第33話 ミルクとお菓子の行方
スタシアへの料理の作り方を無事に終えたタイチは、一路家路に向うことにした。
ただ、スタシアの家で試食をしたニーナとフェリスが少し考え込んで居る様なので、手を引きながらとなっている。
「ねぇ、お兄ちゃん、スタシアさんが作った料理の試食って、お兄ちゃんも手伝ったんだよね?」
「それは、当然だろう?言われただけで出来るなら、教える必要が無くなる訳だし」
「はぁぁ~、それにしても、単純に塩しか使ってないって言われても、あんなの私じゃ作れそうもないのが凄く心に来るのよ…」
「えっと、まずは作ってみてからにした方が良いと思うけど?まだ、1回も作ってないよね」
スタシアのミルクの価値を知らない2人には、ウシやヤギのミルクで作った未来が見えているのだろう。
タイチが、ウシやヤギのミルクで同じ様に作っても、今日の試食と同じ味に到達する事は、現状では難しい。
唯一可能性があると言うならば、加護の力を強めるしか方法がないのだが、その方法にたどり着くには、少なからず時間が掛かるだろう。なぜなら、スタシアのミルクの説明画面を見てしまった為である。
その説明の為に、道の横にある岩場に座り、両脇に2人が座るように促して説明を開始する。
「2人が考え込んで居るのは、自分で作ってもあの味が出せるかわからないからってことで良い?」
「えぇ、そうよ。なんて言うか、美味しさが全然違う気がするのよ」
「そうだよ~。あれを家でも作れって言われても、同じ味に辿り着けるか分からないもん」
「あぁ~、そう言う事ね。あれは、スタシアさんのミルクじゃないと無理だね」
「ん?どう言う事?お兄ちゃん」
「2人はまだ知らなかったと思うけど、スタシアさんのミルクって神様の説明によると、物凄い高級食材らしいよ」
「…こうきゅう?しょくざい??」
「ウシやヤギのミルクとは、一段階も二段階も上の品物って事だね。だから、スタシアさんのミルクが無いと同じ味にならない」
「……もう、もう、もう!!それを早く言いなさいよね!!あれを作らなきゃって、凄い不安だったんだから!!」
タイチは、抗議の声と共に背中を
「色々と不満があるのは分かるけど、スタシアさんのミルクに物凄い価値があるって気づけて良かったと思うしかないんじゃない?」
「それはそうだけど…。毎日の食事があの美味しさだと勝てないって思うじゃないの!」
「そうだよ~。スタシアさん凄い料理上手で絶望しかけたんだから」
「ミルクの価値が無い状態だと、そう言う風に感じるものだよね。そうそう、話は変わるけど、昨日作ったお菓子とスタシアさんのミルクを神様がご希望らしい。出荷箱に入れてねって」
「……ねぇ、タイチ。料理の腕前に絶望して持ち直したところに、次の問題を突きつけるのはどうなのかしら?」
「…お兄ちゃん。今日手に入れたのは、ウシとヤギのミルクなんだけど…」
「大丈夫、こんな事もあろうかと。コップ3杯分貰っておいたから」
「お~、スタシアさんから貰ってたんだ」
「まって、コップ3杯って事は、スタシアさんに許可貰ってないんじゃない?」
「……貰ってないね。どうしようか?」
「えぇ~~、分割してるって事は、お兄ちゃん加護で何かしたんでしょう~~」
「……したね」
再び、同じ様に2人から叩かれる。
「どうして加護を使うことになったのか、はい!説明!!」
「聞く権利があると思います!」
「え~と、スタシアさんが後ろに居るのに気が付かず、加護の説明画面を見てまして…。その時の
「で、どうして呟いていたのよ?」
「神様からの連絡を見ていて、ミルクとお菓子が欲しいって書かれてたから…」
「あ~、間が悪かったんだね~」
流石にタイミングが悪すぎると理解できた2人だったが、加護をどう使ったかまだ聞いていない為、引き続き質問が続く。
「それで、何をしたの?分割してるって事は、バターか何か作ったんでしょう?」
