第25話 お金を借りる時

「面白いなぁ。お金を借りる理由は、ある意味『時間を稼ぐ』ということなんだね。未来に手に入る予定のお金を、今すぐ手元に置くみたいだ。その代わり、手に入れたお金よりも多くのお金を後で払うんだね。ちょっと複雑だけど、納得」


 ハルは、うなずきながら述べる。


「時間を短くしたい。待っていられない。だから、後で多くの金額を払うから、今すぐお金を手に入れたいということなんだ」


「でも、なんで、そんな面倒なことをするの? 結果は、お金をより多く払ってしまって、損をするように思うわ。それでも、『借金』をする理由はなんだろう?」


 カノは、疑問がわいたようだ。


「それを説明していこう。もし、自分が持っているお金以上に価値があるものが欲しかったら、どうすればいいだろう?」


 パパは、二人に質問する。


「働いて何かの価値を生み出して、誰かに提供してお金をもらう。そのお金を足しにすれば、いいと思う」


「そうよ。働いて、お金を貯めればいいんだわ」


「じゃ、その欲しいものが、たったひとつしか売ってなかったら、どうだろう?」


 パパは、二人に質問した。


「えっ? 誰かが買ったら売り切れちゃうってこと?」


「そうだよ。今すぐ買わないと誰かに買われてしまう。でも、どうしても欲しい。でも、持っているお金は足りない」


「働いてお金を稼ぐ時間がないってことか……」


 ハルは、つぶやく。


「だから、『借金』をしてでも買うわけなのかな?」


 カノは、自信なさそうに述べた。


「そうだよ。手元にあるお金以上に何かを買う場合、もっとお金が必要だ。でも、お金を働いて稼ぐ時間がない。だから、『借金』をする。それで、手元のお金を一時的に増やす。『借金』は、話してきたとおり、お金をお金で買うけれど、支払いは後でするものだからね」


「『借金』をして手元のお金を増やして、一体何に使うのかな?」


 ハルは、すっきりしないようだ。


「ほんとにー。『借金』って結果として、一万円を一万五百円で買うようなものでしょ。損をするのがわかっているのにね。そこまでする理由を知りたいよっ!」


「それは今日、すこしずつ話していこう。まず、『』だということを、知らない人が世の中にはいる」


「えーっ。それ、ほんと?」


 カノは、目を大きくして驚いた。


「なんか信じられないなぁ。だって、みんなお金が欲しいのに、損をすることを理解していないなんて……」


「もっと正確に言うとね……『お金』についてきちんと勉強していない、知識を持っていない人たちがいると言えるかもしれない。二人はお金について興味を持って、いろいろ話を聞いて理解してきたね。こういったことは、学校ではなかなか教えてくれないだろう」


 パパは、続ける。


「大人になったら、学校で習うことよりも身近で、生活に影響あるのがお金だ。なのに、身近に教えてくれる人がいなかったら、社会に出てお金の使い方を失敗しながら学んでいくしかないんだ。パパは、これはとても怖いことだと思う」


「うん。お金は、社会に出て生活していくのに欠かせないものだもん」


 カノが言った。


「ちゃんと知識を身につけて、使い方を理解して、あつかえないとだよね。パパはどうやって、お金の知識を身につけたの?」


 ハルが、尋ねる。


「ん? あぁ、それはね……就職が決まって社会人になるころに、じいじから本をプレゼントされたんだ。そのころ話題になった本だったんだ。『金持ち父さん 貧乏父さん』というお金についての本。これを読んだのをきっかけに、他にもお金に関する本をいろいろ読んで勉強した。あの本を読む機会をくれたのは、本当に感謝しているよ」


「へぇー、そうなんだー。パパはラッキーだったのね」


「ぼくらもラッキーだよ。こうして、パパから教えてもらっているもの」


「そうだよ。しっかり理解してくれよ。さて、『借金』の話にもどろうか。手元にあるお金で生活していくことができないからといって、安易に『借金』はしてはいけない。未来にもっと苦労してしまうからね。この場合は、お金の使い方を見直さないと、まずはいけないだろう。では、ここから二つ、身近な『借金』のことを教えよう。二人が将来するかもしれない『借金』のことだよ」

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