第20話 掘削作業は程々に
光る採掘場所では出てこなかった素材がいくつも見える。
アイテム欄には、岩塩に銀鉱石と何故手に入ったか謎が深まるばかりの品物が表示されていたのである。それに、いくつかの宝石の原石も確認できた。
採掘できたアイテムを確認している筈のタイチが難しい顔をしている為、何かしらトラブルがあったのだろうと父であるカインは当たりを付ける。
「タイチ、何かしらの問題が発生したんだろ?いっ、言ってみみるといいぞ…」
その言葉に助けられつつも、言いよどむ姿に不安が先に立ってくる。
「そんなに問題があるなら、言わなくてもいいぞ。うん、トラブルは少ない方がいい」
「言ってる事がまるっきり変わってるんだけど、巻き込むよ!!」
「ちょっとま「岩塩と銀が取れた!!」ってって…」
「うん、母さんの気持ちが良くわかる。どうして手に入らなそうなものが取れるんだ?」
「うん、加護の力だから。それと、宝石の原石も少々」
「おい!」
「彫金とか錬金術の加護の力を上げれば、作れます」
しれっと問題発言をして、巻き込む道を進ませるタイチ。
またなのかと、ため息を付きつつ、カインは覚悟を決める。
「よし、やれるところまでやってしまおう!突き詰めれば、大勝利だ!!」
長い目で見ればスキル上げをしておけば大勝利なのは確かだが、今すぐにはいかないと思うが、スキル上げには賛成のため、タイチは簡単に同意する。
「じゃあ、さっそく上げられるだけスキルを上げちゃおうかな。父さん、その間、代わりに採掘してみない?」
「ま、素材集めもスキル上げの手伝いになるだろうし、少し掘り進めて見るか」
「ありがとう。増えた分も使ってスキル上げを頑張るよ!」
「おう!だけど、程々で止めるからな?崩落したら怖いし」
「それはもちろんだよ。止めたら光っている場所での採掘をお願いします」
そうして、スキル上げと採掘に分かれて行動することになるが、10分もしないうちに、掘り進めた洞窟の方から声が掛かる。
「お~い!タイチ、洞窟の中で光ってる場所が出てきたんだが、これもやるのか?」
「えっ?本当に?中でも採掘場所がみつかったのなら、試してみて~」
「おう、試しておくからな」
外の採掘場所と違う物が手に入るか確認できるのはラッキーと考え、アイテム欄に表示されるのを合成をしながら待ち構えていると、待望のNewの文字つきアイテムが表示された。
「……骨。ってなんの動物の物だろう?人でない事を祈るだけだけど…」
取り出してみると、かなりの大きさを持った物から、小さいものと大小様々な骨がみうけられる。
メニュー画面内の合成のレシピには、骨を使用する物がいくつも表示されている為、思い出せていない用途にも気づける事になっているようだった。
「なんだか、骨の素材で武器が作れる様になってるけど、これは作れって事かな?」
どうしたものかと悩んでいると、洞窟と言える様なまでに掘り進めた穴から、カインが出てくる。
「また、悩む問題でも出てきたのか?やばそうな事なら言わなくていいからな」
武器と言う危ない物ではあるので、微妙な判断にはなるが、背中を押してもらう意味も含めて内容を話してみる事に。
その結果、一度手にしてみたいと言う理由で作成する事になる。
「剣と盾のセットと、槍も持ってみたいんだが、作れるか?」
「出来るから、待ってて。そんなに、興味があるとは思わなかったよ」
「ほら、村に来る騎士様やその従者の人が持ってるのは見たことあるだろう。見る事はあっても、手に持つことは出来なかったからな。ぜひ、振るってみたい!!」
そのような返答を貰うと、自分も興味が出てくるのが人情である。
前世でもゲームでは使用したことがあっても、現実で手にする機会はまずなかった。それを考えると、せっかくのチャンスが巡ってきたのだと、思考を切り替えて製作に取り掛かる。
「それじゃあ、剣と盾と槍ね。剣と盾の素材が銅のインゴットになるから、重いと思うから注意してね。あと、槍は穂先が骨を使った物になりそう」
