第54話 第2回魔法講座
少し混乱した状態のミリアへ提案をしていくニーナの姿がある。
きっと、楽しい事を増やそうとしているに違いない。
「ミリア姉も毎日来れば良いんじゃない」
「あのね、
「ちぇ~、やれる事が増えるのに~」
「ニーナ、新しいことを増やしたいのは分かるけど、時間が足りなくなるぞ」
「今日みたいに畑仕事を終わらせれば大丈夫!」
「いや、それが出来るのはウチだけだから。一応フェリスも出来ると思うけど、おじさんとおばさんが驚きすぎて倒れるぞ」
「えっ?私もなの?!」
「ニーナが魔法を使ってやらかしたから」
「あ~、魔法なのね」
「ちょ~っと待って貰える?魔法が使えるの?!」
「あ~、ミリア姉さんと別れた後だっけか」
「魔法が使えるようになりました!むふ~」
「ニーナちゃんが?」
「え~っと、たぶんミリア姉さん以外全員?ヨミちゃんは使ってなかったけど、教えてはいるよ」
ミリアにとって衝撃の話が飛び込んで来る。
職業を貸し出せるとは聞いていたが、まさか魔法まで簡単に広められるとは思っていなかった。
「……たった半日で、村の魔法使いが6人も増えたの。…どうしようかしら」
「黙ってればいいんじゃない?ミリア姉も使えるようになれば一緒だし」
「いとも簡単に使えるようになるって言ってるけど、加護が無いと無理だからね!」
「だから、お兄ちゃんから職業を付けて貰えばいいじゃん」
「…できるの?」
「ミリア姉さんって、タイチの加護を聞いてたんじゃ?」
「まさかこんな簡単に状況が変化するとは思わないじゃない」
「ミリアちゃん、頭を空っぽにしてると楽よ」
「いえ、サーナさんも簡単に受け入れてたらダメじゃないですか」
「そうは言ってもな。もう使えるようになってるし、あっと言う間だったよな」
「そうよね」
ミリアの顔が今日はよく変わるなと、他人事のように見つめるタイチ。
そろそろキャパシティの限界を迎えそうなので、助け舟を出す。
「ミリア姉さん、無理に理解しようとしなくても良いと思うけど?神父様のように聞かなかった事にするのはどう?」
「神父様の気持ちが理解できて来た……」
「お兄ちゃん、ミリア姉にも魔法職付けちゃえば」
「いや、本人が受け入れられてないんだからダメだろ」
「ニーナちゃん止めて貰える?タイチ君、付けないでね。付けちゃだめよ。ダメだからね!」
なんだろう、フリに聞こえる。これは、付けろと言う事かと受け取った。
にこやかに頷いて、ミリアをPTに登録しいつでも変えられるように準備をする。
「あっ」
「ん」
「知らないわよ」
そうやらサーチ画面を表示しっぱなしが3人居たようだ。
ミリアの光点が黄色から青になったのを見たのだろう。
「3人ともどうしたの?急に声を上げたのに黙ったりして、気になるじゃないの」
「えっと、ミリア姉って肝心な時にドジをしたりする?」
「どういうこと?」
「ただ、なんとなくそう思っただけだけど」
「ミリア姉さん、体に変わった所とかある?」
「本当にどうしたの順々に、って事は次はヨミちゃんかしら」
ミリアは首をかしげつつヨミの方に視線を動かす。
そんな時に今まで魔法を使った所を見せていなかったヨミが、水球を
「ん、こんな感じ」
「えっと…、ヨミちゃん?それは何かしら?」
「魔法」
「………ドジ、体に変わった、魔法…。タイチ君!!」
「はい」
「何かしたでしょ!」
「特に何もしてないですよ」
「そんな事はないわよ。ヨミちゃんが魔法を私に見せてきてるって事は、私も魔法が使えるようにしたんでしょ」
「魔法職にはしてないですけど、変更します?」
「変更しなくていいからね。」
「あれ~~?変えるのかと思って準備してたんですけど」
「ねぇ、お兄ちゃん。どうしてそう思ったの?」
「いや、前の記憶で、3回同じ断り方をしてる時、それを望んでる事があったから、それかなと……」
「タイチ君違うからね……」
「でもミリア姉、私たちと一緒に行動するなら、使えるようにならないと置いて行くこともあるよ?」
「どうしてよ。村の中で置いて行かれるのは変でしょ」
「昨日、山で狩りしたよ?」
「え~と、山菜取りとかかしら?」
「ミリア姉さん、ヨミが鳥で、ニーナが鹿、タイチが猪を狩ってるの、お昼食べたでしょ」
ミリアが両手で顔を覆っている。思っている以上に状況が目まぐるしく変化していたこともあり、受け入れることに難儀している様子だった。
何かを悟った顔をしたミリアから提案が出された。
「タイチ君、お試しで変えて貰える?」
「分かった。魔法職を付けるね」
ミリアの職業を『村人』から魔法職に変こする。切り替えたことを告げると、指先に火を灯す魔法の呪文を唱え始める。
「『我に
「使えると便利だよ?」
「そうは言ってもね、踏ん切りが付かないのよ」
「損しない」
「ヨミちゃん、私もそうだと思うわ。でもね、タイチ君戻してもらえる?」
「分かった。ミリア姉さん、職業を戻すね」
「うん、お願い」
メニュー画面から職業の項目を操作する段階でふと気が付いたことがあった。
『村人』の職業がない事に。
タイチの顔色が青くなり、薄っすらと汗をかき始める。
タイチの様子がおかしくなった事を察知したニーナとフェリスが声を掛けてくる。
「タイチ、顔色が青いけど」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ん?」
