第13話 加護の力を調べなさい

 激しく揺さぶれているタイチへ助け舟を出したのは、父であるカインだった。


「2人とも、そのままだとタイチが答えられないと思うが、それでも良いのか?」


 その一言で動きを止める女性陣。それでも、目で答える様にと見つめてくる。


「父さんありがとう。……それと、母さん、ニーナ、この世界とは全然違うから無理だと思うよ」


 その瞬間、絶望した顔へと変化する2人。

タイチは、やはりキレイという言葉は女性にとっては重要な部分だとしっかりと心に刻む。


 しかし、流石に目のハイライトが消えていく姿は心に来る様で、懲りずに口を出してしまう。


「あの、2人ともそんなに落ち込まないで。加護の力で、何か素材とか手に入れられないか頑張ってみるから」


 その瞬間、2人の目に光が戻る。

さらに、母さんとニーナから力の入った掛け声が飛んでくる。


「タイチ、しっかり調べるのよ」

「お兄ちゃん、頑張って!!」


 いままでにない緊張感の中、メニュー画面を探る事になってしまう。

じ〜っと、見つめられる中、メニュー画面を操作するが漠然としたイメージだった為、近しいゲームのメニュー画面が出てこない。


 少し余裕を持って調べたかった為、探るように伝える。


「……あの、そんなに見つめられても、直ぐに見つかったりしないよ…?」


 しばしの沈黙後、母さんからは謝罪の言葉が、ニーナからはあきらめの悪い返事がきた。


「ごめんなさい。どうにも焦ってしまったみたいね」

「ねぇ、ねぇ、お兄ちゃん。お風呂だけでも何とかしてよ〜〜」


 そんなニーナの一言に、家が作れればと思ってしまったのが引き金になった。

目の前に、都市建設型のメニュー画面が表示される。


 さすがに予想していなかった為、息をひゅっと吸い込んでしまう。

その様子を見て、母娘おやこは「何か見つけた」と感じ取るいると、すかさず声を掛けてくる。


「何かを見つけたのね。タイチ、教えて頂戴」

「その顔は何かわかったんでしょ」


 なんて息のあった掛け声。

そんな姿を見て、横で見守っていた父さんは、再び助け舟を出そうとして口を挟んでしまう。


「なぁ母さん、そんなに必死にならなくてもいいじゃないか。ニーナだって少し落ち着こう」


そんな父さんの言葉に反応して、母さんとニーナは父を見つめながら言い返すのであった。


「あなた、何を言っているの?いつもより綺麗になれるのよ」

「そうだよ。お父さん、いつもよりお母さんと私がきれいになったら嬉しいでしょ」


 肯定を含んだ返答されたため、父であるカインは口をつぐんでしまう。


(父さん、せっかく助けようとしてくれたんだから、もう少し頑張ってよ)


 しばらくの沈黙の後、タイチは見つけた加護の内容を口にすることにした。


「この加護の内容を話すのはいいけど、他の人に一切隠し事ができなくなるけどいい?」


 その言葉に父さんはすぐに反応する。


「タイチ、もしかして結構ヤバめな内容なのか?」

「うん、もしかしなくても生活が一気に変わる位には」


 その言葉を受け、さすがに母さんも冷静になったが、ニーナは内容に興味があるようで、瞳を輝かしている。


「他の人に話さなければ内容だけでも言うけどどうする?ニーナは、知りたそうにしてるけど」

「お兄ちゃん、教えてよ♪他の人には話さないから」


タイチは、両親の方を見つめ返答を待つことにする。


「はぁ。知りたくないと言えば、嘘になるし、教えてもらえるか?」


 そんな父さんの返答に母さんもうなずいて同意する。


「しつこいと思うかもしれないけれど、他の人には言わないでね」


 家族全員がうなずくのを確認し、見つけた加護の内容を説明する。


「えーと、前の人生で住んでいたような家が作れる」


 沈黙が流れる。それはそうだろう、今とは全く違うと説明された家が作れるのだから。


「これはあれよね。加護を隠すとかではなく、力を見せつける方向での話になるわけよね」

「そうなるね。一切隠し事が不可能な状態になると思うよ」

「それはさすがに無理だろう。今の畑の状態すら確認できていないのに」

「お兄ちゃん、本当にそんなことができるの?」


 両親の戸惑いとニーナの期待を込めた言葉とでは、帰ってくる返答の落差が激しい。

そんな受け答えの中、タイチはメニュー画面で実際に作れるかどうかを確認してみることにした。


「あ、ごめん。作るのにそこそこお金が必要かもしれない」

「えー、そんな〜。どれくらいお金が必要なの?」


 ニーナの不満の声が聞こえる中、実際にどれくらいかかるかを確認してみることに。


 さすがゲーム仕様、💲100って書いてあるけど、ゲーム内の金額と実際のお金とじゃぁ同じわけがないよね。


「お金を入れてみないと、実際にいくら必要なのか分からないかな。そもそも金額の単位が違うんだ」

「金額の単位が違うっていうのはどういうことだ?」

「この国だと今「円」でやりとりしてるでしょう。でも、加護の力で表示されている金額は全く違うものになるんだ」

「そうするとどういうことが考えられるのかしら?」

「考えられるのは、こちらで1000円を入れても、向こうだと1円の価値しかないかもしれないてことかなぁ」

「それはちょっと大変だなぁ」

「お兄ちゃん、何とか頑張って〜〜」

「そうは言ってもまだお金を入れてないからわからないよ」

「それじゃあ試しにいくらか入れてみましょうか?」

「そうしてくれるとどれくらい違うのかわかると思うよ」


 家の中に入ると、母さんから1000円を渡された。これで調べてということなんだろう。


「じゃあこれから加護のお金とどれくらい違うか試してみるね」

「えぇ、よろしくお願いね」


 タイチは、都市建設型のメニュー画面に向けてお金を近づけてみた。

するとお金は画面の中に入っていく様子が確認できた。さぁ、これで一体金額はいくらになっているんだろう?そんな、期待と不安の入り混じった気持ちで画面を確認する。


「……、ごめん。この加護だと💲1にもならなかった」

「なぁ、それだとものすごい金額がかかるんじゃないのか?」

「そうかも。どうしよう?」


 なるべく母さんとニーナの方を見ずに、父さんとやりとりを進める。2人の沈黙が怖い。

そんな空気の中でも、母さんは冷静に質問してきた。


「タイチ。今渡したお金だけだとじょうろも買えないのかしら」

「あ、ちょっと待って。そっちの加護の方も見てみるから」


 牧場系のメニュー画面を確認すると、普通に1000円が入金されていた。


「こっちだと1000円が普通に入っているから、じょうろが買えるみたい」

「それならば先にじょうろを買ってから、お金をどうにかする算段を立てましょうか。ね、あなた」


 父さんに矛先が向いたみたいだ。顔が引きずっているのがわかる。一緒にお金を稼ぐ方法を考えるから、父さん是非頑張って欲しい。


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