダメになってしまうわ」
「今日のお話はこれくらいにしておこう。次回は、パパからお金について二人に話したいことがあるので、それにしてもいいかな?」
「うん。良いよー。きっと、とっても大事なテーマなのでしょ?」
「ぼくも。逆にお願いしたいくらいだよ。お金のこと、知れば知るほど……知っておくべきことが多いと感じている。今日の『借金』の話なんて、本当に知っておくべきことだもん」
「ありがとう。じゃ、次回を楽しみにね」
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