第53話 昼食会と花言葉
訪問してきたミリア姉さんを室内へ案内する。
室内に戻ると、母さんが図鑑を見るのを止めて父さんの横に並んでいる。
両親が揃ってこちらを見ていることを確認したミリア姉は、
「カインさん、サーナさん、タイチ君との将来の事についてお話がしたく参りました」
ミリア姉さんには珍しく緊張している姿が
その様子に、父さんと母さんも顔を見合わせて、少し驚いた様子を見せている。
「あの、タイチ君との結婚を認めて下さい」
そう言葉を
挨拶の言葉を受けた2人は苦笑いを浮かべつつ、ミリアへと返答をする。
「ミリアちゃん、顔を上げて貰える?そんなに
「どちらかと言うと、タイチの加護の影響の気もしていて、こちらの方が申し訳ない感じなんだが」
その答えを受けて、パッと顔を上げつつミリアは反対意見を言い始める。
「いえ、そんな事は無いです。私の加護もタイチ君が来る事を言っていたので、運命だと思ってますし、私の方が年上なので、その、大丈夫なのかなと」
「タイチ、しっかり答えてあげなさい」
「ミリア姉さん、結婚を望んでくれていて嬉しいです。結婚自体は、もう少しお互いを知ってからでお願いします」
タイチがその答えを返した所で、母さんに頭を軽く叩かれる。
「結婚の時期うんぬんは後で話せばいい事でしょう。何で今言う必要があるの」
「いや、言っておかないと、直ぐにでもって言いそうだったから……」
「そんな訳ないわよね、ミリアちゃん」
「え、えぇ、そうですよ。ちゃんと時期を見てからです」
「じゃあ、ワタシが先に結婚する」
「ヨミちゃん……、せめて成人してからにしようね」
「んん?、おとうさん、おかあさん、結婚します?」
怪しい返答をしているミリアを
本日3人目となる義理の娘の挨拶に、母さんは微笑みながら状況を認識させている。
「ヨミちゃん、タイチの所にお嫁に来るのは反対しないけど、せめてニーナと一緒に成人してからにしてね」
「したら結婚していい?」
「何回も式を挙げるよりは、1回の方が良いわよね?そうでしょ、タイチ」
「そうだね。何回も式を挙げると大変だし、なにより村の独身男性陣に何を言われるか……」
「うふふふ、タイチ君は人気者ね」
「ミリア姉さん、違うからね…」
「お兄ちゃん、女性陣からも言われてみる?」
「ホントにやめてくれる…?!」
そんなやり取りをしていると、「くぅ~」と小さいお腹の音と、「ぐぅ」と大きめのお腹の音が聞こえる。
「あぁ、すまない。さっき美味しそうな料理を見ていたもんで、出てくるまで我慢するつもりだったんだが無理だったみたいだ」
「お昼たべてから決める」
思っていた通りの人物がお腹の音を鳴らした様だ。
「そうね、お腹が空いていると、ちゃんと考えられないわよね」
「じゃあ、さっき作ってた料理を机に並べるよ」
「お兄ちゃん、もう作ってたんだ」
「みんなが図鑑を見てたからね」
そう返答し、お昼の食事として作っていた料理を、アイテム欄から取り出す。
内容は、猪カツとジビエのステーキセット、それに合いびき肉のハンバーグセットを1つづつ机の上に並べた。
先程確認している父さんとヨミは静かにどれを食べるか思案しているが、他の女性陣の興奮は中々のモノだ。
「えっ?タイチ、この料理は?今まで作った所を見たことがなんだけれど」
「材料が足りなかったり、薪や油を結構に使ったりするから作れなかった料理だよ」
「これって、前の記憶の料理よね?」
「そうなるね。で、母さんに謝らなきゃいけないんだけど、何かの野菜とか、台所から勝手に消えてるかもしれない…」
「どういうこと?」
「家の台所の食材も、この料理に勝手に使われ多っぽいんだよ。で、近しい材料がこの料理に使われているみたいなんだけど…」
「はぁ、分かったわ。後で確認しておくから」
