第11話 いつもの畑仕事
作付けを終えた加護の畑をあとにし、いつもの畑仕事を開始する。
「やっぱり水撒きは大変だな~」
先程までの両親の姿を見ているため、普段通りの作業で水撒きをしていたが、やはり加護の力を使ってみたくなってくる。
確かゲームでは「じょうろ」があったと思い出し、メニュー画面を確認してみる。
「ダメだね。家になかった道具だから、購入商品の中に混じってる」
淡い期待をもって確認してみたものの、お金が必要な模様。
仕方がないと諦めつつもお金を稼ぐ方法を思い出そうとすると、ゲームでは野菜とかを売りに出せる箱の存在を思い出す。
「畑の周りには見当たらないか」
周囲を確認してみるものの、そのような箱は見つからない。
ならば、別のお金稼ぎはと思い、他のメニュー画面を表示させる。
「え~と、お金に換えられそうなのは無いかな」
水を撒きつつメニュー画面を流し見ていると、いくつか考えが浮かんでくる。
1つ、RPG物の様にモンスターを倒してみる。
2つ、RPG物の中にあるクリエイトを使ってみる。
3つ、アトリエ系の作品の様に、錬金術を使ってみる。
4つ、薪割り用の斧や鉈を持って木を切ってくる。
戦闘は後回しにしたいと考え、1つ目の考えを捨てる。
では、クリエイトはどうかとメニュー画面をいじってみるが、お金が必要と…。
錬金ならばと思ってみたが、大釜がない……。おふぅ。
ならば4つ目の木を切ってくるのが無難かと思うが、木を切ってきても直にお金に換えられなさそうだと思い至る。
「うん、ゲームもスタート直後はあんまり多くのことが出来なかったし、焦らず行くしかないか」
仕様的な縛りと割り切り、ならば両親に聞いてみるのが早いかと、協力を要請することに。
両親の元へ近づきつつ聞いてみる。
そういえば、元の世界とお金の基準が同じになってたっけ、説明が楽でよかったよ。
「父さん、母さん。家にお金って少しないかな?」
「ん?急にどうした?何か必要なものでもあったのか?」
「それほど多くは無いけれど、少しなら貯えがあるわよ?」
「よければ少し自分に貰えないかな?水撒き用の道具を買ってみたいんだ」
目的を聴いた両親は目的を聞いた後、眉をひそめて考え出してしまう。
「あなた、どうする。加護の道具って何が起こるかわからないじゃない」
「そうだな、どうするか。加護で作った畑でも既にヤバいからな」
警戒されているのがよく分かる構図である。
ただ、タイチが最初に使ったのは、いつも使っている農具だと知らない2人。
説明していない事を思い出し、ついでに「じょうろ」の効果もふわっとした範囲で伝えることにする。
「あ、言ってなかったけど、畑を最初に作ったときは、いつも使ってる農具を使用してるよ。それと、買おうとした道具は、「じょうろ」と言って、種をまいて変化があった範囲くらいに水を撒けるようになる道具だよ。」
「それは、加護の力としては、どれくらいになるんだ」
「ただ水を撒く道具だから、それ以上の力はないと思うよ。それに、加護の力が無ければ普通に撒くよりは力がかからないと思う。でも、加護がないと、今みたいに
そして、更に道具を使った時と、今のままの水撒きの効果を説明していく。
「今の様に、桶から柄杓を使って撒いていくと腕が疲れるけれど、広範囲に撒くこと
が出来る。けれど、均一には撒けない。
逆に、じょうろを使うと自分の周りに水を撒くのは簡単にできるけど、広範囲には
届かない。こんな感じかな」
「ふむ、今と比べてもどっちもどっちと言う感じか」
「そうね、腕が疲れなくなるなら、そちらの方も気にはなるかしら」
「じゃあ、お金を貰える?」
両親は顔を見合わせ、うなずき合った後に結論を伝える。
「物は試しだ。一つ買ってみようか」
「そうね、おかしな事になるなら納屋にでも入れて置けばいいでしょうし」
「ありがとう!」
「喜ぶのはいいが、いくらくらい必要なんだ?」
「えぇと、大体¥700円 ~ ¥1,500円くらい」
「値段に幅があるのね?どうしてかしら」
「水の入る量が違うからだよ。もっと入るのは¥4,000円を超えるし」
「そうなのね。でも、お試しだから小さいのでも良いかしら?」
「うん、それで良いと思う」
「それで、今欲しいの?後でもいいのかしら?」
今がいいけれど必要かと言われれば微妙な範囲である。
加護の力を理解しようとしてくれている現状なら、少しおかしなことが起きても飲み込んでくれるかなと考えたタイチは、早めの購入を進めてみることにした。
「今日から加護の畑を使ってるから、ついでに道具も使ってみたいな」
「そうね、そういう考えもあるなら、休憩の時にお金を家に取りに行きましょうか」
母さんの返答に、大人しく水撒きをしていたニーナから答えが返ってくる。
「は~い!」
「えっ?」
「楽しみだね、お兄ちゃん♪」
そんな様子に、母さんは微笑し、父さんは肩をすくめていた。
どうやら、畑で大人しく待っているつもりはないようだ。
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