第30話 10.祠(ほこら)
山姥の後を追って、哲也達6人は車を走らせ更に山道を行く。
『加賀谷先生、アレ、アレじゃない、小さい小屋みたいな・・』
福岡先生が何かに気づき、山道の右端にはある小さい建物を指さす。
哲也も、家族で山登りをした時に同じ様な物を見た事が有った。
哲也は、頭の中で、三角屋根で剥き出しになったお地蔵さんが3体祭られていたり、ちゃんと
建物の輪郭は、車が近づくたびに鮮明になっていく、それは小さな
加賀谷先生は、その祠の目の前、山道の左側に車を止める。
『・・扉が開いてるぞ』と加賀谷先生が、祠の扉が開いている事に気がついた。
『加賀谷先生、山姥があの扉から入って中に身を潜めている可能性が高いですよね・・』
福岡先生が、囁くように言った。
『ヨシ、此処はオレの出番だな。福岡先生、コイツらを頼みます』
加賀谷先生は、そう言うと福岡先生が座る助手席と自分が座る運転席の間にあるダッシュケースを開け、二つの物を取り出し、それを持って車から出て行った。
加賀谷先生が一体何をするだろうと、車の中で5人はジッと先生の行動を見つめていると、先生は小さなカンの蓋を開け、その中の液体を祠にかけ始めた。
液体をかけ終わった先生は、ズボンの右側に入れていた
『エッええええ、ウッソ、そんな事していいの!加賀谷先生!』
福岡先生が、驚き叫ぶ。
哲也達、子供達は福岡先生の驚きの意味を知らず、唯、茫然と加賀谷先生の事を見つめていた。
祠にかけられた液体に火がつくと、一瞬で
加賀谷先生は、火がつくのを確認すると、小走りで車に戻って来た。
『任務完了!』
『ケンカや、
車の扉を開け、入ってきた加賀谷先生は平然とした様子でそう言い、豪快に笑って運転席に乗った。
そんな加賀谷先生とは、対称的に福岡先生は顔を引き攣らせて話始めた。
『加賀谷先生、あの建物って、公共のモノじゃないんですか?』
『あんな事、やっちゃって、良いんですか?』
福岡先生が、声を震わせながら言った。
『・・・妖怪相手ですから、大目に見てくれますよ』
加賀谷先生は、そんな怒りなさんなという様な感じて、言葉を返す。
『・・・そうなんですか?だけど・・皆にどうやって、理由説明するんですか?』
『妖怪がいたから、燃やしたって、誰が信じるとおもってるんですか?』
『あっ・・・』
加賀谷先生の言葉が、息がつまった様に止まる。
『あの火、消えるんですか?、他のモノに火が移って、山火事になんかなりませんよね』
福岡先生は、恐怖に震える様に続ける。
『アッ・・・』
加賀谷先生の声が、止めを刺された様にまた止まる。
『加賀谷先生、何も考えて無かったんだよね』
ナオケンが、沈黙を破り、担任の先生の状況を説明する様に言った。
『バカ!、大人はね、そう言う事を考えて、行動するの!・・子供じゃないんだから!!』
突然、福岡先生が怒り出し、その他の5名の心は凍りつく。
『消えろ、消えろ、消えろ・・』と加賀谷先生が、呪文を唱える様に呟き始めた。
『消えろ、消えろ、消えろ・・』と4人の生徒が担任の先生を助ける様に合唱する。
『消えて、消えて』と福岡先生も両手を胸の前に組み、祈る様に参加する。
5分後、皆の祈りが届いたのか、火は祠を全焼した後、消えたのであった。
やっと火が消え、ホッとする6人。
『あ、皆、あれ見て、長い紙の様なモノが残ってる!』
いずみが指さした方向には、まるで炎が避けて通ったのではと思わせるほど、無傷の絵巻物が地面に敷かれていた。
暫くすると、紙から湯気の様に、黒い瘴気が舞い上がって来た。
『先生、あれ何かしら?』
いずみの疑問の声が車に響き、それからも間もなく、六人の乗る車は暗闇に包まれていた。
気づけば6人は、山姥の縄張りの紙の中に、吸い込まれていたのであった。
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