第9話 畑仕事だぞーー!!

 家族との話し合いが終わった次の日、新しい畑で作付けを開始することになる。

畑の状態を見ながら、両親からの質問が飛んでくる。


「タイチ、昨日ニーナが話していた神さまからの貰い物はどんなものなんだ?

 時期が違うと育てられないだろう」

「そうね、フェリスちゃんの所から貰ったお芋も植えて大丈夫なのかしら」


 やはり加護が関わってくる為に不安材料は減らしておきたいのが良くわかる。

タイチは、そんな両親の懸念を別の問題で上書きする。


「こっちのジャガイモは、春と夏のどちらかに植えるもので、もう一つのカブは、春と夏の終わりごろが種まきの時期だったと思うよ。ただ、絶対にこの期間じゃなきゃ育たないって事はないかな。加護の畑だし」

「ってことは、フェリスちゃんのお芋も一緒に植えて平気なの?」

「大丈夫だと思うよ。きっと短い期間で収穫できるような気がするし」


 父親のカインは植える作物の状態によって成長度合いが違う事を耳にしたため、念のために確認しておくくらいの軽い気持ちで質問をしてしまう。

両親の予想では、加護の力は作物がよく育つくらではないかと思っている為である。


「なあ、タイチ。短い期間ってどれくらいだ?」

「ん~と。種芋からだから、たぶん3日くらい」


 ………絶句である。

流石のニーナも、この収穫までの速さは異常だと理解できる。


「…、……、…、ねぇ、それって加護の力だとは思うのだけど、それ以上はないわよね?」


(さすが母さん。これ以上のものが出てきても対処が難しいと直に理解しているみたいだ。でも、昨日一緒に考えてくれるって言ってたし、うん。もう、遅いんだけどね…。ふふふ)


 タイチは、にっこりと黒い笑顔を向ける。


「あー、タイチ。これ以上があるのは分かったから、話せる範囲で教えてくれ。さすがにこのままだと拙い。植えた後の状態を調べたら、村長や神父さんを交えて相談だ」

「話したら馬車馬のように働かされる未来しか見えないんだけど……」

「そうならないように話を付ける必要があるでしょう?今の話を聞いた時点で、もう巻き込まれてるのは確実なのだし。あなた一人で何とかできるの?」

「無理だね!そうなったら、もっと全力で力を使う方向へ舵を切るよ!!」


 全力を出していない宣言をされては、両親も覚悟を決めるしかない。

そんな雰囲気の中で、ニーナから質問が入る。


「もうお兄ちゃんの加護の力がオカシイのは分かったけど、畑以外の力ってどんなのがあるの?」

「あ~~、ん~~、あぁ~~~」


 声にならない返事をしているが、はっきりとわかっている事だけを伝えることにする。


「この国のどこで戦争が始まってるか、直ぐにワカルヨ。モンスターの集落の位置もワカルヨ」


 またしても、沈黙が訪れる。


「あなた、本当に拙いわ。このままだと、タイチの取り合いでトラブルが起こるのが目に見えるもの」

「そうだな。畑の様子をまってるだけじゃ遅いかもしれん」

「でも、言わなければ分からないから大丈夫だよ」


 両親の悲壮な顔が見て取れるが、タイチはあっさりと黙ることを進める。


「大丈夫、畑の事だけ相談すれば問題なしだよ。きっと」


 なんとも言えない顔へ変化する両親と対照的に、ニーナはやっと理解が追いついたらしい。


「お兄ちゃん!この国がどんな形をしているのか知ってるの?!教えて!」

(戦争うんぬんよりそっちか~)

「えぇとね、こんな形」


 あっさりと地面に地図を描き上げていく。


「こんな形をしてるんだ♪すごいね、お兄ちゃん」

「そうだね。今、この世界で国の形を知ってるのはこの4人だけだよ」


 しれっと問題発言をしているが、ニーナは特に気になっていない様子だが、両親は青ざめている。さもありなん。知らないって事は不幸せに見えるけど、実は幸福だよね。


「それで、私たちの住んでいるところは、どの辺なの?」

「ちょうどこの辺りかな」と描いた地図の地点を示す。

「へぇ~、この辺りなんだね。地図が分かるなら色々な所へ行ってみたいな~」


 ニーナは、村の外への興味が勝つらしい。

でも、これ以上は両親がパンクしそうになってるから、畑仕事で気分を変えてもらおうかな。


「村の外に興味があるのは分かったけど、今日は畑仕事をしないとね」


 その言葉に両親がすぐに反応する。さすがにこれ以上の事は聞くのが怖いみたいだ。


「うん、そうよね。ニーナのお芋を増やすのが先だったわよね」

「あぁ、作付けを先にしよう。これ以上は頭から煙が出そうだ」


「そっか、そうだよね。よ~し、しっかり植えるぞーー!」


 元気なニーナの声で作付けが始まるのだった。


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