第5話 プラネタリウムの公園

 ★


(あんな人に優しくしてあげて損した。男の人って、みんな美人に弱いんだから!)


 セナは、ライトのことを誤解したままふくれっ面で公園に立ち寄った。


 遊具などはない、簡素な憩いの場。

 白いベンチに座り噴水のやさしい水音に耳を澄ませていると、気持ちが落ち着いてきた。

 このエリアは、1Gに調節してあるため母星と変わらない。


 だからより安心できたのかもしれない。


 しばらく、ぼんやりしていると人工光の明かりが落ち夕方となった。

 宙港のドームは、宇宙が見えるエリアがあるが、都市部のドームはほとんどが環境映像投影型だ。いつの間にか、ドーム内の天井には星々が映し出されていた。


 彼女はいつも宙港が閉まるとこの公園でぼんやりしていた。


(わかってる、お父さんもお母さんも悲しいことを忘れるために新しい土地で一生懸命働いている)


 セナは、ひざを抱え込んだ。

 うつむくと涙がこぼれて膝が濡れた。


(でも、わたしはこんな見知らぬ場所で夢中になれるものなんて見つけられないのよ! お姉ちゃんがいなくなって、お父さんもお母さんもそばにいてくれなかったら、わたしは一人ぼっち)


「こんな星、嫌い……だいっきらい……」


 搾り出すようなセナの言葉に答えたものがいた。


「君は、一人じゃないよ。いつもお姉さんが見守ってくれてるし、僕もいるじゃないか? 僕は、君に出会えたこの星が好きだな」


「ライト!?」


「まあ、無重力でぐるぐるするは勘弁だけどね」


 どうやって追いついたのか、ライトがセナの隣に座っていた。


「さっきは、案内してくれてありがとう。お礼もいわないままだったから気にしてたんだ」


 ライトは、笑った。

 セナは、ライトが急に現れたことと心を読むようなことを言ったことにおどろいて目を瞬かせた。


「い、いつのまに来たのよ!?」


「たった、今。でも、すぐ帰らないとだから、明日もう一度宙港で会おう。

 待ってるから」


 そういうと、ライトの姿は消えてしまった。


(消えた!? いったいなんなの!!)


 セナは、混乱した。


 ライトは、人の心を読むようなことを言った上に、急に現れて、消えた。


 テレパス? 

 異星人エイリアン? 

 幽霊?


(ううん。幽霊なんているわけない。だったら、お姉ちゃんが幽霊になって戻ってくるもの……)


 銀砂を撒いたような偽物の星空は、彼女の心を完全に癒すことはできなかったが、瞬くはずのないプラネタリウムの星が瞬いたようにセナは感じた。


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