第23話 3.対策会議(後編)

図書館についた3人は、手分けをして3枚のおふだの昔話の絵本を探した。


いずみが直ぐに見つけ、2人に伝える。


絵本の山姥の絵は、小さい子供向けの為、ちっとも怖くない絵だった。


『アイツが、この絵みたいに、可愛ければ・・本物とは全然ちがうよな』


『ホント・・』


ナオケンと哲也が実感を込めてそんな会話をする。


3人は、急いで5年3組の教室に戻る。


夏休みの廊下は、本当に静かで、すこし怖い雰囲気があった。


『お前ら、廊下走らなかったか?』


『走ってません!』


ナオケンと哲也が声を揃えて言う。


『そうか、やけに早く帰ってきたと思うけどな』


加賀谷先生も、別に注意する気もなく、いずみには挨拶代わりのようにも聞こえた。


いずみは、気を使い、みんなが手に取りやすいように、向かい合わせにした机の真ん中に絵本を置いた。


『ああ、じゃあ、私が代表して、絵本朗読するから、みんなはそれ聞いていて・・』


福岡先生が、そう言い、いずみの置いた本を手にとり、みんなが聞こえる声で音読しはじめた。


誰もが知っている有名な昔話である。


ただ、改めて聞くと、色々と大事だと思う場所が出て来る者である。


福岡先生が読み終わって、5人はそれぞれ意見を言い合った。


『3枚のおふだって、本当にあったのかよ』


『魔法じゃん、これって』


ナオケンが飽きれたように言う。


『1枚目が、柱に貼って、山姥が聞くたびに、小僧さんの代わりに、小僧さんの声で受け答えをする』


『2枚目、大きい川』


『3枚目、火の海』


いずみが、小僧がおふだを使って山姥に向かって出したものを皆に確認するように言う。


『だけど、全部、効かなかったんだ、つまり山姥には何も効かない・・』


哲也が、失望したような声で、呟くように言った。


『もっと、別のモノを出せば良かったんだよ、機関銃とか・・』


『加賀谷先生、昔に機関銃はありません、現代だって、所持すれば法律違反です』


『例えばの話ですよ、ハハハッ』


『最後に、和尚さんが山姥を豆のように小さくして、お餅に入れて食べっちゅうんだよね』


『ヨシッ、ギャル曽根さんを呼ぼう!』


『ナオケン君、真面目に考えてよ・・』


『ゴメン、調子に乗っちゃった』


『・・・・オモチに入れてか・・・、和尚さんが何かの容器に入れて封印したとも解釈できない?』


福岡先生は、真剣な顔でそう皆に問いかけた。


『・・・確かに、オモチで包むって、直ぐに大きくなって、出てきそうだものね』


いずみも、納得するように福岡先生の意見に賛成する。


『カッチのお祖父ちゃんが生きてればなぁ』


『何か、教えてくれたかも・・』


『・・・・だけど、今更そん事言っても、始まらないよ』


ナオケンの言葉を注意する様に哲也はそう言った。


『現実、今、俺たちには3枚のおふだなんていう、便利なモノは無いんだ』


『それじゃ、今の時代にある3枚の札を探そうぜ』


加賀谷先生が、変な事を言った。


『今の時代にある3枚のおふだ??』


『それって、何ですか?』


『なあに、今の時代にあるもの、テレビだって、昔の人が見たら、サッキ、犬崎が言った様に魔法だぜ』


『箱の中に、いっぱい人が入ってるって、電話だってそうさ、遠く離れた人と話し合える、それって昔の人から言わせれば妖術じゃん』


『3日後に出発する宿泊研修まで、山姥と戦う事を想定して、みんなで探そうぜ、俺たちの3枚のおふだ』


加賀谷先生は、そう言うと、みんなを勇気づける様に親指を立てた。


『今日は、解散、明後日また9時に、この教室に集合』


『みんなの意見をまとめて、午後それを買い物に行く』


今度は、福岡先生が勇気づける様に大きな声で言ったのである。


哲也達3人は、頼もしい先生たちがいてくれて、嬉しかった。

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