第10話 作付けの様子
気分を切り替える為に作付けが開始されたはずだったが、すでに両親の手が止まっている。そう、タイチの動きがオカシイからである。
畑に種まき&作付けをすると、50㎝×50㎝の範囲で畑の様子が変化していく。
「うん、やっぱりこうなるよね。加護の力はイダイダナー!」
すっとぼけながら作業を進めていくタイチ。
「お兄ちゃん速い!ずるい!!」
うんうん、そうだよね。真面目に作付けしている横で、ポンポンと終わっていく姿は、心に来るよね。
そんなニーナの気持ちも分かるため、メニュー画面を見てみることに。
牧場物は一人用?だから、パーティー(以下 PT)を組めるような物があれば何か変化が起きると良いなと考えを巡らす。
ロールプレイングゲーム(以下 RPG物)のメニュー画面を開いてみるものの、自分一人分しか表示されない。
「ん~、一人分しかないな~。仲間になったとかイベントが起きたりしないものかな?」と呟くと、仲間になったときに流れる音楽が聞こえてくる。
メニュー画面のPTの欄には、両親とニーナの姿が増えているではないか。
「あ、やばっ」
びくりと跳ねる両親が即座に聞いてくる。
「タイチ、何かあったのか?」
「そうよ、問題が起きたなら教えてちょうだい」
家族思いな両親だな~と思いつつ、起きてしまったことを伝える。
「え~と、今まで自分一人分しか無かった所に、家族全員分が表示されちゃった。えへっ」
「ほんとう?!何ができる様になってるの?」
(ニーナは本当に前向きだな~。父さんと母さんを見ると凄い顔してるのに)
「まってね、まだ職業が決まってないから、特に何も変わらないかもしれない。あ、でも畑周りは、自分と同じ事が出来るかも?」
言うが早いか、さっそく種をまくニーナ。
「あはっ♪おもしろ~い。なにこれ~。」と、加護の力が働いている姿が見える。
(自分以外もPTに入ると効果がでるんだ~~)
自然と遠くを見つめて現実逃避しそうになるが、その前に両親の顔が目に入る。
随分とうつろな目をしてる。うん、分かる。いきなり巻き込まれると思考が消えるよね。
(色々と葛藤しているんだろうな。両親も畑仕事に関しては似たような事が出来るようになっているし。他の人にばれたら、馬車馬コース確定だよね。って、そんな事より、PTの解除が出来るか確認しないと。父さんと母さんが可哀そうだ)
PTの解除が可能かメニュー画面をいじってみると、解除に成功する。
「父さん、母さん。大丈夫だよ。こっちで登録されたのを変更できるみたいだから、普通に作付けできるよ」
その言葉を聞き、両親の目に光が戻ってくる。
(うん、急に巻き込むとダメだね。理解がない状態で巻き込むと、葛藤が凄そうだ)
「そ、そうか…。いや~、残念だな~。加護の力を使ってみたかったのにっ」
その言葉を聞いた為、母であるサーナは父カインの脇腹に肘を撃ち込む。
言い終えてない父が「くの字」の形で声を上げる。
「ウゴッ…」
(合掌。良い撃ち込み…)
「気にしないで。加護はいつでも付けられるんでしょう?」
母の笑顔の迫力は、凄みが違うと感じ入る。
(言わなくていいって、声に出さなくても聞こえてくるし)
タイチは、慌てて首を縦に振る。
「今度から何かする前には、先に教えてちょうだいね」
「……………」
「返事は?」
優しい笑顔の母さんに背筋が震える。
「はいっ!」
「ほんとぉ~に、お願いね」
疲れた顔になりながら母さんは釘をさしてくる。
そんな空気の中、またしてもニーナは自分の道を行く。
「わたしは、このままでいいよ~。なんか、楽しいし♪」
その言葉に、母さんの鋭い視線が降り注ぐが、さっと横を向いて視線から逃げている。実に見事である。
そんなやり取りもありつつ、加護の畑の作付けは終わっていくのであった。
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9月23日 文章の1部を編集しました
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