第15話 ほどほどに
いまだに反応のない家族を尻目に、タイチはドンドンと林の中にある木と岩を採取していく。
「素材がいっぱい手に入って楽しいなぁ」
ゲーム時代に素材集めが楽しかったことを思い出しながら、持ち物の中に増えていくアイテムを見つめていると。
「ちょっとタイチ!そこで木を切るのを止めなさい!」
急に母さんからストップがかかったため、家族の方振り返る。タイチは何があったのか疑問符を浮かべていると、両親から注意が飛んでくる。
「あなたこの一帯を丸裸にするつもりなの?」
「木どころか、岩もなくなってるんだが、ここも耕すつもりか?」
その言葉によって、改めて自分の周りを見つめてみると、落ち葉だけの地面が広がっていた。
「あれ?なんでこんなに何もなくなって……」
「あなたが、次から次へと木も岩も消していったんでしょうが!」
素材集めが楽しくなり、目についた木や岩を全て素材に変えていたようだ。
「あ〜〜、素材集めが楽しくて、何も考えてなかった」
「そう。それはよかったわね。で、どれくらい素材は手に入ったわけ?」
母さんが腰に手を当てながら、笑顔で聞いてくる。父さんも苦笑いしながらこちらを見ている。
「え〜と、原30本ぐらいと鉄鉱石と、銅鉱石が5個ずつぐらい」
どうやら手に入れた素材の中に、鉱石が混じっている事に、父さんと母さんは理解できない顔をしている。そして2人で話し込み始めてしまった。
ニーナに関しては、何か試してみたそうな顔をしているのが見える。
「お兄ちゃん、私にもその道具貸して♪」
タイチは言われるままに、装備していた斧を手渡したが、ニーナには同じことができないと伝える事にした。
「ニーナがやっても同じことはできないと思うよ」
その説明をしたところ、ニーナからまだ試してない旨の返答が返ってくる。
「お兄ちゃんのPT?に入っているのに、まだ1回も木を切ってないから試しにやってみたいの」
そう言われればその通りだと思い、ニーナの結果を待つことにした。
同じような結果にはならないと思いつつも、気の済むまで試してもらおうとしていたのだが…。
「お兄ちゃん!!木が消えた!!」
予想外の結果が返ってきた。両親も慌ててニーナの方を見つめている。
「あははは、楽しい〜!!」
ニーナは、次から次へと木と切り株に向かって斧を振っている。両親が危惧した自分の行動がやっとわかった。
「ニーナ、ストップ、ストップ!!」
「ふぇ?どうしたの?」
「どうしたじゃないよ。僕と同じように、この辺の木がなくなって丸裸になってるんだけど」
「あっ……。た、楽しかったから、つい」
母さんがおでこを揉んでいる姿が見える。父さんは、目頭を揉みながら、こちらに近づいてくる。
「ニーナ、斧を貸してもらえるか?」
「うん♪お父さんも試したくなったんだよね」
父さんはニーナから斧を受け取った後、近くの木に向かって斧を振り下ろした。
しかし、タイチやニーナと同じ現象は起きずに、斧が幹に少し食い込んだところで止まる。
「ニーナとは違って、普通の打ち込みになったな。と言う事は、タイチのPT?とやらに入っている事が条件だろう」
「だよね。って切った分はどこに行ったんだろ?」
木が消えた事に気を取られていたが、どこへ行ってしまったのか確認するためにメニュー画面を確認してみることに。
どうやら、自分の持ち物の所へ自動的に振り込まれるようだ。
そこで新たな疑問が生まれてくる。PTに入った状態でどこまで加護の力が働くのかと言う問題が出てきた。
「えっと、父さん。悪いんだけど、少しづつ離れながら木を叩いてくれない?もちろん、PTに加入した状態で」
「あぁ、構わないぞ。一応理由を確認しても?」
「うん、どの距離まで加護が続くのか調べておいた方が良いかと思って。ニーナがPTに入ったまま、村の別の場所で何かしたら困るでしょ」
「そういう理由なら試さない訳にはいかないな。よし、やろうか!」
「あなた、お願いね」
「お父さん、よろしくね」
「おう、任せとけ!」
そう言うと、おおよそ5メートル位の感覚で離れながら確認して行くようだ。
距離にして大体、50メートル程離れた辺りで木が1度の打ち込みで消える事がなくなった模様。この先、距離が延びたりするのか謎仕様だけれど、取りあえずは確認できてよかった。
父さんが、木が消えなくなった事を確認できたので戻ってきた。
「父さん、ありがとう。大体の距離が判って安心したよ」
「いや、大したことは無いさ。それにしても、結構遠くまで行けたな。まあ、試しに切ったから一直線に道が出来てしまっているが」
「ここまでの伐採も含めて、どうするか相談ね」
「ね、お兄ちゃん。このまま放置すると、何か生えてきたりするの?」
タイチは、ニーナの疑問に仕様確認していないなと、ゲームの感覚で判断してしまう。
「一度、何もしない状態で放置してみないと何が生えてくるかわからないかな」
「じゃぁお兄ちゃん、ここはこのまま何もしないっていいの?」
「そうだね。1週間ぐらいはこのまま放置して確認してみるといいかも?」
「わかったわ。それじゃあ1週間後にどう変化するかを確認してから、改めて決めましょう」
母さんの意見に肯定し、午後の畑仕事に戻る異にするのでした。
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