第9話 9.最初の犠牲者
哲也、ナオケン、いずみの3人はお守りと護符を貰ってその日は家に帰った。
哲也は、家に着くとカッチの祖父に言われた通り、3枚の護符を玄関、裏口、そして自分の家の門に貼ってもらった。
護符には、地元の
しかし、言われた事をしっかりした哲也であったが、その日は、病院で経験した怖い体験のせいで一睡もできなかった。
(ナオケン、委員長の家は、ちゃんと貼ったかな・・)
(カッチの家は、お祖父さんが、妖怪退治をするっていってたけど、大丈夫かな・・)
そんな事を考えながら、時折、外から聞こえてくる音に、妖怪が来たんじゃないかと思ったり、ビクビクしながら朝を迎えたのであった。
朝になり、哲也の母親が部屋まで慌てて起こしに来る。
『哲也、大変よ!野田君のお祖父ちゃん、勝平寺のご住職さんが、亡くなられた見たいよ』
『今、テレビのニュースでやってるわ』
『エッ、ウソだろ』
母親に言われ、哲也はテレビのある居間に急いで向かう。
テレビのコントローラを持ちチャンネルを変える。
3回目にかえたチャンネルで、地元のニュース番組で、見た事のあるカッチの家が映されていた。
テレビの女性アナウンサーが低い神妙な面持ちで伝える。
『ご住職の野田
勝平寺の門から本堂に向かう道で、血を流しているところを発見したと、上からみた勝平寺の敷地内を図にしたモノを指さし、アナウンサーは続ける。
『長く勝平寺のご住職として、地元の方から慕われていた清明さんの死を、近所の方々は例外なく、驚き、悲しんでおりました』
『警察は、現在強盗若しくは、通り魔の犯行両面で調査をしております、昨日付近での不審者の目撃情報が無かったかを調査しているとの事です』
よく見るニュースであるが、現場は昨日行ったばかりのカッチの家である。
犠牲者は、あの優しいカッチのお祖父さんである。
(アイツだ・・アイツが来たんだ。アイツが来て、カッチのお祖父さんを・・・)
『母さん、オレ、カッチに電話する。』
哲也はそう言うと、母の同意を待たず、固定電話の場所まで走り、よくかけているカッチの家の番号に電話をかけた。
『哲也、止めなさい。朝、未だ早いし、お祖父さんがこんな事になって、今多分、野田さんの家、電話に出れる状況じゃないわ!』
『・・・・現在、電話に出る事ができません。御用件のある・・』
哲也の母が言う様に、カッチの家の電話は留守番電話になっており、機械的な音声が哲也の持つ受話器から聞こえて来た。
『母さん、オレ、カッチが心配だ。今から、勝平寺に向かう』
『そんなの許す訳ないでしょ。先ずはご飯を食べなさい』
『8時半、過ぎたら、出かけてもいいわ。先ずは、ご飯を食べ、落ち着いて』
『克彦君、ご家族の方も、忙しいかもしれないから、邪魔になると思ったらすぐに帰って来るのよ』
哲也の母は、そう言うと何時もの様に朝食の準備を始めた。
『こんなことになるなんて、本当にびっくり・・』
哲也の母も、未だ身近に起こった凶悪事件が信じられないように、独り言を囁いている。
しかし、哲也の耳には母の独り言も聞こえていなかった。
(・・・アイツだ。アイツが来たんだ。俺たちを病院から、探しに来て、匂いを辿って勝平寺に)
(カッチのお祖父さんは、退治しようとして、返り討ちにあったんだ)
(おれたちが、カッチの家に行かなければ、こんな事にならなかったのか?)
(だとしても、もし行かなければ、死んでいたのは、お祖父さんではなく、俺ら4人の中の一人・・)
哲也の心の中に、カッチのお祖父さんに対する罪悪感、しかしどうする事も出来ない絶望感が生じた。
(お坊さんのお祖父さんが、退治出来なかった妖怪を、俺たちはどうすれば・・)
哲也が、そんな事を考えていると、持っていた電話から音が聞こえて来た。
『哲也、電話出てよ。手に持ってるでしょ!』
母に言われて、哲也は電話に出る。
『もしもし、佐上ですが・・』
『テッカ、俺だ。テレビ見たか?多分ヤバい事になってる』
『委員長にも、オレ電話するから、後で一旦学校に集合、それでみんなでカッチの家に行こうぜ』
電話をかけて来たのは、ナオケンだった。
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