「ミルクのソースを作るのと、魚料理に使う為にバターを作って使ったね」
「それは、直接見られたって事?」
「いや、スタシアさんに後ろを向いて貰ってたから、見られてないよ」
「でも、突然目の前にバターは出来ていたと、そうい事で良い?」
「追加で魚も出してるね…」
「…タ・イ・チ(怒)。加護の力を隠すって方向はどうなってるのかしら?」
「昨日から村の女性陣に、それとなく気づかれてて自身が無くなったのです…。もう、直接見られてないなら使おうか位の気持ちに……」
「もう…、ほんと、スタシアさんにフォロー入れて黙って貰うようお願いしておいて正解だったわ」
「ごめん、フォローしてくれてたのに気づかなくて。ありがとう」
「そうだよ~。しっかりと感謝してよね~。スタシアさんのミルクを搾れる権利を貰ったんだから♪」
「ん?…それは、違くない?何で搾れることになるんだよ」
ここに来て脈絡のないニーナからの報告があった為に、タイチの思考が止まってしまう。ニーナはしっかりと報告しなさそうなので、フェリスが代わりに話の流れを順を追って説明していく。
これにより、ニーナの発言が元でスタシアのミルクが搾乳出来ると分かると、タイチの視界に突然メールのマークが点滅して表示されるのだった。
「うぉ?!何で急にメールが??」
「「突然、どうしたの?」」
「神さまからの連絡が突然来たから驚いただけだよ」
「タイチ…、普通の人は神さまと連絡なんて取れないわよ」
「お兄ちゃん…、神父様に報告すると、神の子認定されるんじゃない?」
「……それは無しの方向でお願いします。取り合えず内容を見てみるから、ちょっと待ってて」
言うが早いか、メニュー画面を開きメールの内容を確認する。
『ミルクが手に入ったら出荷箱にいれるのじゃぞ?お礼に、ニーナちゃんに素敵な職業を送るからな」
タイチは、どう説明した物かと思ったが、書かれている事をそのまま伝える事にする。
「ニーナ、神さまが、スタシアさんのミルクが手に入ったら出荷箱に入れて欲しいって」
「ん~?そんな事で連絡が来るんだね」
「いや、まだ続きがある」
「なに?なに?」
「ちゃんと出荷できた場合、ニーナに素敵な職業をくれるって」
「ニーナ、凄いじゃない!でも、神さまから特別に職業が貰えると、今度はニーナが神の子認定されそうね」
「……私、特別な職業いらない」
「なんでよ?」
「どこかに連れていかれそうな気がするから、ヤダ!」
「あ~、神の子の認定をされたら教会の本部に連れていかれそうだよね。そのまま聖女認定されそうだし」
「聖女になったら教会から出して貰えないでしょ?」
「いや、外に出る機会はあると思う。街を巡る巡礼だったり勇者のお供とか、最悪な方向で考えるなら、勇者の婚約者とかにされるのがお約束かな」
「もっと、イヤッ!!」
「だよな~。でも、まあ、神さまが今のやり取りを見てると思うから、心配しなくても良いと思うぞ?」
「ホント?絶対?信用していいの?」
「もしなったとしても、教会に渡さないから大丈夫だよ。加護の力を使って逃げれるように頑張るから」
「だそうよ。良かったわね、ニーナ。あなた、凄く大事にされてるわね」
「あ、フェリスの場合でも同じ様にするからね。ちゃんと助けるよ」
時間差ではあるものの、2人の心に響く言葉だったようで顔を赤くして俯いてしまう。タイチも恰好を付けて気持ちを伝えたので、同様に真っ赤になっている。
「ワタシの場合は?」
「「「えっ?!」」」
よくよく背後を取られる機会が多い様だ。タイチのすぐ後ろには、ネコ耳の少女が首を傾げた状態で見上げていた。
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ご覧いただきありがとうございます。
少し短いかも知れませんが、投稿しました。
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