第2話 知識とは
儀式の終わった状態で動かなくなるタイチに神父様は声を掛けます。
「タイチ、大丈夫ですか?何か特別な加護でも貰ったのですか?」
周りの同年代の子たちも不思議そうにみつめている。
「エェ、チャント『カゴ』ヲモラエマシタ……」とぎこちなく答えるタイチ。
(こんなに目の前にいくつもメニュー画面が出てきたら、もっと声がかかるのかと思ったけど・・・)
どうやら、周りの人には『メニュー画面』が見えていない様子、
安堵の息をこぼしながら、目の前の光景を再び確認します。
加護を貰ったタイチの目の前には、見たことのあるゲームのメニュー画面がいくつも並んでいます。
(ぱっと見るだけで分かるのは、有名どころのRPGのメニュー画面に、錬金術に、
戦国ものに、牧場ものが見える……。
見えちゃいけないホラーものがあるけど、そんなものは無い!!無いのだ!!
魔物がいる異世界だから、居るとは思ってたけど、本当にお断りします!!
村の周りには、丸っこいスライムや動物しかいないから油断してたよ!
神さまは確かに、言ってたよ!言われてたよ!!
『ゲームの知識を奮ってみないかね』
でも、知識
心の中で絶賛混乱中のタイチへ、後ろから声がかかります。
「タイチ、儀式が終わったらこっちにおいでよ。神父様が戸惑ってるよ?」
気遣って声を掛けてくるのは、近所に住む幼馴染のフェリスと言う少女。
「アァ、ソウダネ…。神父様、ありがとうございます。もう、大丈夫です」
とりあえず、落ち着けるところで『メニュー画面』を調べないとと思いつつ、
後ろに下がって儀式の終了を待つことに。
(どうやって消すの?この画面……。たぶん、キャンセルとか思い描けば閉じてくれると思うんだけど。あ、消えた。いつまでも出てると周りがちゃんと見えなくて困るよね。)
メニュー画面で何ができるのか考えているため、心ここにあらずの状態のタイチを心配しながらも、神父様は儀式を受けた者たちへ声を掛けます。
「今日、この日をもって貴方達は成人となりました。ですが、貰った加護を含めて、まだ入り口に立ったばかりの若輩者だということを忘れてはなりません。
また、先達に声を掛けて教えを乞うことも覚えておいてください。~~
~~ 中略 ~~
~~さあ、神さまへの感謝と共に、成人の議を終了します」
儀式の終了とともに、タイチはメニュー画面を確認するためにわき目も降らずに帰ろうとしますが、教会を少し出たところでフェリスに捕まります。
「ねぇタイチ、そんなに急いで戻らないといけないの?もしかして、人に言えないような加護を貰ったの?」と矢継ぎ早に聞いてきます。
「そ、そんなことはないよ。村の役に立つ加護を貰ったんだよ。そうだ、フェリスは、なんの加護を貰ったの?」
「あやしい・・・。あからさまに話題を変えたわね。まぁ、いいけど、そのうち教えてよ?私の貰った加護は、『豊穣の力』って言うものだったわよ。農作物とかがよく育つって、神さまの声も聞こえたんだから♪」
(お~、農家には嬉しい加護を貰ってるっぽい。)
「素敵な加護を貰ったね。これなら、引く手数多間違いなしだ」
「ふふふ、手が空いたら手伝ってあげても良いわよ。ただし、あなたの所の収穫物を報酬としてくれるならって事で」
「無理のない範囲でお願いします」
笑い合いながら家路へと進んでいくと、各々の家へ続く分かれ道にたどり着きます。
「タイチ、今日は聞かないけど、絶対に加護を教えてよね?私のは、もう知ってるんだし、嫌とは言わせないわよ」
「分かってる、伝えられるようになった教えるから、待っててね。きっと、みんなの助けになるはずだから(たぶん)」
トラブルも起きそうだなと感じながらも、簡単に約束をしてしまうタイチ。
そう、彼はメニュー画面が出たのだから、「その内、レベルが上がって魔法を駆使して村の発展を!」と魔法が使える事への妄想を膨らましていたのです。
そんな安易な約束を後悔し始めるまで、あと少し。
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