第4話 お茶会だぁ
一週間後。
私は母に連れられて王都までやってきていた。
馬車で三日もかかった。
なかなか遠い。
ずっと馬車に座っていたせいでお尻が痛い……。
「にゃぁ」
アルルはずっと私の膝の上で惰眠を貪っていた。
ズルい。
てか、お尻が痛いのって半分アルルのせいかも。
お茶会は王城の中庭で開催されるらしい。
いきなり王城とか、なんか凄い。
ちなみに、緊張とかは全くしていない。
なるようになれが私の精神だからだ。
礼儀作法とかも別に習ってないけど、まあ何とかなるよね。
そして登城して、馬車から降り母に続いて中庭へ。
メイドやら騎士やら文官みたいな人やら、いろんな人が王城の廊下を慌ただしく行き交っていた。
それでも母を見ると立ち止まって通り過ぎるまで頭を下げる。
伯爵夫人って凄いんだなぁ、とどこか他人事のように思った。
私の腕に抱かれているアルルも、その城の雰囲気に飲まれて大人しくなっていた。
中庭に着くと、既にテーブルが用意されていて、数人の女性が座っていた。
中には少女を伴っている女性もいる。
おそらく親子なんだろう。
母はテーブルに近づくとスカートの裾を摘まんでカーテシーをした。
私もそれにならってカーテシーをしてみる。
「お久しぶりですわ。わたくし、エレナ・フォン・アルシュバインですわ。そしてこちらが娘のレイラ・フォン・アルシュバインです」
あ、もしかしてお辞儀するの、このタイミングが良かったのかな?
いいや、もう一度やっちゃえ。
周囲の反応を見てみると、穏やかな表情で見てくるのが二組、不快そうな表情でこちらを見るのが一組。
おそらく間違えだったんだろう。
まあ、間違えてしまったものは仕方がない。
そして母に続いて椅子に座る。
椅子の数を見てみると、どうやらあまりは残り一つだし、私たちが来たのはほぼ最後みたいだ。
偉い順で到着するとかなのだろうか。
母が隣の女性とあらあら、うふふと話し出してしまったので、暇を持て余してしまった。
私はこれを好機と考えて、思考に没頭した。
自分の手のひらをジッと見つめる。
う〜ん、やっぱりどれがどの属性に対応しているのか分からないよねぇ……。
もしかしたら、手相によって威力が変わったりもするのかもしれない。
やっぱりサンプル二つじゃ比較しきれなくて困った困った。
火属性が得意な人100人、水属性が得意な人100人とか、そのレベルで集めて比較してみたいな。
この、前世で言うところの生命線が何に関係するのかも少し気になるし。
普通に属性なのか、はたまたもっと違う意味を持つのか。
「――さん、レイラさん!」
「はっ、はい!」
そんなことを考えていたら、母に自分のことを呼ばれ、肩を叩かれているのに気がつかなかった。
どうやら背後に誰かいるらしい。
振り返ってみてみると、そこには驚くレベルの美女がいた。
サラサラの銀髪、スッとした体つき。
何だか人としての品格の違いを見せつけられているみたいだ。
……てか、あれ。
周囲の人たちが固まっているように見えるけど、なんで?
もしかして……この人が第二王女で筆頭宮廷魔法使いのアライアス王女殿下……?
流石に無視し続けたのは拙いかな?
そう思ったがアライアス王女殿下だけは穏やかそうな……いや、どちらかと言えば面白そうな表情をしていたから、まあええかと開き直ることにした。
「ねえ、どうして手のひらなんて見つめていたの?」
興味深そうな声でそう尋ねられる。
私はどう説明したものか一瞬悩んだが、これは是非とも全て説明するしかないと思い、手相が自由形の魔法陣になっているのではなかという仮説の説明をした。
すると彼女は少し考え込んでから、こう言った。
「もし良ければ、ちょっと後で二人でお話ししない?」
その言葉に母は慌てて私に頭を下げさせる。
「す、すみません、王女殿下! うちの娘はまだ十歳で外に出たこともなく、礼儀も知らず……」
「あっ、ううん、違う、そういう意味じゃなくて。普通に楽しく二人でお話をしたいなぁって思っただけ。友達ってこと」
母の言葉に重ねるように首を横に振って言うアライアス王女殿下。
それを聞いた母は驚き目を見開いて固まってしまった。
他の人たちもあんぐりと口を開けて驚いている。
あれ、もしかして今私、王女殿下に友達認定されちゃった?
う〜ん、喜んでいいのか駄目なのかよく分からない。
これで私の実験の時間が減るなら、ちょっとお断りしたいとこ……。
そう思っていた矢先、アライアス王女殿下は私の耳元に口を寄せ、私にしか聞こえない声でこう言うのだった。
「後で、手相の魔法陣について色々とお話ししましょうね。それを解き明かすためなら、どんな協力も惜しまないわ」
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