6-6
奈美の事件から、一週間が経った。
「今日も、虎太郎君は休み?」
「うん。やっぱり……ね。」
奈美はその後、救急搬送されたものの、搬送先の病院で死亡が確認された。
失った下半身が見つからないまま、先日家族により葬儀が執り行われた。
「やはり、刑事の君に奈美を託すのではなかった!!」
「奈美を……娘を返して!お願い……!!」
参列を拒否された虎太郎は、両親から辛い言葉を浴びせられ、そのまま自宅マンションへと帰っていった。
それから、部屋から出ることなく、ずっと出勤もしていない状態である。
何度か北条がマンションに顔を出したものの……。
「ワリィ、北条さんの気持ちはありがたいんだけどさ、奈美が殺されて……今の俺には守るべきものがねぇんだわ。」
そう言って、出てくることはなかった。
「まぁ、気持ちはわかるよ。ずっと一緒に暮らしてきた、新しい家族になるはずだった女性があんな目に遭ったんだ。奈美ちゃんを守るため、治安のために刑事になった男が、守るべき女性を失ったんだ。それは……ね。」
「虎太郎くん……大丈夫かしら?」
「大丈夫ってことは、ないよね……。」
「あぁ……あんな叫び声、聞かされちゃぁな……。」
志乃、悠真、辰川も虎太郎のことを心配している。
しかし、あの破天荒な虎太郎の、この世の終わりのような絶叫を聞いてしまった今では、『きっと戻ってくる』と自信を持っては言えなかった。
「どちらにしても、私たちにできることはひとつだけ。いち早くこの事件の犯人を……それだけじゃないわ。先日の2件の事件の犯人も突き止めなくてはならない。こんな悲しいことが、二度と他でも起こらないように。」
「そうね。私は引き続きパトロールを続けるわ……って、あのさ……。」
前向きに特務課内の方針を決めた司と、自分の責務を果たそうと意気込んだあさみ。
そんなあさみが、あることに気が付いた。
「私……港区をパトロールしてたんだ、ここのところ深夜は。虎太郎の家って、港区のマンションじゃなかった?」
「あぁ……そうだよ。港区の、駅前のマンション。人通りはまぁまぁ多いから、深夜だけ気を付ければあからさまな犯罪に巻き込まれる心配は少ないかな?」
「そうよね……だとしたら、奈美さん……どこで犯人に捕まったのかしら……。他の被害者のことは知らないけれど、課のメンバーの婚約者さんなら、ある程度の足取りは絞れるんじゃないかな?」
あさみの言葉に、一同が注目する。
「それだ……。まずは、事件前数日間の奈美ちゃんの足取りを追ってみようか。」
北条の瞳に火が付いた。
「必ず、捕まえてやろう。奈美ちゃんの……虎のためにも!」
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