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こうして、事件は解決したわけだが、被害者遺族たちの悲しみは消えない。



「……やるせないねぇ。」



それぞれ、被害者遺族に事の顛末を報告するのも警察の役目。

被害者たちの多くは、『捜索願』という形で、家族たちに帰宅することを望まれていたのだ。



「……まったくだ。事件を解決しても、死んだ人はもう生き返らない。逮捕したら、犯人はそれで終わり。罪を償えば、場合によっては社会復帰だってあり得る。なんか……理不尽だよな。」



虎太郎が悔しそうな表情を浮かべる。

こんな表情を、北条は何人も見てきた。



―――北条さん……犯人だけまたのうのうと社会に出るのが、俺には納得できないっすよ!!―――


―――なんで、あいつが生きてて、被害者は死ななければならなかったんですか!!―――


―――あいつが代わりに死ねばよかったのに……―――



そんな言葉を、先輩刑事として幾度となく聞いた北条。

もちろん、自分もそう思ったことはある。

それでも……。




「……犯人が逮捕されたことで、この先同じ悲しみを背負う人がなくなる。ずっと暗く冷たいところに置き去りにされた被害者さんたちも、ようやくお家に帰れる。少しでも……それが救いになればと思うよ。」



悲しげな表情を浮かべながらも、それでも北条は虎太郎にそう言った。


それしか、言えなかった。



「そう……だな。」



そんな北条の気持ちを察したからこそ、虎太郎はそれ以上の言葉を口にしなかった。



美しい女性を狙った、卑劣な犯行。

たった一人の勝手な行動による悲劇は幕を閉じた。


しかし、遺族たちの悲しみは、消えることはない……。




「後味……悪いな。」


「うん……だからこそ、僕たちは真剣に、そして必死に捜査しなければならない。それしか出来ないけれど、それが僕たちに出来ることだよ……。」



悲しみに暮れる遺族。

これで何人目の涙だろうか。



すっかり小さく、丸くなってしまった遺族の背中を遠巻きに眺めながら、北条と虎太郎はふたり、呟くのであった……。

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