「あ、いや、どうしようかと…」
「ミリア姉の職業に何かあったの?」
「えと…、村人の職業が無いんだよね……」
「「「「「「………」」」」」」
「タイチ、村人って職業なのか?」
「そうだったみたい」
なんとも微妙な沈黙が辺りに流れる。
そんな中、ミリアから確認を取る質問が届く。
「タイチ君、確認なんだけど、魔法職から変えられなくなったであってる?」
「変えることは出来るんですけど、最初の村人に戻せなくなりました…」
「そっか、私の職業って村人だったんだ…」
「あれ?ミリア姉、別のことでへこんでる?」
「……加護の力を使っで今まで過ごしてきたから、職業が巫女とかになってるかな~って思ってたの!」
「ねぇタイチ、巫女って職業はあるの?」
「う~ん、職業で巫女は見かけたことが殆どないんだよね。ミリア姉さん本当に巫女が良いの?」
「タイチ君、巫女になれるの?」
「いや、巫女って神の伴侶って意味もあったから、一般人とは結婚できなくなるんだけど……」
興味のある顔でタイチの方を見ていたミリアだったが、巫女は結婚できないと伝えた瞬間に顔がピシッと固まっていた。
結婚の許可を貰う挨拶に来たにもかかわらず、結婚できない職業に就こうとしたらそうなるだろう。
「巫女の職業って、そんな制約があるんだな。初めて知った」
「そうね、昔から年配の方が付いてたから、世襲制なのかと思ってたわ」
「ミリア姉は、やっぱりドジっ子」
「そうよね」
「ん」
「タ、タイチ君、巫女はなしでお願い…」
「それじゃあ、職業はどうします?村人に戻れなくなってるので」
「魔法職になってるのよね。他にどんなのがあったりするの?」
ミリアに職業を聞かれたので、戦闘系と採取系、そして加工系の職業があると、ざっくりと伝える。
今のところ採取系はタイチの近くにいる時に発揮される職業であるので、普段の生活を送るのにはこれが良いだろう。
また、加工系の職業の場合の反応も先ほどの料理を例にして伝える。調理を行った時、完成品の材料が足りなかった時に、家の食材を消費している事が分かったので、もし離れた場所で使用した時の消えるものが分からないと伝える。
残りは戦闘系になるが、ミリアは職業の力が使えるのに、試すこともなく無駄にするのは勿体ないと考えるのではないかとタイチは思っている。
「採取系も加工系も自分の近くに居ないとちゃんと能力が発揮されないかもしれないから、戦闘系を付けておく方が損はしないと思うよ」
「それじゃあ、魔法使いが良いのかしら?」
「ほかの魔法職が良いならそれでも」
「ちょっと待ちなさい、他に魔法職も説明するのね?」
「…折角だから大まかに伝えようかなと。とりあえず魔法使いと僧侶のグループと、白黒赤青とかの色別のグループとあって、魔法使いを選んだ方が楽だよって事を説明しようと思ったんだけど」
「どう違うのかしら」
「黒赤が魔法使いで、白赤が僧侶になるかな。青はモンスターの技を受けないと覚えない魔法だから除外で良いと思う」
「それを聞くと赤が両方使えて便利に聞こえるのだけど?」
「どっちの魔法も中途半端にしか使えない感じで、どちらかと言うと弱体魔法の専門家って考えて」
「本当に色々別れるのね」
「ねぇ、タイチ。村の魔法使いってどれになるの?」
「そう言えばどれなんだろうね?魔法使いって言ってるから、色別のにはなってないんじゃないかな?」
「へ~、そうなんだ。お兄ちゃん、私の職業を黒にしてよ」
「ダメ。危ない魔法が多いから」
「え~~」
いつの間にかミリアが、会話についていけずに置いてけぼりになっている。
ちゃんとミリアのフォローをしなければと、方向修正して声を再度かける。
「ミリア姉さん、混乱するから魔法使いのままにしておくね」
「えっ?えぇ、ありがとう」
「お兄ちゃん、昨日説明してくれた属性も伝えるの?」
「あ~、どうしようか?ミリア姉さん、大まかな属性魔法って知りたい?」
「え~と、火水土風でしょ」
「ん~、基本の4属性だよね。他は?」
「ほか?そう言うって事はあるのよね?」
「タイチ、
「そうよね」
「狩りに行った面々しか伝えてなかったかも。じゃあ、ざっくりと伝えるね。属性魔法は、火水土風氷雷闇光無木重爆かな」
「「「……」」」
「多いよね~」
「昨日聞いたけど、そうよね」
「ん」
「他にも思い出したら増えるけど」
「タイチ君、もうお腹一杯……」
「そう?一応魔法の出し方を伝えようかと思ったんだけど」
「お兄ちゃん、外で練習した方が良いと思う」
「そうね、私も昨日使ったのが問題なかったのか知りたいし」
「じゃあ、外で練習しようか」
ミリアのギブアップ宣言もどこ吹く風となり、外で練習する事に。
この機に、使える属性魔法を増やそうとしているニーナと、昨日使った魔法がどんな分類になるのか確認したいフェリスの言葉が優先されていた。
少し遠い目をしたミリアをヨミが手を引いて外に連れ出していくのだが、タイチは気づくことが出来なかった。
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ご覧いただきありがとうございます。
なんだか話がスンナリと聞こえてこなくて、苦戦してます。
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