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そして、現れた応援には、もう一人意外な人物がいた。



「あはは……こりゃ驚いた。どうして来たんですか?「警視監」。」


稲取の乗る車両には、警視監・高橋の姿があった。

かつて北条とコンビを組んだ、捜査一課の伝説。

『火の玉刑事』と呼ばれた、情熱溢れる名捜査官である。

そんな高橋が、車両内から拡声器を出す。



「コラァ! こんな閑静な住宅街で大騒ぎしてる連中! 全員表に出ろ! 俺が説教してやるよ!」



拡声器など無くても聞こえるような大声で、高橋は小島邸に向かって叫んだ。



「おいおい、あれが警視監……閑静な住宅街って、あのオッサンが怒鳴ってる時点で閑静じゃねぇよな……」



虎太郎が思わず苦笑いする。



「はは……相変わらずだねぇ、高橋のオッサン。」


高橋は、なおも叫ぶ。



「神の国だか夢の国だか知らねぇが、ちょっとオイタが過ぎるんじゃねぇのか? 俺が出てきたからには好き勝手させねぇ。下らねぇ革命ごっこは終わりにしようや!」



そこまで言うと、高橋は右手を上げる。

それを合図に、SITが一気に小島邸との距離を詰め、刑事が数人突入準備をする。



「ちっ……逃げられねぇじゃねぇか……!」


アサシンは舌打ちをすると、駆けつけた応援の様子を見る。



「……アンタにゃ、勝てねえな……。」



どこを見てそう言ったのか、虎太郎とあさみには確認できなかったが、確かにふたりはアサシンの言葉を耳にした。



(ん? 昔、あのオッサンに逮捕されたことのある奴か?)



(警察に顔見知りが……いる?)



このアサシンの一言が、虎太郎とあさみに一瞬の隙を生んだ。



「でも、ここで捕まるわけにはいかないんでね!」


「あっ!!」


「しまった!!」



アサシンはそのまま窓の方に走ると、勢い良く窓の外に飛び出した。



「おいおいここ、2階だぞ!」



地上までなかなかの高さである、小島邸2階。

そこから躊躇なく、アサシンは飛んだのだ。



「……あっ!」



あさみがアサシンの後を追おうと窓に手を掛けた瞬間……


アサシンは、隣家の屋根に次々に飛び移り、そして細い路地へと飛び下り、消えた。



「ここが住宅地であるってことを、我々は完全に忘れたねぇ……。」


北条が悔しそうな表情を見せた。

ある程度密集した住宅街であれば、隣家までの距離はさほど離れていない。

アサシンほどの身体能力を有していれば、飛び移るなど造作もないことなのである。



「裏側から逃げたよ、緊急配備!」



北条が窓から大声で応援部隊に叫ぶ。

それを聞いた稲取と古橋は、即座に部下に指示を出し、住宅街の大捜索が始まるのであった。

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