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@watamokuren

第1話 神さまの言うとおり(改)

 少年はふと生前のことを思い出しながら空を見上げます。


『どうだね、異世界でそのゲームの知識を奮ってみないかね』


 そんな神さまの言葉を思い返していた。


 えぇ、えぇ、確かに二つ返事で答えたよ!

【そんな夢のような環境があるならぜひ!】


 そんなやり取りを思い返しながら、少年は今日も心の中で叫びます。


(神さま!農家の子せがれに、ゲームの知識だけで這い上がるには色々足りないと思いませんかーー!!)


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 そう少年のいる環境は、どこかの星によく似た島国でのおはなし。


 地形の形はどこか似ていても、その世界のありようはまるでゲームの中の様なごちゃまぜの環境。魔法あり、スキルあり、異種族あり、魔物ありと盛りだくさん。

それに、どう見ても富士山らしき山が見えているのに、住んでいる住人は多種多様。


 そんな不思議な環境に生まれ、農家の両親の間に長男として、また両親と髪の色が違う1と共に日々の生活を向上させようとする少年は、これから目まぐるしく変わる人生を知ることもなく、平穏にすごしていました。



 今日も今日とて畑仕事に精をだしていると、父親のカインから声がかかります。


「タイチ、そろそろ休憩をしないか。お前のおかげで今年も少し余裕が出そうだからな」


「分かったよ、少し休憩するね」


 父さんに返事をし、先に畑の荷物置き場に向かうと、休憩している母さんと妹が声をかけてきます。


「お兄ちゃん、今日も一所懸命にがんばるね?畑仕事がそんなに好きなの?」

「今日も畑仕事を頑張ってくれてありがとうね」


 疑問符を浮かべた妹のニーナの質問と、母親のサーナからは優しい声がかかります。


(少しでも食べられるものを増やして、生活を向上させないと安心できないからね)


 安心して暮らすことを考えているタイチは、家族が困らないようにと考えたあと返事をします。


「僕の言った事を後押しして畑を任せてくれてるから、その分は一所懸命にやらないと」


 前世の僅かばかりの農業知識を信じて畑を手伝ってくれた家族の為にと改めて思います。


(でも、この世界にきて14年も経ったために、いくつも知識を忘れてるんだよ……。)


 時間とは残酷なもの。心の中では、四つん這いにポーズで打ちひしがれるタイチ。

そんな少年の心の内を知らずに、話題は成人の日の事へと移っていきます。


「タイチ、1週間後には成人の日があるだろう?何か特別な力が与えられたりする

事があるらしいが、くれぐれも力に振り回されないようにな」


 父さんが後ろから声を掛けてくる。

振り向きながらタイチは14年間を思い出しつつ答える。


「大丈夫、特別な力がもらえても、それ程多くの助けにならないと思うから」


(ゲームの知識だけじゃ、なんの加護になるかサッパリだしね)


 生前のゲームを色々と思い出しつつ答える。


「ふふ、そんな事を言って、あとで困っても知りませんからね」


「そうそう、特別な力を貰ってないのに、昔よりも収穫量を増やして、村のみんなに質問攻めにされたのを忘れたの?」


母と妹から鋭いツッコミのお言葉が。


「そんなに収穫量を増やした積もりは無いんだけどね」と苦笑いで答える。


 周りには伝えていないけれど、もっと村を巻き込んで飢えることがない様にするのが今の目標!

(神さま、前世の知識を生かす力を少しでもお願いします!!)




 そんな日常の一幕から成人の日へと日時が過ぎていきます。

何故か村にある教会(神社もあるのに?)で、成人の儀式が行われる模様です。


 同世代の中から順番が最後になったタイチは、神父様から成人儀式に使う水晶玉へと誘われます。


「さあタイチよ。この水晶玉に感謝の祈りを捧げなさい」


(やっと前世でのお誘いの通り、ゲームの知識を発揮する力が貰えるはず!)


 そう心の中で興奮に浸りながら、神さまの誘い文句を思い出します。



『どうだね、異世界でそのゲームの知識を奮ってみないかね』


水晶玉に手を置いて思うことは一つ

【そんな夢のような環境があるならぜひ!】


目の前が白く輝き、メッセージが表示されます。


『メニュー画面が追加されました』


 心を躍らせながら、口から声がこぼれます。

「メニュー画面!!」


 そして目の前に広がるメニュー画面は……

(神さま......メニュー画面は一つでお願いします)


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ご覧いただきありがとうございます。


9/16 読みやすくなるよう微調整しました。

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