10-4
そして、現れた応援には、もう一人意外な人物がいた。
「あはは……こりゃ驚いた。どうして来たんですか?「警視監」。」
稲取の乗る車両には、警視監・高橋の姿があった。
かつて北条とコンビを組んだ、捜査一課の伝説。
『火の玉刑事』と呼ばれた、情熱溢れる名捜査官である。
そんな高橋が、車両内から拡声器を出す。
「コラァ! こんな閑静な住宅街で大騒ぎしてる連中! 全員表に出ろ! 俺が説教してやるよ!」
拡声器など無くても聞こえるような大声で、高橋は小島邸に向かって叫んだ。
「おいおい、あれが警視監……閑静な住宅街って、あのオッサンが怒鳴ってる時点で閑静じゃねぇよな……」
虎太郎が思わず苦笑いする。
「はは……相変わらずだねぇ、高橋のオッサン。」
高橋は、なおも叫ぶ。
「神の国だか夢の国だか知らねぇが、ちょっとオイタが過ぎるんじゃねぇのか? 俺が出てきたからには好き勝手させねぇ。下らねぇ革命ごっこは終わりにしようや!」
そこまで言うと、高橋は右手を上げる。
それを合図に、SITが一気に小島邸との距離を詰め、刑事が数人突入準備をする。
「ちっ……逃げられねぇじゃねぇか……!」
アサシンは舌打ちをすると、駆けつけた応援の様子を見る。
「……アンタにゃ、勝てねえな……。」
どこを見てそう言ったのか、虎太郎とあさみには確認できなかったが、確かにふたりはアサシンの言葉を耳にした。
(ん? 昔、あのオッサンに逮捕されたことのある奴か?)
(警察に顔見知りが……いる?)
このアサシンの一言が、虎太郎とあさみに一瞬の隙を生んだ。
「でも、ここで捕まるわけにはいかないんでね!」
「あっ!!」
「しまった!!」
アサシンはそのまま窓の方に走ると、勢い良く窓の外に飛び出した。
「おいおいここ、2階だぞ!」
地上までなかなかの高さである、小島邸2階。
そこから躊躇なく、アサシンは飛んだのだ。
「……あっ!」
あさみがアサシンの後を追おうと窓に手を掛けた瞬間……
アサシンは、隣家の屋根に次々に飛び移り、そして細い路地へと飛び下り、消えた。
「ここが住宅地であるってことを、我々は完全に忘れたねぇ……。」
北条が悔しそうな表情を見せた。
ある程度密集した住宅街であれば、隣家までの距離はさほど離れていない。
アサシンほどの身体能力を有していれば、飛び移るなど造作もないことなのである。
「裏側から逃げたよ、緊急配備!」
北条が窓から大声で応援部隊に叫ぶ。
それを聞いた稲取と古橋は、即座に部下に指示を出し、住宅街の大捜索が始まるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます