第52話 合成の料理は
あけましておめでとうございます。
どうぞ本年もよろしくお願いいたします。
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女性陣が図鑑に興味を持っている内に、メニュー画面を使ってステーキを作っていく。
ミリア姉さんが来た時には、すぐ食べられる状態が良いだろう。
他にもメニューを増やしたいと思いながら、メニュー画面を操作していると、買ってきたパンをパン粉へ加工可能となった。
ただ、油をどうすれば良いか判断が付かない。
用意した油が1回で消えてしまうと困るので、台所で揚げる方が良いのだろうかと悩んでいたが、1回だけ作ってみることにした。
小さい木の入れ物に、家の食用油を大さじ1杯から順々に入れて、アイテムとしてカウントされるか確認する。
大体3杯ほど入れてからアイテム欄に戻したところで、レシピ用の油と判定してくれた。
この時は家の油を使えばいいと思っていたが、調理後に母さんから使い過ぎとの注意を受ける事になる。確かに、8名分×大さじ3杯は中々の量だった。
後日、よく考えればメニュー画面を利用して、自分で油を生成する方法があることに気が付く。大豆、米、トウモロコシ、菜種、紅花、ゴマなど色々な食用油があった事を思い出す事になるが、今は料理の合成へと戻ろう。
「さてと、トンカツならぬ猪カツはちゃんと作れてるかな」
メニュー画面内に完成した猪カツを、女性陣から離れた台所で取り出して確認する。
白い皿の上に猪カツとキャベツにレモンの切れ端が乗っている。挙句の果ては、セット扱いになっていたのか、小さな深皿容器にソースらしきものが。
「……何でキャベツとレモンがあるんだろうね。ソースまで付いてるし」
そんなタイチの後ろから、父さんが取り出した料理を覗き込んでいる。
「タイチ、出来た料理ってそれなのか?」
「そうだけど、何でか皿や付属の付け合わせが付いてるんだよね……」
「ん?それのどこが問題なんだ?」
「この辺だと一切栽培されてない野菜と果物があるのと、何故か皿が付いてて…」
「ん?あ~……、綺麗な白い皿だな…」
「誰も持ってないよね?こんな白いお皿」
「料理よりも、その周りの物の方が問題って、不思議な事になってるな」
「あれ?前にお菓子を作った時は、こんな事は起きてなかったのに何でだ?」
「その時は何に入ってたんだ?」
「木の器だったり、木の皿の上に載ってた様な?」
「ちゃんと覚えてないのか?それなら前回も同じように、木じゃないもので出てきたんじゃないか?」
「木製以外だと、ガラスかこの世界だとまだ作れない容器に入って出てくるから、絶対に気づいたはず」
「そうか。ん~、なんでだろうな?何か考えながら作ったとかじゃないのか?」
「……あ~~、ソースどうしようとか、付け合わせがないなって思ったかも」
「じゃあ、それが原因だろうな。他の料理には何か考えてたりはしたか?」
「……した」
「確認しようか」
ジビエのステーキは、熱々の鉄板の上に乗った状態で、上からソースを掛けてジュワーッと蒸発すると驚くだろうなと考えながら作っていた。もちろん付け合わせと、ライスも想像している。
そもそも、アイコン表示になっている段階で、プレートに乗っているのが確認できていた為、覆しようがない状況が出来ていた。ついでに言うと、ステーキセットに見えている。
取り出す前にやらかしていた事が分かり、覚悟を決めやすかった事は言うまでもない。
アイコン表示と同じステーキが出てくるのか、確認をするために取り出す。
木のプレートの上に熱した鉄板があり、その上に良い音を奏でるステーキと付け合わせのポテトと玉ねぎが乗っていた。
もちろんセットとして、ライスの乗った皿とステーキ用のソースも小さな器で付いて来ている。
「美味しそうだな……」
「そうだね……」
