第41話 ミリア姉さんは有能です?
ミリアにタイチの情報を軽く教え認識のすり合わせをしたのだが、眉間に
「タイチ君、軽く教えて貰っただけで、これだけあるの?」
「まだ2割も能力を使えてないです…」
「あ~、成程ね。聖人認定されても可笑しくないわね。あなた達、どの位の人が知ってるか分かるかしら?」
「お父さんとお母さんでしょ。あと、ここに居る4人と、あとは少しだけ知ってるのはスタシアさんで、リネットおばあちゃんは何か力があるって気づいてるくらい」
「良くもまあこれだけの力を最少の人数だけに抑えてるわね。普通、派手に使いまくって村中に知れ渡るモノなのに」
「まあ、両親から隠して置く方向でって意見を貰ってますし、使ったら
「でも、初日に畑を作って私にバレたけどね」
「ぐっ…」
「タイチは私と別れた後で、直にやらかしてたのね」
「ゔっ…」
「まあ、加護を使い始めたら何かしらミスはするから。それよりも知っている人が少ないのは良い事ね」
「神父様、どうするの?」
「一番簡単なのは、加護の力がまだ分かってないので判明するまで待ってくださいかしら。まあ、色々と察してくださるわよ」
タイチは今までバレた人物が理性的なこともあり、村で安易に使い続けた場合の事を考え、急な寒気に襲われ激しく身震いをしていた。
「そうするとミリア姉が防波堤になってくれるの?」
「なるつもりで入るけど、私だけじゃ無理ね。もっと協力してくれる人が必要になるでしょうし」
「そっか…、じゃあ神様が私にくれるって言った約束で、聖女にでもなろうか?」
「止めて置きなさい。自分の自由意思なんて無くなるわよ。まあ、タイチ君と一緒には居られるでしょうけど…」
「みんな難しく考えすぎ。物を作る加護と収穫する加護、それと探し物を見つける加護だけ言えばいい」
「まあ、いま使ってる加護はそれがメインかな?」
「めいん?」
「あ、ごめん、中心とか優先的って思って」
「もしかして偶に訳の分からない言葉って、昔の記憶に由来するものだったり?」
「成るべく使わない様にしてるんだけど、考え事をしてたりすると出る事があるね」
「それでさっき口から出てたわけね」
「フェリスちゃんにタイチ君、昔の記憶って何かしら?」
「……」
「お兄ちゃんの前世の記憶ですよ~」
「……前世の記憶のある理由とかって分かってたりする?」
「……………黙秘します」
「そう、さっきニーナちゃんがサラッと神様がと言ってたのを流したのに、その反応って事は神様関連ね。神様とやり取りが出来るってだけで、問答無用で聖人認定なんだけど…、そうすると私も結婚出来なくなりそうだし、しょうがない誤魔化すわよ。みんな良いわね?」
「もっちろん」「えぇ」「ん」
「と言う事で、私達が説明するから、タイチ君は頷くだけでよろしくね」
「は、はい」
「はい、そこもダメ。頷く。いい?」
タイチは、こくこくと頷いて返答をする。
「それと、ニーナちゃんもお口を塞いでてね」
「え~、
「ダメよ、あなた聖女になれる可能性があるって私にバラしたじゃないの」
「むぅ~」
「それと、ヨミちゃんも余計な事は言わない」
「わかった」
「ミリア姉さん、私は?」
「フェリスちゃんは、私の言ってる事が問題ないと思ったら肯定してね」
「はい、分かりました」
そこまで準備を整えた後、ミリアが主導として神父様の肩を叩き声を掛けるのだった。
「神父様、お伝え出来る事を確認しましたのでお話しますね」
「そうですか。話せる範囲で構いませんのでお願いします」
「その前一つお伺いしても構いませんか?」
「えぇ、どう言った事でしょうか?」
「加護の力が神父様の想像の範囲を超えた場合には、どう言った対応を取られますか?」
「私の理解の範囲を超えた場合は、上の者へお伺いを立てるかもしれませんね」
「そうですか。では、この話はしないと言う事でも構いませんよね」
「はい、その方が宜しいかと。それと、話は変わりますが、式は挙げていきますか?」
「式を挙げるのは今度にします。挙げなくてもここにいる4人は嫁ぎますけれど。そうよね、フェリスちゃん」
「えっ?あ、はい?」
「そうですか。では、タイチ君をお願いしますね」
「はい、どうにもならなくなったらご相談に来ますね」
「えぇ、お力になれる様にします」
「それでは、失礼しますね」
「「えっ?」」「なんで?」「んぅ?」
こちらを
「さっ、みんな帰るわよ」
今一状況が飲み込めなかったが、ミリアが率先して外に出た為に、神父様に会釈をして慌てて後を追い掛ける。
「ミリアお姉ちゃん、待ってよ」
「姉さんあれで良かったの?」
急な事あり、ニーナとタイチはいつもとは違う掛け声になっている。
「あぁ、説明をしなかった事?」
「私に肯定する様に言ってたのに、それも無かったし、ミリア姉さん説明して」
「ん」
フェリスも自分に振り分けられた役割りも無かった事で混乱している。
ヨミに関しては、良く理解出来ていないが、返事をしておこうという魂胆が伺える。
「フェリスちゃんには肯定してもらったでしょ。嫁ぎますって」
「もっと別の説明かと思ってたから、あの返答だけでよかったの?」
「そうよ~。そもそも、少し離れて耳を塞いだ位で会話が聞えなくなるとでも思ってる?」
「いや、聞こえると思う」「そう言えばそうよね」
「神父様、途中で肩を震わせてたりしてたのだけど、気づいて無かったのかしら?」
「あ、神父様までは見てないかも」
「だからさっきの私たちの会話は聞いてたって事ね。それで大事になりますけど、改めて話しますかって確認したのよ」
「ミリア姉、それで神父様は聞き返してこなかったって事?」
「そうよ。私の口から改めて説明を受けなかったから、今の話は聞いていませんよって配慮ね。こちらの味方になってくれたのよ。黙ってますって」
言葉にしていないミリア神父様のやり取りに、4人は感心していたがヨミからポロリと言葉が漏れる。
「いつものほほんとしてるミリア姉に、そんな事が出来るのは信じられない」
「あのね、私はこれでも次期村長として色々勉強してたんですけど」
「ん、村長にならなくて良かった、きっと混乱する」
「どういう事かな~?」
ヨミはミリアに捕まる前に逃げ様としたが、横にいたニーナが逃げられない様に手を掴んだ為、あっさりと捕まりミリアはヨミの頬を横に引っ張って罰を与えている。
「うらぎりもの~」
「ヨミチが悪いんじゃん。ミリア姉がうまく収めてくれたんだから誉めとけばいいのに」
その言葉にヨミの頬から片手を放し、ミリアはニーナの頬を抓む。
「いたっ!なんで?!」
「その言い方だと、ヨミちゃんの意見と同じって事になるんだけど~」
「ミリア姉!そんな心の裏側まで読まなくてもいいじゃん」
「領主様とか上の人達と関わっていたから、自然と身に付いたのよ」
「「え~、ミリア姉怖い」」
「ミリア姉さん、普段、村に居る時も心の裏側を判断しようとしてるの?」
「フェリスちゃん、そんな事しないわよ。人を疑うようになっちゃうし、心が疲れるから」
この様に雑談を交わしながら、タイチ達は徐々に村長宅へ移動していたが、ミリアから村長への説明をどうするかとの話題が振られてきた。
「もうすぐ私の家なんだけど、
「ミリア姉さん適当にって、どんな事を言うつもりなのかしら?」
「教会で婚約してきました~って」
「ミリア姉、1人だけズルイ」
「大丈夫よ、ここに居る全員でって言っておくから」
「ミリア姉さん、それってただ単に混乱させるだけじゃないの?私とタイチがフォローに回る形で説明した方が良いんじゃ?」
「お兄ちゃんが口を出すと、村長さんが荒れない?うちの娘と勝手に婚約しおって~って感じで」
「言うと思うわよ?でも、それを止めるつもりもないし、向こうに折れて貰いましょ」
「じゃあ、お兄ちゃん。娘さんを下さいって台詞を言うの?」
「……え~っと、どうしようか。言った方が話が早く終わるならそれでも…」
そのタイチのセリフを聞いた途端、ミリアがタイチの腕に抱き着いて来た。
「ありがとう、旦那さま♪」
突然の事に、タイチは身体を硬直させたまま動かなくなってしまう。
その光景を目にしたフェリスとヨミは、すぐさまタイチとミリアの間に割り込む形でタイチの腕を取る。
「ミリア姉は最後」
「わ、私の家への挨拶が先です!」
ニーナはしれっと反対側の腕を取っており、ニンマリと笑みを作ってから一言呟く。
「私はもう親公認だし♪」
「ニーナちゃんはまだ未成年じゃない」
「む~、痛い所を…」
加護が発現して大人の仲間入りとなったと言っても、やはり状況が変化し続けておりタイチは覚悟に揺らぎが出てしまう。今日だけでも物事が急に進行してしまい、目の前で推し進められた彼女たちの意志の強さに、少ししり込みしてしまっていた。
そんなタイチから一言が投下される。
「あの、みんなの気持ちは嬉しいんだけど、準備とか色々あるから結婚はまだ平気だよね?」
タイチとしては、ここで言うべき言葉を選んだつもりだったが、実は『婚約はするけれども』等の重要な部分が抜けてしまっていた。
この言葉を聞いた女性陣は、婚約もせずにこのままかも知れないと勘違いをした為一瞬で雰囲気が切り替わり、ミリアを筆頭に次々とアピールする言葉が続く。若干、方向性の違う言葉が混じってはいたが、まあ致し方ない感じはする…。
「タイチ君、私と婚約しておけば、ある程度の防波堤になれるわよ」
「タイチ、幼馴染の私と一緒に行動してるなら、その内イヤでも村中で噂になるわよ」
「タイチ兄、
「お兄ちゃん、お嫁さん候補の名前増やしたい?名前、言おうか?」
「……結婚を前提に、これからもよろしくお願い致します。あとニーナは言わない様にして」
ミリアだけはニーナの言った意味が分からない様子だったが、フェリスがそっと教えていた。
タイチはこの時、母さんからの言葉を思い出していた。
『いい?タイチ。あなたは狩られる側よ?』
タイチは、このまま村長宅へ向かって大丈夫だろうかと、一抹の不安を拭えずにいるのだった。
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