第14話 小さな事からコツコツと
※リットルの単位表記が、現在《L》と過去《ℓ》で表記が異なる模様です。
Lだと分かりにくい部分があるので「ℓ」で記載しています。
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先ずはじょうろを購入するところから進めることにする。
父さんが女性陣の圧を受けている為、少しでも意識を逸らす事にした。
購入を行うと目の前の画面から取り出せるようになったので、手に取ってみることにした。
「お~、水が 6ℓ位入りそう」
意外と大きめのじょうろが手に入り、容量の感想を言ってみたところで、質問が入る。
「なぁタイチ、その 6ℓってのはどういうことだ?」
「あ、そうだよね。まだ、水の重さの単位って無いんだっけ?」
「普段生活をしている中では、一切聞いたことが無いわね」
「うまく説明できないけど、このじょうろに入る水の容量が【ℓ】って単位で作られているんだよ。一番最大まで水を入れると、6ℓって単位になるようにできてるんだ」
じょうろの内側部分を指さして、目盛りが付いている事をみせる。
「ほら、ここに目盛りが付いてるでしょ。これが単位の目印になってるんだよ」
「ほ~、こんな所まで気配りがされている道具なんだな」
「あら、何だかツルツルしているのね。この入れ物」
「まだ、この世界では作れない素材で出来てると思うよ」
「ん~?この世界で作れない素材って事は、出荷箱に入れると高く売れたりするの?」
ニーナが意外に鋭い質問をしてくるが、そんな事が仕様として簡単にできるならゲームが成り立たないことをよく知っている為、その考えを否定する。
「それは出来ないと思うよ。もし出荷箱に入れても、売値は買った時よりも少なくなっているはずだから」
「なぜ⁇この世界にないものでしょ⁇」
「えーと、違う世界のルールで作られているとしか言えないかな。出荷箱の中の世界には、じょうろがありふれたものだって事」
「なるほど~、それならしょうがないよね~」
ニーナだけではなく、横で話を聞いていた母さんも少し残念そうにしている。
なので、出荷箱に作物を売りに出す話をすることに。
「そう落ち込まないで。加護の力で植えた作物が早く実るはずだから、それを出荷箱に入れてお金を稼げばいいんだよ」
「そう言う事ね。早く作物が実るって事は、お金を稼ぐ部分にも繋がってくるわけね」
「それと、他にもタケノコだったり薪だったり、色々出荷できるとは思うけど」
「ふむ、誰かが買うような物なら、商品として売れると考えて良いのか?」
「そうだね。本当に売れるかどうかは出荷箱に入れてみないと分からないけど、試してみる価値はあると思うよ」
お金を少しでも稼ぐ方法を教えておいた方が、父さんへの圧が減ると安易に思ったのがいけなかったと気づく。
笑顔の母さんから父さんへお願い?が伝えられる。
「あなた、山に入って色々取って来て貰えるわよね」
「…あぁ、任せてくれ」
母さんからのプレッシャーもあると思われるのに、それを感じさせない父さんの笑顔は素敵だなと思う。そして、ごめん。いつもの仕事よりも追加の作業が増えたみたいだ。山へ入るなら、斧とかも持っていく必要がある事を考えていると、斧やハンマー等をまだ装備してないことを思い出した。
「父さん、斧やハンマーを加護の画面でまだ身に着けていないのを思い出したんだけど」
「ん?もしかして、身に着けると加護が働くようになるのか?」
「そうなると思う。木が簡単に切れたり、ハンマーを使って岩を壊せたりできたはず」
「じゃあ、身に着けたら手伝ってくれ!なっ!!」
(うんうん、仲間が出来ると嬉しいよね。大丈夫、見捨てないから)
じょうろの
メニュー画面上でアイコンが表示されるようになり、装備の変更を試していると家族から確認の声が届く。
「なぁ、タイチ。さっきから斧やハンマーを出し入れしてるみたいだが、お前の目の前に同じものが置きっぱなしになってるんだが……」
「ほんとよね。出し入れしている道具と、目の前に置かれたままになっている道具があるから気になっているのよね」
「不思議だよね〜。道具が増えちゃってるし」
メニュー画面に装備されている道具と実際に目の前にある道具とでは、何かしら加護の働き方が違うのだろうと判断する。
「加護の力だと思うけど、道具が減ったわけじゃないから、よかったって言うことにしようよ」
「まぁそうだなぁ。道具が減るよりは全然いいか」
「さっきから出し入れしている道具は、普通の道具とどれくらい違うのかしら」
「一旦外で試してみようかな」
家の外に出てメニュー画面に表示されている道具を一通り使ってみることに。
まずは家の近くにある、林の木を目標に定めて、人の腰周りと同じ位の木に向かって斧を振る。
木に斧が1度当たっただけで、幹の部分を含め突然消えてしまう。もちろん、タイチの『もちもの』の中に回収されたのだが、初めて見る。家族にとってはそんな事はわからない。
「斧が1度当たっただけで、生えてた木の部分が消えたね。切り株だけ残ってるんだけど」
タイチが、加護の効果を確認してつぶやいているが、家族からの反応がない。皆口を開けて突然消えた、木の部分を見つめている。
「加護の中に木が収納されただけだから、なくなったわけじゃないよ。すぐに取り出せるから安心してね」
そう言って、家族から離れた場所に収納された木を取り出してみると、すべての枝打ち払われたまっすぐな原木が出てくる。
実際に生えていた時と木の形が違うが、考えないようにすることにした。
ついでに切り株のほうも斧で叩いてみると、こちらも持ち物の中に『薪の束』× 4として収納されている事を確認できる。序でなので、薪も取り出してみることにした。
「切り株の方は、まとまった薪の束になってるし。これは切り株をきれいに処理できて、畑を増やす分にはすごく便利かもしれない」
加護の力を目の当たりにした家族が再起動し始める。
「お兄ちゃ⁈一度斧で叩いただけで木が消えたんだけど⁈」
「それも驚かされたが、枝がなくなった木が何もないところから出てきたんだが……」
「切り株も消えるし、薪の束も出てくるし、これは一体どういうことなのかしら?」
「これが加護の力の一部なんだけど」
「「「一部」」」
まだ加護の力の一部でしかないことに、思考が追いついていないようだ。
家族の思考が混乱しているようなので、このまますぐ近くにある膝丈の岩をハンマーで叩いてみることにする。
やはりと言うか、一度叩いただけで岩が消えてしまう。メニュー画面の持ち物の中には、鉄鉱石が入っているのでした。
「岩を叩いて壊したも素材が手に入るなら、出荷箱でお金を集めることができそう」
タイチの呟きに反応できないほど、目の前で物が消えると言うことに困惑したままの家族でした。
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