第15話 ようやく晴れ舞台です

 アーシャさんの問いに、私は何とか誤魔化そうとして頭を必死に回転させる。


「えっと……知っていたというよりかは、実はこれも仮説で実際にそうなっているのかどうかは分からない感じですね。ただ、光とか闇が現実的なものだと言うイメージを持てれば、そのイメージの正誤を問わず、これらの魔法が使えるというのは事実みたいです」

「なるほどね! 実際にそうなっているかはあまり関係ないのかもしれないと……。やっぱりレイラは面白い発想をするね!」


 アーシャさんはその説明で納得してくれたみたいだ。

 私の説明を聞いてニコニコとそう言った。

 あ、危なかったぁ……。

 ここで異世界人ってバレたら、もしかしたら大変なことになっていたかもしれないからね。


「しかし、やっぱりこれは凄い研究結果だよ! 私でも光魔法や闇魔法が使えるようになるなんて、思いも寄らなかった! うんうん、これはやっぱりレイラに目をつけて大正解だったねぇ。自分の慧眼に惚れ惚れするよ」


 終始嬉しそうなアーシャさん。

 それからふと思いついたように、イタズラそうな笑みを浮かべて私に言った。


「あっ、そうだ! ねえ、この研究結果を使ってちょっと来週の定例魔法会議で仕掛けをしてみない?」

「仕掛けですか?」

「そうそう。面白いことを思いついちゃったんだ」


 そう言ってアーシャさんはその面白いこと・・・・・を話してくれた。

 なるほど、それは確かにみんな驚くかも。

 ふふふっ……これが成功すれば面白いことになるぞ……。

 それから二人して徹夜して、その作戦を練り続けるのだった。


 ちなみにその日の夜、帰るのが遅くなった私は、リーチェに早速怒られることとなるのだった。



   ***



 それから一週間が経過した。

 この一週間は定例魔法会議に向けて資料を作成したり、仕掛けを用意したりで忙しくしていた。

 思ったより準備が急がしくて、新しい研究は出来ていない。

 本当は魔力量測定器や古代魔法やらの研究もしたかったのだが、準備の方が最優先ということで一時的に我慢していた。


 本当はメチャクチャ研究したかったんだけどね!

 仕方ないよね!


 ちなみにまだカレイシアさんは前線から帰ってきていなかった。

 大丈夫だろうかと少し心配していたが、アーシャさんが言うには別にいつものことだから心配する必要もないとのこと。


 そしてそんな中、ようやく私の晴れ舞台、定例魔法会議が行われようとしている。


 私は朝っぱらから定例魔法会議の会場に足を運んでいた。

 どうやら王城の一角にある大広間で行われるらしい。

 壇上に上がり、研究経過や結果を次々と発表していく方式みたいだ。

 聞き手は宮廷魔法使いと魔法使いギルドのトップ、それから王宮の重鎮たちだ。

 控え室で私は、アーシャさんに見繕って貰った深紅のドレスに着替えながら、緊張を和らげるために深呼吸をしていた。


「すぅ……はぁ……」

「もしかして緊張してる?」


 深呼吸していると、隣で同じようにメイドにドレスを着させられているアーシャさんがそう尋ねてきた。

 アーシャさんは筆頭宮廷魔法使いなので、本来聞き手に回るべき人なんだけど、どうやら発表のために今回は聞き手はしないみたいだ。

 もう片方の筆頭宮廷魔法使いであるカレイシアさんもいないけど、大丈夫なんですかと尋ねたところ、適当に手をヒラヒラさせながら問題ないと言った。

 どうせ後で論文を読むことになるだろうし、レイラの研究結果よりも凄いのなんてないだろうからねと。


 そんなことを思い返しながら、私はアーシャさんの問いに苦笑いをして頷した。


「はい。流石に少し緊張してますね……」

「そうよね。十歳で定例魔法会議の壇上に上がるって時点で普通じゃないしね」


 アーシャさんは私の言葉にそう返してから、一回言葉を句切り、更に話を続けた。


「緊張するなとは言わないし、間違えるなとも言わない。でもね、別に失敗しても問題ないから。どうせ、レイラの研究結果はとんでもないものなんだから、多少の失敗なんてすぐにみんな忘れるわよ」


 その彼女の何気ない言葉は、緊張する私の心にストンと落ちていった。

 失敗しても問題ない。

 そうだよね、結局緊張してるのって、失敗したらどうしようとか考えてるから緊張するんだよね。

 アーシャさんの言葉で私の心は大分安らいだ。


「ありがとうございます。助かりました」

「ううん、本当のことを言っただけだから。自信持ってね」


 そうして私たちはドレスに着替え終わり、順番を待った。

 しばらくして控え室に王城の使用人がやってくると、私たちにこう言った。


「そろそろ出番です。準備は宜しいでしょうか?」

「はい、問題ありません。いけます」


 そうして私はアーシャさんとともに晴れ舞台へと向かうのだった。

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