5-3

虎太郎と北条が別行動をとって1時間。



「悠真!!」


「はい了解。」



司令室に飛び込んだ虎太郎の頼みを、悠真は予め察して準備を進めていた。



「あの、『神の国』のサイトを……」


「だから、了解。」


「え?」


「何のために無線がついてるのさ。さっきのやり取り、ずっと聞いてたよ、早速準備してるから、少し待っててね。」



悠真は、自前のノートパソコンを司令室の端末につなぎ、あれこれ操作をしている。



「あれだけの信者を抱えるサイトだからね。いろんなプロテクトや裏コードがありそうなんだよね。こっちの情報を逆にハッキングされても困るから、準備だけは万全にしておこうと思ってね。」



「ほう……すげぇなやっぱり。で、どのくらいかかるんだ?」


「準備にあと20分。あとは……やってみないとわからないかな。」


「まぁ、そうだよな……。頼むわ。お前しかこのサイトをどうにかできないからな。」


「あとで、甘いものでも奢ってよ~」


「はいはい、分かったよ。」



虎太郎は、このまま司令室で事の顛末を見守ることにした。



一方、北条は……。



「ありがとうございました。情報収集がなかなか捗らなくてね。事件直後で心中お察ししますが、あえて伺った次第です。わかってください。この後、同じような悲しい事件が起こらないようにするためです……。」



大学生の自宅を後にし、他2件の同時多発事件の犯人の家族のもとに来ていた。

家族たちは悲痛な表情で、しかし北条にありのままを話してくれた。

その中で分かったこと。


3件の犯人たちは皆、家庭環境に問題はなかった。

そして、共通するのは……。


「やっぱり、サイトだったか……。あのサイトを開いたということは、何かしらの不安や問題があったということだね。そこまで調べるか……。」



北条が、手帳を開き先程まで犯人の家族に聞いていた事項を確認する。

勤務先、恋人の有無、趣味、行きつけの店など……。


「オジサンはオジサンらしく、しらみつぶしに行ってみるかね。」



足を止めている暇はない。

北条は片っ端から足を運ぶことにした。



「よーし、行きますか。……ん?」



そんな北条の携帯に着信が入っている。


「捜査一課・稲取……?」


胸騒ぎがする。

北条は急いで電話に出る。



「もしもし、北条です。」


「あ、北条さん!今どこだ?」


「今……赤羽付近だけど……?」


「すぐに台東区に来てくれ!」


「台東区……?」



珍しく取り乱している稲取。

ただ事ではない様子に、北条の足が自然と台東区の方へ向く。



「高層ビルの立ち入り禁止区域に、民間人が大勢……!」



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