6-3
「……ってわけでさ。最近、妙な事件ばっかりだぜ。」
その日の夜。
虎太郎は自宅マンションで、婚約者の奈美との時間を過ごしていた。
「でも、特務課……だっけ、良い職場なんでしょう?」
「え?なんでわかるんだ?」
「だって……最近の虎ちゃん、生き生きしてるから。」
「生き生き……ねぇ。」
虎太郎が特務課に来てから、虎太郎は自身の実力に疑問を抱いていた。
自分は本当に、事件解決の役に立っているのか?
北条、辰川、あさみ、悠真、志乃、そして司。
各部門のエキスパートたちの中で、自分が出来ることは何なのか……。
「……ったく、7人しかいねぇ部署なのに、みんながみんな超人過ぎて困っちまうよ。俺だけ一般人みてぇだ。」
奈美がビールの缶を虎太郎に差しだし、虎太郎がグラスを差し出す。
なみなみと注がれるビールを、虎太郎は一気に流し込む。
晩酌をしながら愚痴を言う。
それは、奈美の前だからこそ出来ること。
普段、虎太郎は愚痴を周囲に言うタイプではない。
納得がいかなくても、上手くできなくても、そんな悔しさやもどかしさをぐっと心の奥に押し込め、糧にするのが虎太郎なのだ。
「きっと、虎ちゃんにも特殊能力があるんだよ。」
不意に、奈美が虎太郎に言う。
「俺に?……皆みたいなえげつねぇ特殊能力が?」
「そうそう。だって、そんな人の中に配属になったんでしょう?」
奈美はにこにこと微笑みながら話す。
「だったら、虎ちゃんも何らかの、そして他の6人にも負けない能力があるんだよ。だってそうでしょう?一人だけ一般人なんて配属させたら、それこそパワハラよ。みんなより劣るっていうのが分かってるんだもの。」
くすくすと笑いながら、卓上にピザを置く奈美。
「……そんなもんか?」
「そんなもんよ。くよくよ考えたって仕方ない。北条さんだっけ、いつも虎ちゃんと一緒に事件を解決すると、お菓子を差し入れてくれるのよ。虎のお陰で今日も事件解決だよ~って。」
「……北条さんが?」
虎太郎が特務課に配属になった日、北条は半ば押しかけるようにして虎太郎宅に上がり込んだ。
「これからバディになるんだ、仲良くしようよ」
などと言いながら、ちゃっかり奈美とも親交を深めていた。
「うん。大丈夫だよ虎ちゃん。北条さんと一緒なら、きっとお仕事、上手くいくよ。」
「ずいぶん買ってんだな、北条さんのこと。」
「えぇ、だってイケてるオジサマじゃない?」
「おいおい……ははっ……」
虎太郎はビール、奈美はワインを飲みながら、二人顔を見合わせて笑いあう。
「ねぇ、もし私が危ない目に遭ったら、必ず助けてね?」
「あぁ……もちろんだ。」
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