第18話 8.十年前の真実(後編)
(僕たちは、小さい
(ボロボロの
(長い、横に長い紙だったんだ・・)
(・・紙の中から
(痛い、痛いよって、母さん、助けてって)
(悟は、虫歯の歯を自分で抜くような奴なんだ、そんな強い悟が、泣いてたんだ、しかも1年生のように泣きじゃってくって自分のお母さんを呼んでいたんだ)
(僕が、その声に怖がっているとね、後ろにいた
(だけどね、紙が簡単に取れると思ったんだけど、紙は取れず、逆に紙を取ろうとした
(
(
(その中に、・・・・
(俊哉たち、子供達はまるで何かから、逃げる様に右側を目指して逃げていた)
(不思議な事に、僕は一瞬だけ恐怖をわすれ、俊哉たちが何からにげているのかがきになった)
(自然と何も書かれていない、左側に目が行ったんだよ・・)
(アイツだった・・)
(見た左側に、ジワリジワリとアイツの姿が絵になって浮かび上がって来たんだ。)
(浮かび上がってきたアイツの絵をみて、思わず大きな声で叫んだのを覚えているよ・・)
(アイツが怖かったのもあるけど、叫んだ理由はそれだけじゃない・・)
(アイツの絵の片手には、子供の首が、さとるの・・・悟の首があったから・・)
(その後も・・・信じられない事が続いたんだ)
(浮かび上がった、アイツの絵が、すこしづつ、動き子供達に近づいていき、口からニョロニョロと、アイツの舌が伸びていく、舌は分裂して、それぞれ、逃げる子供たちの首に伸びていくんだ・・)
(気がつけば、アイツの絵の目が、赤く染まっていた。僕には、赤い三日月みたいに見えたんだ)
(僕は、怖くなって、俊哉の絵に伸びるアイツの舌を見るのが怖くて・・・)
(どうしようもできなくて、ただ
(大切な親友の二人、
半透明の少年は、罪を告白する様にそう叫んだ。
(その後は、最初に教えたとおり、外に出た僕を自衛隊の人が見つけてくれて・・・・)
『・・・』
暫くの間、哲也とナオケンは、言葉が出なかった。
辛い経験をした、小学校の先輩、自分と同い年の子が、そんな辛い経験をしていると知って、何を言って励ましていいのか、いや、あまりに可哀そうすぎて、言葉が出なかったのである。
『一馬さん、ごめんなさい、おれ、一馬さんにどんな言葉を言えばいいのか、分らない』
『ただ、いま俺たちは、10年前のあなた達と一緒です』
『僕たちは、未だ死にたくありません』
『俺たちは、どうすれば助かりますか?』
『カッチのお祖父さんも死んじゃって、もう頼れる人は誰も居ません』
『一馬さんなら、って思って今日此処迄来ました』
『お願いだから、教えて下さい』
哲也は、正直に自分の思いを幽霊の一馬に告げたのであった。
(・・・これは、あくまで僕の考えだけど、・・あの紙を燃やせれば)
(・・倒せるかもしれない)
(君たちの友だち、カッチ君のお祖父さんが、アイツを攻撃したんだ。金剛棒っていうのかな)
(アイツが攻撃をくらって、苦しんだとおもったら、それはウソで・・お祖父さんは反撃を喰らってお腹を噛みちぎられてしまったんだ)
(お祖父さんが、死ぬ直前に、本体ではなく分身だったって呟いていた)
(本体って、つまりあの紙、絵巻なんだと思うんだ)
一馬さんが、そう言い切った時である。
窓のカーテンが風も無いのに大きく揺れた。
(ヤバい、アイツが此処に戻ってくるつもりだ。二人とも早くこの部屋から出るんだ)
(君たち、部屋から出たら、看護婦さんに、この部屋に行く様に伝えて、そして逃げるんだ)
(看護婦さんがこの部屋に来れば、少しでも時間稼ぎができる!)
(その間に、逃げるんだ、出来るだけ遠くに、アイツの鼻で、君たちの匂いが分からないぐらい、遠くに)
『エッ、突然そんな事いわれても・・』
(はやく!)
動揺する哲也の身体を、ナオケンが強引に両手で押して無理矢理、部屋の外へ押し出す。
『テッカ、行くぞ!』
その声で、哲也は冷静になり、全速力で逃げた。
ナースセンターの前を走り去る時、ナオケンが叫ぶ。
『510号室の人が暴れてます。暴れてます。はやく言って下さい』
哲也も同じことを続けて叫ぶ。
二人の声を聞いて、慌ててナースセンターから看護婦さんが出て来た。
『アナタタチ、待ちなさい!止まって』
二人は止まらなかった。
全力で、死に物狂いで、階段を飛び降りる様に降りていったのである。
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