3-13
そして、中山の逮捕から3日後……。
「やぁやぁみんな、すまないねぇ、長いことやすんでしまったよ。」
特務課に北条が復帰した。
「北条さん!」
「もう無事なの~?」
司令室の面々が、北条のもとに集まる。
「うん、インフルエンザだってさ。嫌だねぇ、毎日3食きちんと食べて、おやつまでとってたのに……。」
「食生活の問題じゃねぇだろ……。」
復帰した北条は変わりなく、飄々としていた。
「あ、辰川さん、今回の事件で大活躍だったんだって?テレビで見たよー」
「……なーに言ってるんだ。最後はお前の根回しだろうが。ったく、食えねえ奴だぜ、お前はさ。」
北条と辰川が固く握手を交わした。
「で、どうだった?僕の相棒は。」
「あぁ、刑事としちゃぁまだまだだが……良いものを持ってる、それは俺でも分かったぜ。」
今回、北条が辰川に付くよう進言した理由はふたつあった。
「でも、虎の直感と行動力は、今からでも即戦力でしょ?」
「まぁ、そこに救われた部分もあったからな。」
ひとつは、虎太郎の行動力と直感力。
事件の流れを感じとる嗅覚があり、経験が少ないが上にこれまでの警察の風習、固定観念にとらわれることがないと言うこと。
爆弾事件のような多くの部署が関わる事件では、やれ手柄や連携など様々な面で警察が動きにくい。
今回、特務課をはじめとする警察各部署、そして民間人である西尾までもが迅速に行動・協力できたのは、虎太郎が各部署に掛け合ったと言うところも大きい。
そしてもうひとつは……
「それに、辰川さんにつけば、刑事としての経験が間違いなくひとつ上がる、僕はそう思ったのさ。」
自分以外のベテラン刑事、辰川のような刑事と組むことで、虎太郎の視野が広がり、犯人逮捕以外の刑事としての役目も見えてくるのではないかと考えたのだ。
「どうだい虎、勉強になったろう?」
「あぁ……。今回は犯人逮捕だけが刑事の目的じゃないってことを教わったよ。犯人の背景とか、被害者遺族のこと、そして周辺の住民のこと……正義を守るためには、いろいろなことを見て、守らなければならない。それが刑事の役割なんだな……。」
北条の願いどおり、虎太郎は今回の事件をもって大きく成長したようだ。
北条は満足そうな笑顔でうなずく。
「それでいい。民間の人が突然被害者になる、それが事件だ。僕たちはしっかり周りを見ないといけない。分かったね?」
「……あぁ。」
「今度は僕も辰川さんのパトロール、連れていってもらおうかなー」
北条は、おどけて辰川にそう言った。
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