「それで、どの料理を食べるか決めてもらえる?」
「ぜんぶ」
「はいはい、いくつか分けて食べようね」
「あら、分けて食べれるならそれで良いんじゃないかしら。全員分あるんでしょ?」
「じゃあ、いくつか出しておくから、切り分けて食べて貰える?」
「は~い、お兄ちゃん早く出して食べよ」
ミリアを除く面々は、まあタイチならこんな事も出来るでしょうと言った様子で気にも留めていなかった。
だが、巨峰の取り出ししか見ていなかったミリアはそうではなく、口を開けたまま固まっている。
その様子を見ていたフェリスが心配して声を掛けている。
「ミリア姉さん、大丈夫?」
「ふぁっ?あ、えぇ、大丈夫よ?」
「タイチの料理は、初めて見ると見た事のない物があって、理解するまで時間が掛かるから、ミリア姉さんもそうなってるのかなって」
「そ、そうね、急に料理が出てきたのもそうだけど、見た事の無いものばかりだったから、ちょっと戸惑っただけよ」
「ミリア姉さんでも見た事の無い料理なの?色々な処で食べてそうなのに」
「あのね、そんな所には滅多に行けないし、そもそもこんなに良い匂いの料理が目の前に突然出ることはないわよ」
「料理が突然出て来る所は同意できるけど、ミリア姉さん、慣れないとこの先ずっとこんな事が起きると思うの」
「……そうよね、早く慣れるようにするわ」
「ミリア姉さんごめんなさい、昨日色々あって、これだけじゃないんだけど」
「え~と、前に説明された加護とは別のだったりする?」
「説明してるかって言われると、半分はしてるかも?」
「そう…、あとでタイチ君からちゃんと聞かないと…」
「私とニーナも、その見せる事は出来ると思うの。だから、ミリア姉さんにも教えることが出来るわ」
「タイチ君だけじゃないのね…。とりあえず、食べた後で良いかしら?この料理が食べられなくなると悲しいし」
フェリスも同意見なのか頷いて料理の方へと意識を向けなおす。
その間に、タイチは次々と料理を机の上に並べていく。
やはり量が多すぎるためすべてを乗せることはできず、食べ終えた皿を仕舞っていくことで対応することになる。
「それじゃあ、冷めないうちに食べて貰えるかな」
「じゃあ、頂きましょうか」
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
「そのままでも食べられるけど、近くにソースがあるから掛けて食べてね」
「タイチ、これで良いのかしら?」
「あ、フェリス。それを掛けると少し跳ねるかもしれないから気を付けて」
「分かったわ」
フェリスは代表して試してくれている。
各々が切り分けが終わった所で口に運んで感想が漏れ聞こえる。
「ふわ~♪すごい美味しいよ!お兄ちゃん」
「なんだこれ?!ただ焼いた肉じゃないのか?!」
「あらあら、どうしようかしら?タイチにずっと作ってもらった方が良いのかしら」
「ん~~♪口の中がすごく幸せ」
「ん!全部たべる!!」
「はぁ、凄いわね。ただ料理が出てきただけじゃなく、こんなに美味しいなんて」
どうやら全員喜んでくれている様だ。ただ、徐々に食べるスピードが速くなっている気がする。食べ過ぎて動けなくなる様な事にならないように気を付けておくように出す料理を調整する。
「あの、まだ料理はあるけど、今日しか食べられないわけじゃないから、程々にね。材料さえあれば、また作れるから」
「ん!!」
「そうよね、また作って貰えば良いのよね」
「そうだよ、全部食べようとしなくていいから」
「でもお兄ちゃん、全員揃うのって結構難しいんじゃない?」
「その場合は、外で机でも作って食べれば良いんじゃないかな」
「机を作ってって所が既におかしいんだけど…」
「あははは…、これに慣れるようにするのね……」