「早く食べたい」
匂いに誘われたヨミが、いつのまにか後ろに来ていた。
「うぉ?!」
「!?はッ…。し、心臓に悪い…」
「こっちまで驚いたぞ」
「良い匂いをさせてるのが悪い」
「…食べる前に冷めるとなんだから、仕舞っておくね」
「あっ…、お肉…」
「あとでね」
宣言通りに、猪カツとステーキをアイテム欄へと仕舞っていく。
「もう1品作る予定だったんだけど、どうすれば良いと思う?」
「作る」
「もう既にやらかしてるんだろ?だったら作ればいいんじゃないか。1個も2個も一緒だろ」
「分かった。スープもセットでいけるか、想像しながら作ってみる」
「まった!そこまではしなくていいから」
「そう?どこまで作れるのか試してみようかと思ったんだけど」
「スープはおいしい?」
「そこは美味しいと思う」
「ちなみに材料はあるのか?」
「さっきの料理を作ったときに、お米がなかったんだけど
「もしかして、その辺りの素材を使ってたりしてな」
「……」
「おい?!ちょっと無言になるなよ」
父さんの言葉が気になったので、台所にある
既にステーキは8名分作っていたので、ある程度は減っているかもしれないと思ったが、元々のあった量が分からない。減っていたら母さんに謝ろうと思う。
「試しに1回作って良いかな?ここの米が減るかもしれないし…」
「あ~、知らずに減ってたら怒られるだけだしな。ただ、スープは付けない方でやってくれ」
試しに1回との許可を貰ったので、ハンバーグセットを想像しつつ合成を開始する。
猪肉と鹿肉の合いびき肉と思ってハンバーグを作り出す。どうせ調べるならと、おろしハンバーグを想像する。アイコン表示に、付け合わせの人参とポテトが付き、ライスが付属で付く。
若干、
「父さん、お米が減ったかどうか良くわからなかった」
「安心しろ、ずっと見てたがサッパリだ」
「ん?少し減ってるよ」
「ヨミちゃん、ありがとう。居てくれて助かるよ」
「ん、どういたしまして。早く出して」
ヨミに催促されたので、アイテム欄から取り出す。残念ながらおろしハンバーグにはならなかった。
「美味しそうな匂いと音だな」
「そうだね。でも、どの素材が消えてるのか分からないのが不安かな」
「家にある物だから、持ち物だと思われてるのかもな」
「あ~、そういう考えも出来るよね。でも、そうすると勝手に野菜や米を使い込んでるって事に……」
「何かあれば説明してやるから…」
「ね、食べていい?」
「先に食べておなか一杯になると、さっき仕舞ったのが食べれなくなるけど、この料理で良い?」
「…全部食べたい」
「全部は食べきれないんじゃないかな…。みんなと食べる時に分けるのはどう?」
「ん、そうする」
確認のために出したハンバーグのセットを仕舞い、人数分を作った方が良いのか判断が付かなかったので、父さんに意見を聞く。
「父さん、この料理も全員分作った方が良いかな?」
「作ってもいいと思うけど、食べきれなかった時はどうするんだ?」
「前に実験した時に、加護の中に入れておけば温かいままだったのを調べたから、取っておけばいいかなって」
「それなら作り置きしておけば、明日以降も食べられるな」
「ん~?食べに来ていい?」
「えぇと、なるべく今日食べれるように分けるね」
「ん、楽しみ」
全員が全ての料理を選んでも大丈夫なように、残りの分を作り始める。
残りの分が作り終わった辺りで、玄関の方から声が聞こえて来た。
「こんにちは~。ご挨拶に伺ったのですが」
ミリア姉さんに違いないと思い、両親への挨拶を滞りなく行えるように、玄関へ迎えに行く。
無事に挨拶と昼食会が終わると良いなと思いつつも、食べた事のない食事だから無理かもしれないと薄っすらと感じつつ、ミリアを迎えるのでした。
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