第16話 無駄使い?
「ね、パパ。『消費』というのも大事だとわかったけど、無駄使いは、どうしたらいいのかな? 無駄使いしちゃったなーって、わたし思うことがあるよ」
「ぼくも。なんでこんなものにお金を払って、がんばって集めていたのだろうと思ってしまうことがあったよ」
ハルは、何か思い出して、ため息をついた。
「無駄使いか、なかなか難しい問題だね。パパは、無駄使いとは『消費』の一部分だと思っているよ」
「『消費』の一部分なの? うーん、どういうことだろうー」
カノは首を傾げて言う。
「なんか、『投資』に失敗したら、無駄使いだったって落ちこみそうだけど……お金が減ってしまってさ」
ハルは、自分の意見を述べた。
「失敗になってしまった『投資』は、結局『消費』ということになって、無駄使いに見えるかもしれない。まずね、人それぞれ、好きなものが違うということはわかるよね。例えば、色なんかも、青が好きな人がいれば、ピンクが好きな人もいる。人参を食べるのは平気だけど、トマトは苦手な人もいる。外でスポーツをするのが好きな人もいれば、テレビでスポーツの試合を観るのが好きな人もいる。興味あることや趣味もいろいろだ」
「うん。お兄ちゃんはトマト苦手だけど、わたしは好き。サラダにトマトがないと、さびしいもん」
カノは、得意げにハルを見る。
「う、別に食べられないわけじゃないよ。でもなぁ……」
「つまり、人によって、価値観が違うということがまずは大事なんだ。覚えておこう。そして、お金を払ってもよいと思えるのは、そのことに興味を持っていたり、好きだったりするからだ。自分の興味あることにお金を使うのは、実は楽しい。マンガをたくさん買いこむ人、ゲームにお金をつぎこむ人、好きなアイドルやアニメグッズを集める人、いろいろあるだろう。好きなことにお金を払っているから、無駄なんて一切ないように思えるんだよ」
パパは一息いれて、続けた。
「でも、ある日気づく、自分はこんなものにお金をたくさんかけてしまったってね。理由は簡単だ。人はやがて飽きてしまうことがある。そうなった時、急に今までの気持ちが冷めて、費やしたお金と時間を無駄に感じてしまうのさ」
「うーん。言われてみると、飽きちゃってから無駄だなぁと思っている」
カノは、自分のことをふり返って言った。
「そしてね、人によって価値観が違うということは……誰かから無駄使いしていると思われているともいえる。人それぞれ興味が違うから、なんであんなことにお金を払ってまで熱心にやるのだろうって思われることもあるわけだ。ある日、興味を失ってしまった瞬間、その誰かと同じ視点になって、恥ずかしくなるということもあるだろうね」
「無駄使いは、生きていくために必要な『消費』ではないんだよね?」
ハルは確認したくて聞く。
「そうだね。だいたいは、好きなことや興味のあることに見境なくお金を使ってしまうことが多いのではと思う。好きなものを買いこめば、しあわせをひと時、感じることができるからね」
「パパ、無駄使いしないコツはあるの?」
「ぼくもそれを知りたいよ。今の話だと、好きなことだから、ついついお金を使ってしまうってことだよね。無駄使いをさけるのは、難しそうだ」
「お金を使う時の理由を明確にするってことが大切だ。好きだからとか、集めているからとか、お買い得だからとか、浅くしか考えないのはダメだね。お金を使ってまでして、自分は何を感じたいのかってことを深く考えるんだよ。お金を払って手に入れたもので、どんなことをしたいのか。それはどれくらいよく使うのかとかね。それの代わりになるものを、すでに持っていないかと考えるのもよいね。買ったものを長く大切にしたら、どんな良いことがあるだろうかと想像するのもいい」
「上手にお金を使うのって、むずかしー。そんなこと考えずに、使っていたよ。なんだかムシャクシャして、お菓子をたくさん買ってしまったことも実はあるの」
カノは、恥ずかしそうに言った。
「ストレス発散のために、お金を使ってしまった経験はみんなあるだろう。だけど、よく考えてみよう。お金を使わずに、気分転換はできないのかな? 例えば、散歩やジョギング、持っている好きなマンガを読みなおす、持っている少し古いゲームを楽しむ、おしゃべりをしてスッキリする。いろいろな発散方法があるはず。無駄使いしないコツのひとつは、身近でお金のかからない気分転換の方法を知っておくといいと思うよ」
「そっかぁ。言われてみると、お金を使わなくてもよかったのね。うぅ、もったいない」
カノは、肩を落とす。
「無理にお金を使わなくても、気分良くなる方法は……いろいろありそうだなぁ。サッカーとかのスポーツなんかは、疲れるけどすごくスッキリするから」
ハルは、自分の体験をふり返った。
「ねぇ、無駄使いしないのも大事だけど、そろそろもうひとつの『投資』について、教えてよ!」
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