第22話 2.対策会議【前編】

次の日、約束通り哲也たち4人と加賀谷先生は学校に集まった。


なぜか、当直のフクサダこと女性教師の福岡先生も話し合いに5人の参加してきた。


『つまり、佐々木一馬さんの幽霊の考えでは、山姥が住むその紙、絵巻物を燃やせば、退治できると』


『だったら、簡単だ・・・其処に行って、ほこらごと焼いてしまえばいいだけじゃん』


加賀谷先生が、楽観的な様子で、そう言った。


すると、それを聞いていた福岡先生が、冷静な口調で加賀谷先生に反論した。


『加賀谷先生、ほこらって神様や、仏様を祭っている場所でしょ。勝手に燃やせるモノでは・・』


『有りません!』


『確かに、そうですが・・・一番簡単かと・・』


『やっぱり、その絵巻物を祠から出してから、焼かないと』


『ハイ、そうですね、そのとおりです』


先生達二人の会話を聞きながら、哲也たち子供達3人はそんな二人がいる事が頼もしく思っていた。


(・・カガヤンとフクサダ先生が結婚したら、絶対にフクサダ先生が強いな・・)


(確か、かかあ天下でんかって言うんだよな、そういうの)


哲也は、二人の会話を聞きながらそんな事も考えられるほど余裕が戻って来ていた。


(やっぱり、昨日カガヤンに相談して良かった)


哲也は、自分の選択が間違ってなかったと素直に喜んでいた。


その後、いずみが少し遠慮がちに口を開いた。


『あのですね、もしもですね、その紙の中に引きずり込まれたらって、考えてもいいのかなあって』


『・・・・確かに、最悪の事態って事を、想定して対策を練っていてもいいよね』


『ハイ、福岡先生、対策を練るって、言葉分かりません!』


ナオケンが、素直に手を挙げ、福岡先生に、言葉の意味を聞く。


『あ、ゴメン、簡単にいうとね、対策を立てる。ま、対策をするだね・・』


『あ、それなら分かりました』


『対策って言っても、絵の中、一馬さんも入っていなかったし、絵の中がどうなってるかって』


『分らないよ』


ナオケンが、素直に自分の気持ちを口に出した。


『・・・・』


『・・・犬崎の言うとおりだな、分からない事には、対策も立てようがない』


加賀谷先生が、暫くして、頭を掻きながら、そう言った。


ナオケンの言った言葉が、話しを止めてしまう。


(!!!、そうだ!)


『・・・絵だよ、一馬さんが見た絵、山姥やまんばが子供たちを追っかけてたって』


『それって、3枚のおふだの話に、似てないですか』


哲也は少し興奮したように、自分の頭に浮かんだ事を皆に伝えた。


『・・・確かに、そうだけど』


ナオケンが自信ないように、口だけ同意する様に言う。


『・・・・佐上君が言った事、私は一理あると思うなあ』


福岡先生が、ナオケンとは正反対に、冷静に考えたように、哲也の意見に賛成した。


『昔話ってね。昔の人の創作、つまり作り話もあるけど、実体験を書き残したモノもあると思うの・・』


『私は未だ、自分の目でみてないから、君たちのみた妖怪がいるとは、思えない』


『だけどね、仮に、妖怪がいたとしたら、三枚のおふだっていう昔話が』


『昔の人が、むかし、山姥やまんばに殺されそうになって、逃げて、助かった』


『その経験を、それを私達、未来の人の為に、教訓として、残してくれたのかもしれないって、思うのよ』


『ほら、その一馬さんの幽霊が、最初にあったのは優しそうなおばあさんだったって、三枚のおふだの話にソックリじゃない!』


福岡先生は、声が大きくなったのが恥ずかしいのか、そう言って自分のメガネをとり、キュキュッと拭きはじめた。


『福岡先生、流石さすが!!カガヤンとは違う!』


ナオケンが福岡先生を賞賛しょうさんし、思わず加賀谷先生をあだ名で呼んでしまった。


『犬崎、かがや、オレは、加賀谷先生だ。何度も言わせんな】


苦笑いして、加賀谷先生は何時もの通り、ナオケンを注意した。


『あ、スイマセン】


『じゃあ、おれ達で図書室から、その絵本持ってきますね』


哲也がそう言って、ナオケンと委員長に目で合図を送る。


3人は、先生達の目を意識して、廊下を走りたい気分を抑え、小走りに図書室に向かった。


教え子たちが居なくなった後、加賀谷先生が、申し訳なさそうに福岡先生に言う。


『福岡先生、スイマセン、付き合わせちゃって』


『イエ、私が勝手に付き合ってるだけですよ。だけど、実は、結構楽しんじゃってますよ』


福岡先生は、そう言って笑った。


『じゃあ、今度、オレの買い物にも付き合ってくれませんか?』


『何ですか、急に!』


『いや、冗談です』


『冗談ですか?』


『冗談じゃなければ、宿泊研修が終わった週にでもと、思ったのですが・・・』


『冗談じゃありませぇん』


『分かりました』


そう言った福岡先生は又笑顔になった。加賀谷先生もそれ以上の笑顔になっていた。


先生達のそんな会話を知らずに、3人は先生の目から離れた途端、全速力で走り図書館に向かっていた。

 

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