その後、若干2名食べ過ぎて動けなくなっていたけど、料理を楽しんで貰えたようだ。
空いた皿を加護の中へ片付け、食後のお茶を飲んでいる時にニーナが再び図鑑を机の上に持ってきた。
やはりミリアにも見せる積りの様だ。
「ミリア姉、この本凄いんだよ!」
「本よね?物凄く分厚くて色が付いているんだけど?」
「タイチが神様から貰ったんですって」
「……そうなのね。昨日説明されてなかったと思うんだけど」
「さっき貰ってた」
「…目を離したらダメなのかしら。ちょっと、見せて貰える?」
「どうぞ~」
ミリアは図鑑を受け取り内容を確認している。色が付いてるからか感嘆の声が漏れているのは仕方のない事だろう、
「それにしても、これ程の物を貰うなんて、タイチ君一体何かあったの?」
その言葉で、花言葉の件を各々が思い出す。
「花言葉をまだ聞いてない!」
「そうだったわね、タイチ聞かせてくれるのよね?」
「ん!」
「忘れたままでも良かったのに……」
「あ~、余計なことを言ったかしら」
「ううん、ミリア姉のお陰で聞けるから、問題なしなし♪」
「ミリア姉さん、ありがとう」
「ありがと」
「良く分からないけど、どういたしまして」
「図鑑を貸してもらえる。今から探すから」
ミリアから図鑑を受け取り、良さそうな花言葉を優先で探していく。
「1つでいい?」
「お母さんと同じように3つで」
「…わかった」
流石に状況的に、3対1は不利だった。そしてまさかの4人目から声が掛かる。
「タイチ君。良く分からないけれど、私もお願いね」
「えっ?」
「タイチ、みんな平等にしないとダメじゃないかしら」
「…調べるよ。花言葉優先で決めるから、花は期待しないで」
「うん、待ってるから」
「お願いね」
「ん」
「なんだか楽しそうね~。期待しておこうかしら」
お茶を飲んで貰っている間に、大よその花を決めたので伝える事にする。
「3つって言われたから決めたけど、文句は言わない様に」
先に宣言し、花と花言葉を伝えていく。
ニーナ
かすみ草:無邪気・幸福
フェリス
ヨミ
ミリア
「以上です」
所々あやしい花言葉もあるが、
「お兄ちゃん、ありがとう」
「タイチ、ありがとう」
「ありがと」
「うふふ、花に例えて貰うだけじゃ無くて、花言葉ね~。タイチ君、ありがとう」
「どういたしまして」
「でも、何で桜とかは選ばなかったの?」
「1人だけ桜に例えていいのか?」
「それは、ヤッ!」
「だろ?だから花言葉が絡むと花を選ぶのが大変なんだよ」
「じゃあ、前の時はどうしてたの?」
「そりゃ~…、贈る相手も母親位だったから、1つしか無かったかな」
「どんな花?」
「あら、母親に送る花があるのね。気になるわ」
「ここでは見かけないから、種でもあれば育てるけど」
「そんな事言ってると、また神様から送られてきたりして」
「そうなんどっ…」
「きたっぽい」
「2度あることは3度あるね」
「ん」
「こんなに簡単に神様とのやり取りがあるの?!」
「そうだよ。ミリア姉、驚いてると疲れるよ?」
「無理よ?!こんなの」
見事にカーネーションの種が送られてきた。温室栽培じゃなくても育つのかイマイチわからないが、取り合えずバラと一緒に育てようと決める。
「ミリア姉さんもタイチと一緒に行動すると良いと思うけど?」
「いっしょ」
ニーナを筆頭に、ミリアを急速にこちら側へ巻き込もうとしている気がしてならないタイチでした。
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ご覧いただきありがとうございます。
話が流れてこなかったので、遅くなりました。
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