6-9

「ただいま~」



捜査一課から特務課司令室に戻った北条。


「あ、お帰りなさい。」


いちばん最初に目が合った志乃が挨拶をする。


「ただいま。志乃ちゃんさ、今日は何時で帰る?」


「私ですか?とりあえず21時には仕事が片付くと思うんですけど……。」


「そっか。ひとつお願いがあるんだけど……。」



申し訳なさそうに手を合わせる北条。そしてその様子を見ていたあさみを手招きで呼ぶ。



「なぁに?」


「志乃ちゃんとあさみちゃんに、少しだけ協力して欲しいんだ。」



それは、北条が連続殺人犯を逮捕するための『布石』。



「志乃ちゃんの部屋を貸して欲しいんだ。なぁに、僕が足を踏み入れたり、汚したりはしない。あさみちゃんを少しだけ、部屋にいれて欲しいんだ。」


「え……?」


北条の言葉の意図が全く読めない志乃。

あさみも同じだったようで、



「北条さん、言ってる意味が全く分からないんだけど……。」


と、口を尖らせる。



「うん。最近の連続殺人犯の次のターゲット、それはきっと志乃ちゃんだと僕は踏んでるんだ。」


「わ……私ですか?」




北条の真剣な推理に、志乃の表情が凍りつく。

それでも、北条は言う。



「うん。僕が犯人なら、次は志乃ちゃんかな。だから、あさみちゃんに志乃ちゃんのふりをして、志乃ちゃんの部屋で待機していて欲しいんだ。」


「なるほど!私なら、余程のヒットマンでも来ない限り、やられないからね!」


「そうそう、それでね……。」



北条が、犯人を炙り出すための作戦を、志乃とあさみに告げる。



「それだけで、いいの……?」


「うん。きっと犯人には『それしか出来ない』と思うんだ。」


「はい……そう言うことなら、了解です……。」


「ごめんね志乃ちゃん。でも志乃ちゃんの身の安全は僕が保証するよ。捜査一課にも協力を頼んである。それに、僕も一緒にいるからね。」


「……分かりました。あさみちゃん、これが私の部屋の鍵です。」



北条を信じた志乃は、あさみに自分の部屋の鍵を手渡した。



「……ありがと。絶対に北条さんにいい方向でバトンを渡すからね!」



志乃から鍵を受け取ったあさみは、そのまま志乃の部屋へと走っていった。



「北条さん、いよいよ確信に迫ったのね。私たちに出来ることは?」



あさみが去った司令室には、司、辰川、悠真が控えている。



「3人は……いつも通り仕事して、いつも通りにあがって欲しい。」


その北条の言葉に、3人は驚く。


「犯人逮捕のチャンスなんでしょう?」


「うん、だからこそ、『いつも通りでないといけない』んだ。」


3人に普段通りの仕事をするよう告げる北条。

その言葉には、確かな理由があった。



「とにかく……今夜、犯人を逮捕するよ。」

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