そう注意を促しながら製作を開始する。どうせなら品質が良い武器が作れると様にと、集中していく。
3つ作成したなかで、1つだけ普通の合成のエフェクトではなく、少し派手な処理が発生した。原木を削った回数が多かった為、スキルが鍛冶の物より高かったようだ。
「槍だけ少し性能が良い物ができたよ。と言っても、性能は高くないけど」
完成品を渡しながら、性能を報告していく。
ただ、父さんから返ってきた言葉は、タイチの予想とは違うものだった。
「いやいやいや、その場で武器を作って渡せる時点で、物凄いことだろう」
「あ~~、そうだよね…。加護の力がどういう風に働くのか知ってたから、気にしてなかった……」
ここでもゲーム感覚で無自覚に合成をしていた事を、父さんから教えられることになる。加護の力をうまく使い切れてないだけで、便利すぎる事を改めて理解するとともに、人の居ない所で使おうと再認識する。
しかし、それはそれ、これはこれと言う事で、ニーナが欲しがっていた釣り竿もついでに作成していく。
「ん?!武器はもう貰ったぞ。今のは何を作ったんだ?」
「あぁ、これは、ニーナが欲しがっていた釣り竿を作ってたんだ」
「ほう!どんな釣り竿が出来たんだ。見せてくれ」
アイテム欄から釣り竿を取り出して、父さんに渡すと追加の注文が来た。
「これは家にある物より良いものだな。俺にも一本作ってくれないか?」
「手間じゃないから、いいよ。ついでに自分用にも作って置こうかな」
追加で釣竿を作っていくと、またしても品質の良い物が出来上がる。
「タイチ、今のは普通のより良く釣れる釣り竿になるのか?」
「ん~?どうなんだろう?今まで作った物よりは折れにくいみたいだけど」
「そうか。そんなに簡単に釣れるようにはならないよな」
そうだよね、よく釣れる釣り竿とかあったら、誰でも使いたいと思うよ。
「折れにくいだけでも、十分良いものだし、今度釣りに行こうよ」
「そうだな!よ~し、楽しみが出来たし、もう少し横の方も掘ってくるか」
「父さん、気を付けてね」
「おう!任しとけ!!」
再度、採掘をしてくるようなので、スキル上げを再開するタイチ。
いい感じでインゴットが増えていくのを確認しながら、増え続ける岩塩をどうするか考える。
硬いままだと使いにくいので合成を選んで調べていくと、レシピの中に表示されるものが出てくる。そのまま合成で使う場合は錬金術で使うことになり、削って食塩にすると調理のレシピで使う模様。
「どうせなら、食塩にして母さんに渡そう!あ、胡椒も細かくできるかな」
とりあえずこぶし大の薄桃色の岩塩を合成してみることにする。すると、そこには壺に入った真っ白な食塩が出来上がる。
「んっ!!加護の力、加護の力」
自分に言い聞かせるようにして、胡椒も同じように合成していく。
10粒ほどの胡椒を合成すると、前世でよく見たガラス瓶に入ったコショウが完成した。
「……ガラス瓶にプラスチックの蓋、そして中身は、細かく挽かれたコショウ。しかも、合成前と後だと量が違う」
このまま渡した場合、母さんの肘打ちが飛んできそうな気がする。
料理に使うと言われたら合成前の胡椒だけを渡して、なにか言われたら見せる事に決める。
徐々に見せては困る物が増えてきているが、加護を育てているのでどうにもならない。
ただ、本人は気づいていないが、簡単に処分できる方法がいくつか存在している。
とあるRPGのアイテム欄にはゴミ箱が、家の横には出荷箱と、やりようはいくらでもあるが、多すぎるメニュー画面が災いして気づけいないのは、ご愛敬である。
それにしても、一番肝心なことを失念しているのだが、彼らは分かっているのだろうか。
家に帰ると、今日の収穫物の御用改めが待ち構えていることを忘れている2人だった。
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