第4話:命の価値

中山の爆弾事件から2ヶ月後……。



「あれから、特に大きな事件もなく平和だな~」


「そうだねぇ、それがいちばんだよ。」


「辰川さん、応援要請です。」


「あー?なんだ?」


「近所の小学校へ、防犯指導の応援以来です。」


「あぁ?生活安全課はそんなに人いねぇのかよ全く……。はいよ、行ってくらぁ。」




有事の際の特務機関である特務課。

都内では最近大きな事件もなく、特務課のメンバーはそれぞれの部署の応援に回っていた。



「昨日は交通整理、一昨日は伝票処理……。なんか俺たち、何でも屋みてぇだなぁ……。」



机でコーヒーを飲みながら、虎太郎がぼやく。

その向かい側、緑茶を啜りながら饅頭を頬張る北条が虎太郎の様子を見て笑った。



「良いじゃないか虎ぁ。仕事がないっていうのがいちばん平和で望ましいんだよ。特務課にとってはね。」



北条はここ数日、警察学校の臨時教官、幼稚園の防犯指導、大学の防災訓練など、精力的に動いていた。



「でもね虎太郎くん、仕事をしないとお給料は入ってこないよ。さぁ、虎太郎くんの今日の仕事は……。」



志乃がパソコンの画面を見た、その時だった。



「入電!!銀行強盗事件が発生!場所は―――」



署内放送で、事件発生が流れる。



「はぁ!?銀行強盗!?」



思わず虎太郎が立ち上がる。

司が志乃を見る。



「情報は?」


「いえ、まだ詳細は……。」


「えーとね、台東区の中央銀行みたいだね。ほら、もうシャッターがぜーんぶ閉まってる。人質が何人かは分からないけど……最低でも行員は全員中だね。」



志乃が言いよどんでいる間に、悠真がすぐに情報をモニターに映す。



「悠真くん、どこでその情報を……。」


「ん?SNSとかその辺を全部引っ張ってみた。今の世の中、何か大事が起こったら、警察よりも先に動画を撮ってSNSにあげる。そう言う人が多いんだよね。悲しいことだけど。でも、そう言う人がいるから僕には見えるんだけどね~」



パソコン、インターネット、そしてSNSなどに精通している悠真。

志乃が公式情報、いわば『表』の情報を集め、精査し計画を組み立てるプロフェッショナルであるのに対し、悠真はSNSや裏の投稿サイト、闇サイトなど『裏』の情報を探すことに実力を発揮するプロフェッショナルなのだ。



「……公式情報だけではどうしても分からないことがある。志乃さんに見えない角度の情報を悠真くんが見つけ、サポートする。特務課の情報網は警視庁随一よ。」



悠真の情報をもとに計画を練る志乃。

そのふたりの姿を見て、司は特務課の強さを実感するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る