第5話 実技

 俺は心の準備をする為にも早めに準備を済ませ、闘技場に向かうと、俺と同じように早めに来て準備をしている人は沢山いた。


 闘技場は大体30m、ルールは、相手に攻撃を与え、その人と体を連結している人間を模した人型の魔道具破壊する。もしくは相手を降参させること。


 そして試験が始まりを迎え、審判が爆発魔法で空に向かって対戦スタートの合図を送り出す。


 次々と試合が終わって行く。俺じゃ勝てるかどうかと思うような人もいれば、まだあまり闘い慣れていないんだなとわかりやすい動きをする人もいた。


 魔物とは戦ってきたが、人間と闘うのでは根本的に違うため、段々緊張してきた。そろそろ俺の番。


「アリス・グロリダ、ハルト・テイディス前へ」


 周りの受験者が先程までとは違う、これを待っていたかのような視線を向けてくる。なので直感的に嫌な予感を感じ取ってしまった。


「では、開始!」


 審判が空に向かって爆発魔法を放つ。


 相手は剣を持っていないということは魔法使いだ。相手の強さがわからない以上無闇に間合いを詰めるのは避ける。


 先制は俺だった。


「冷え穿て!」


 丸い氷の粒が相手に向かって飛んで行く。


「燃え盛れよ!」


 俺は土の壁を建てるなどして防いでくるのかと思ったが、相手は予想と反する動きをした。防いで来るのではなく、上回る火力の魔法を放ち、相手の魔法を消し飛ばした。


 その魔法は俺の魔法に当たったあとも、威力が少し減衰しただけで、そのまま飛んできた。


 俺と同じ下級魔法の筈なのに、俺が放つ魔法とは段違いの威力。


「何だよこれ・・・」


 自然に呟いてしまった。魔法では勝れないため、どうにかして俺の剣が通ずる間合いに敵を入れなければならない。


「吹き荒れよ!」

 

 俺は身体強化魔法を自分に掛け、再び下級魔法を放ち、少しずつ距離を縮める。だが近づいても土魔法で間合いに入れることを防がれ近づくことも許してもらえない。それに相手は俺と同じ魔法を放ち、俺の魔法を糸も簡単に破壊してくる。


 俺が自分の間合いまで距離を縮めようとしているのに気づいたのか、様子見+魔法の後出しを止め先制を取ってくる。


「天に昇る日のように 燃え盛れよ!」


 俺へ向けて火が飛んでくる。俺は氷魔法で多少相殺し、身体強化で避けることができたがこれが続くと考えれば俺は泣きたくなる。


 二節の下級魔法。三節からは中級魔法となっている。階級が上がることに消費する魔力量、魔力出力調節が必要になる。


俺が様子見をしていると相手が煽り気味に言葉を投げかけてくる。


「貴方じゃ私には勝てない。わかってるでしょ?」


「うっ・・・黙れっ!」これぐらいしか言い返せない。実際本当に勝てる自信がない。相手は俺より格上の魔法使い、剣と魔法を使っても間合いまで持っていけない。


「勝てなくても言ったことを後悔させてやるよォォォォ!」さっき相手が言ってきたことにイライラした。


「やってみなさい?どうせ出来っこないから」

 

再び戦闘が始まる。


「行くぞォォォ!冷え穿て!吹き荒れよ!」

 

 俺は身体強化で全速力で弧を描くように走り、さらに加えて魔法も放つ。相手が魔法を対処している間に距離を縮める。後7m


「少しはやるみたいね。隔たり爆ぜろ!」

 

 下から生まれた土の壁が爆破する。土魔法と火魔法の複合魔法だ。


 少し足止めされたが俺は気にせずに距離を縮める。後5m。


「冷え 凍てつく大地よ 氷塊来たれ!」


 氷の中級魔法。中級魔法は一般の冒険者などが使う魔法だ。この歳で扱えるのは才能としか言いようがない。


 相手と自分の距離は5m。


 俺にその魔法は避けれるとは思えない。だからそのまま突き進む。


 自分の一部となった右手に持っている剣に、無意識に今ある全ての魔力を込める。


 目の前の地面からいくつもの氷塊が俺に向かって這い出てくる。


 右手に全ての力を込め、走りながら剣を構える。


完全に隔たるように伸び切ったいくつもの氷塊。


「やってやるよ!!」


 雄叫びを上げながら氷塊に向かって剣を振る。


 パリンと氷塊が割れた音が聞こえる。


 氷塊の先には焦る素振りを見せず、笑顔の女がいた。


「君、なかなかいい動きするじゃん。でも、君の動きに剣が耐えられなかったみたいだね。今回は私の勝ち」


 そう言われて右手に持っている剣を見る。刀身はさっきまで持っていた剣の半分ほどしかなかった。


それに魔力が尽き、視界が暗くなっていく。薄っすら確保できる視界で勝敗を確認する。


 審判の隣にある俺側の人間を模した人型の魔道具は倒れていた。どうやら相手の魔法を斬ることはできたが、剣が耐えられずいくつかまだ魔法を喰らってしまったみたいだ。

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