6-7

それから、特務課による執念の捜査は続いた。

捜査一課とも連携し、ここ3件の事件を徹底的に洗い始めた。


被害者たちに用いられた薬品関係は、どこから仕入れられたものなのか?

どのようにして使われたのか?

販売元、搬送先、搬送元……あらゆる経路を辿った。


しかし、なかなか有益な情報は得られない。



「なんでこんなに痕跡が見つからないんだろうね……。」


「うん……入手経路も見つからないとなると……犯人がすでに『持っていた』ということになるんですよね……。」


「あんな薬品、初めから持ってる奴なんて、いるか普通?」



特務課のメンバーが、資料を広げて話し合う。

その話し合いを聞き、違和感を覚えた人物が、ただ一人……。



(薬品をすでに『持っていた』……。)


手帳を広げ、考えていた北条だった。



「志乃ちゃん……ファインプレーかもしれないよ?」


「……え?」



薬品を犯人がすでに持っているかもしれない。

そう口にした志乃の言葉が、北条は引っ掛かったのだ。



「確かに、事件前後の販売履歴、搬送記録に犯行で使われた薬品が残されていないのだとしたら……、その薬品は、犯行前に購入されたものではないということだよね?つまり……初めから持っていた、または貯蔵されていたものを使用したということになる。そんな薬品を貯蔵している人って……」



北条の頭の中で、少しずつパズルのピースが合致し始める。



「医療、化学の関係者?」


「それか、生物学って線もあるよね?」


「そうね。ではみんなでその関係から優先的に洗っていくことにしましょう。すぐに出て!次の事件が起こる前に!」



司は、北条の閃きにはすぐに反応するようにしていた。

天才的なIQを持つ北条の、その頭脳と長年捜査一課で培われてきた経験が融合したとき、大抵の事件は解決に向けて動いてきたからだ。



「良いのかい?まだ『何となく』そう思っただけだよ?」


「良いんです。北条さんの『何となく』は、ある意味『核心を突いた』という意味ですから。」



昔から互いのことを知っている、北条と司。

この信頼感は、長年の刑事生活で培われているものだった。



「それで……北条さんはどちらへ?」



司が気になったのは、北条の今後の動向。

きっと、事件解決に向けて動き出すと推測するからこそ、その動きに興味を示さずにはいられない。



「僕は……身内でその筋の情報に詳しい子から聞き込みをしていこうかな、と。大筋の方針が決まったなら、それに詳しい『仲間』から聞き込んだ方が近道でしょ。じゃ、僕も行ってくるよ。」



そう言うと、北条は司令室を後にした。

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