第4話 4.あだ名(3人組と委員長)
次の日、哲也が学校に行くと、既にカッチとナオケンは到着していた。
『テッカ!、オセェぞ、誘った奴が先に来てなきゃダメじゃね!』
ナオケンが、ワザと怒った口調で言う。言葉と顔は、真逆で、笑顔である。
『スマヌ、スマヌ、ちょっと、寝坊して』
哲也は、その場で作った理由を、カッチと同じように笑顔で返す。
『あとは、松本さんだけだな・・』
『しかし、俺たちが先に来て、松本さんが後に来るってのも、なあ、委員長が一番に来るべきだ』
『いくら、可愛いからといって・・』
ナオケンが、そんな事言うので、カッチがナオケンに絡む。
『ナオケン、お前、松本さんを好きなのか?』
『なんで、そうなる。俺は、事実を言っただけ。クラスの高橋や、竹田のような狂暴女共と比べれば』
『なあ、テッカ、お前はどう思う?』
『エッ、なんで、俺にソレ聞く、俺は知らね』
突然、ナオケンが哲也に話を振るので、テッカは慌ててそう答えた。
3人がそんな会話をしていると、松本いずみの声が遠くから聞こえてきた。
『おはよ~う。待たせてごめんね!野田君、犬崎君、今日はお手伝いに来てくれて、ありがとね』
『そこで、缶コーラを2本買ってきたの、良かったら飲んで!』
いずみは、そういうと自分のカバンから2本のコーラを出し、二人に渡した。
『いいよ、いいよ、貰えないよ』と性格が優しいナオケンが断ろうとする。
『じゃあさ、仕事、終わったら、2本を4人で分けて飲むの、いいんじゃね』
カッチが、断るナオケンを見ながら、冷静にいずみに提案する。
『それじゃ、チャチャと仕事を終わらせて、皆で教室でコーラを飲みましょう!!』
いずみは、ちょっと考えて、教室にあるマイカップの事を思い出し、良い案だとナオケンの提案を聞き入れたのであった。
哲也、ナオケン、カッチの3人は、コーラのご褒美が嬉しかったし、松本いずみの気遣いが嬉しかった。
(松本さんの、こういうところ、好きだあ)と哲也はつくづくそう思ったのである。
3人は、ものすごい勢いで体育館の倉庫から、宿泊研修に持って行く備品を運び出し、学校の玄関先まで持って行ったのである。
30分もしない内に、4人は仕事が終わり、自分達のクラスである5年3組の教室でコーラを飲み始めた。
『今日は、3人とも、来てくれて本当に有難う!!私一人だったら、午前中に終わらなかったかも、あと、本当は誰もいない学校に一人で来たくなかったの。皆がいてくれて、本当に安心したわ』
いずみは、素直にホットした気持ちを皆に話をした。
『丁度、今日、テッカとナオケンと遊ぶ予定だったからな』
カッチが言った言葉に、突然、不思議そうにいずみが質問する。
『野田君、3人はどうして、あだ名で呼び合ってるの??』
『野田君は、カッチでしょ。野田克彦、かつひこだから、カッチ??』
『犬崎君は、犬崎直哉 いぬさき なおや、イヌをケンと読み替えて、なおやのナオと、ケンで、ナオケン』
『佐上君は、??テッカって、どうしてテッカなの、哲也がどうして、テッカなの??』
『松本さん、あだ名に、意味なんかないよ、なんとなく、そう呼ぶ様になったんだよ』
『なんとなく、・・・フフッ、男の子って面白いわね』
『私もあだ名が欲しいな!、そうだ、3人で、私にあだ名をつけてよ!』
いずみは、楽しそうに3人にお願いをする。
『マツモンはどう?』とナオケンが、切り出す。
『ダメ、ポケモンみたいだけど、可愛くない!』
(ああ、やっぱり・・ナオケンはすごい、いつも相談して考える時、必ず、先頭になって考えをだしてくれる)
(しかし、いつも、その考えは、否定される。だけど、ナオケンがいつもそうやってくれるから、ナオケンに続けと次々と案が出て来る・・オレも考えなきゃ)
『イズミンは、どうだ』
『ぶうぅ~・・もう、それじゃ、名前とそんなに変わらないじゃない』
いずみは、ちょっと面白可笑しく、わざとふてくされた顔をする。
『テッカ、最後の望みは、お前しかいない、頼む!!』
ナオケンが、真面目に頼むので、皆が哲也の顔をみる。
『・・・・委員長、委員長かな??』と哲也が緊張した
『なに、それ、ただの役職名じゃない、あだ名には、ならないわ』
プンプンしながら、怒ったふりをするいずみ。
しかし、『委員長って、良くない!!カッチどう思う??』
ナオケンが、そう言い、カッチに同意を求める。
『一番、しっくりするね。松本さんって、俺たちの中で、やっぱり委員長なんだよ』
『エッ、それって、私が委員長辞めても、委員長って呼ばれなきゃならないの、それってイジメだよ~』
いずみは、そう言いながら抵抗をするが、結局、3人から委員長と呼び続けられ、最終的に本人が折れる事になったのである。
その後、話題は、宿泊研修でいく風越鬼山の話になった。
『10年前、宿泊研修にいった先輩たちの中で、行方不明が、それ本当、作り話じゃないの??』
『委員長、本当だよ、俺たち、今日、一人だけ帰ってきたという先輩に会いに行こうって、話しをしてたんだよ』
ナオケンが、もうあだ名でいずみを呼び、話しかける。
『それって、やばい、すごい怖いよ、けどすごい面白そう』
『私も着いていっていいかしら?その先輩の家・・』
『家じゃないよ、病院、市立病院に入院している佐々木一馬さん』
カッチが、親戚の叔父さんに聞いた、先輩の居場所と、病院の名前をちょっと大きめな声で告げた。
一瞬、誰もいない隣の教室のドアが風で揺れ、ガタッと音がする。
(嫌だよ、行きたくないよ。何か嫌な予感がする)
哲也は、そう思ったが、いずみの次の言葉が4人の運命を決める。
『市立病院なら、私のお母さんが看護婦で働いてるの、バスでの行き方、私知ってるわ。』
『みんなお金持ってる??』
『持ってるよ・・バス代ぐらいなら』
(ナオケンが、そういうと、もう行く事になってしまうから、困ったモノである)
哲也は、心の中でそう思った。
『ヨシ、行こう!』
『やった!行きましょう、仲良し4人組の初冒険よ!』
『・・・仕方ないな』
哲也の最後の言葉だけが、元気が無かった。
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