第8話 家族会議

 夕食も終わり一息ついたところで家族会議へと意識が向いたあたりからタイチの様子が変わっていく。


「さて、落ち着いて家族会議をと思ったんだが…、タイチ、顔がこわばっているが大丈夫か?」


 そんな父さんからの優しい声掛けに、ぎこちなくはあるが、返答を返していく。


「大丈夫だよ、畑に植える作物を選ぶだけでしょ」

「えぇ~、お兄ちゃんの加護の事は言わないの~?」


 流石ニーナ、加護に対する興味がある為にすかさず質問で退路を塞いでくる。

素早いツッコミにより、タイチからの説明待ちだった両親も少し興味がわいてきている様子が伺える。


「加護の力がどれくらいになるか、まだ調べ足りないんだよ。畑が作れるだけじゃないのは分かったんだけれど、それ以上だとまずは試してみないと説明できないし」

「ふーん、そういうものなんだ。じゃあ、畑の様子を見ながら教えてね」

「教えられる部分はね」と苦笑い。


 両親ともなんとなく強い加護を貰ったことは理解している様子。

無理に聞き出しても全貌が見えないならばと、話を切り替えようとしてくれる。


「ニーナが知りたいのは分かったから、あんまりタイチに無理を言わないようにね。あなたは直に首を突っ込むから」


 きっと何かしらトラブルを呼ぶであろうと感じた母さんは釘を刺してくれた。


「でも、お兄ちゃん、何もないところから出てきた袋を手にしてたんだよ。しかも、神さまありがとうございますって」


(ちょっとの事では止まらないらしい……)


 流石に、この追加の発言に両親も動きが止まる。


「なあタイチ、これは聞いておいた方がいいのか?

 こんな加護は聞いたことが無いんだが……」


 父さんもニーナが思っているよりもだいぶ拙い状況だと把握した様子。

母さんに至っては、額に手を当ててため息をついている。


「あ~~~、うん。たぶん、状況的にかなり知られちゃまずい状態だと思う。

 えらい人たちに知れ渡ったら、逃がしてもらえないかも?

 畑が簡単に作れる事だけでも、少し怪しいけど」

「ニーナ…、興味があるのは分かるけれど、このままだとタイチが居なくなるわよ」

「そうだぞ。神さまから物を貰えるなんて事が知れ渡ったたら、一緒にはいられなくなる可能性が高い。」


 家族だけだからと安易に加護の内容を口にしたニーナは顔を下に向けて呟く。


「……お兄ちゃんが楽しそうにしてたから、一緒に色々したかったんだもん」


 ニーナを除く3人は顔を見合わせてしまう。


「お前の一緒に色々したい気持ちは分かるが、すぐに口にするようならそれも考え直さないといけなくなるぞ」

「そうよ、あなたの行動一つで一緒にって言うことすら難しくなるかも知れないのだから」

「ニーナ、一緒に色々するのは構わないから、加護の事は秘密にしてもらえるかな?」


「……うん」


 両親からの注意と僕からのお願いで、このままでは色々と話が大きくなっていく事を少し理解してくれた様子。


 悲しそうとも寂しそうとも取れるニーナの姿に、タイチはつい言ってしまう。


「神さまから貰った物を植えてみようか」


 顔を伏せていた状態から一転、目を輝かせながらタイチを見つめるニーナ。


「本当に?!いま、色々注意されたばっかりなのに…、いいの?」

やはり恐る恐る確認を取ってくる。


「だって、色々一緒にやりたいんだろ?」

「…うん、そうなんだけど」

「なら、加護を調べる意味でもやってみないと。それに、フェリスから貰った芋も植えてみたいって言ってたし、試すなら一気にしないと」


 ニーナの落ち込む姿を見るよりはと、感情を優先する。

そんなやり取りに両親は、知らない所で問題が出るよりは一緒に行うことを目配せで決める。


「タイチ、ニーナ。二人だけじゃなく、私達も一緒に作業をするわよ」

「そうだぞ。何か問題が出てきた時に、大人を頼るの事も忘れてもらっちゃ困るしな」

「それに、どんな加護なのかも私たちも気にはなっているから、お願いね♪」


 一緒に考えてくれる両親にも感謝しつつ、まだ言えない部分に少し罪悪感を覚える。何はともかく、植える作物と加護の話を一気に話し終えることが出来た事に安堵する。

間違いなく、問題が出てくる事がわかっているタイチは、巻き込まれに来てくれる両親に感謝する。


「ありがとう。どれくらいの加護の力かが畑に影響するか不安だったから、一緒に手伝ってくれるのは、本当にうれしいよ。一緒に苦労しようね♪」

 

 感謝の中に、不安を覚える言葉が混じっている事に、若干の嫌な気配を感じつつも両親とニーナは笑顔を向けるのでした。


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