第14話 次なる任務

家族は生き返り、魔王軍の拡大も順調であった。

そんな折、ベルからの招集があった。


「何だいベル、次の任務か?」


「ああ、そちにはスパイになってもらいたいと思うとる。」


「スパイ? 人間界に潜入か?」


「察しが良いのお。その通りじゃ。

 そちにはアストルティア学園に潜入し、とある文書を盗み出してきてほしいのじゃ。」


「どんな文書なんだ?」


「勇者が使う封印術の文書じゃ。

 これのせいでわしのチカラが使えんくなっとるのじゃ。

 それを解くカギがその文書なのじゃ。」


なるほど。確かに魔物が学園に入っても、袋叩きに遭うだけだ。

人間である俺が潜入すれば間違いないだろう。


「よし、わかった。

 しかし、俺、そこ落第してるんだよな・・・。」


「そちのチカラがあれば楽勝であろう?」


そうか、あの頃の俺はこのチカラに気付いていなかった。

スライム狩りに出掛けて初めて、魔物と交尾できるチカラに気付いたのだ。

しかし、このチカラをそのままひけらかしてはダメだ。

魔物とのつながりを疑われてもおかしくない。

体をスライム状に変形できるチカラと偽って潜入しよう。


「たしかにそうだな。

 体をスライム状に変形できるチカラと偽って潜入することにするよ。」


「よし決まりじゃ!

 学園内には結界があっての、使い魔をやれんのじゃ。

 そち一人じゃが頼むぞ!」


「ああ、わかったよ。」


俺はそうして、新たな任務、アストルティア学園潜入作戦へと向かうこととなった。


アストルティア学園の入試は学科と実技に分かれる。

学科は問題ない。

1年間の間、学科の試験結果は継続する。

つまり、学科で好成績を残した俺は、今年度はパスできるのだ。

問題は実技だ。実技試験はシンプルだがかなりハードだ。

ランダムで2人1組になり戦う、それだけだ。

つまり、片方が魔術を全く使えなければほぼ負けが確定する。

当時の俺は初歩の魔術しか使えず、足手まといもいいところだった。

運要素が強いが、試験官は勝ち負けの結果ばかり見ているわけでもない。

負けたチームでも相応の活躍を見せれば合格もある。

なかなか奥の深い試験となっているのだ。

俺のチカラを使えば、相方が相当なヘタレでもなければ問題ないだろう。


ともかく、エントリーするためにまずは町に出よう。

俺はシャドウのチカラで町へ急いだ。


---


町へ着くと、何やらエントリー会場が騒がしい。


「勇者だってよー!」


勇者? 勇者がいるのか?


俺は人混みをかき分けて前へ進む。


すると、今まさにエントリーしている人が勇者だという。


どれどれ。


金髪碧眼の美少女ではないか。

少しむすっとした感じだが高貴さも感じる印象だ。


なるほど。今回の試験は勇者もエントリーするらしい。

勇者といっても、学園に入学するということは、実力はまだまだこれからなのだろうか。


などと考えつつ、俺もエントリーすることとした。


「試験番号2024番、ジェラルド・ジンキエンス様、登録完了しました。」


まあ本名がバレたところでどうということはないか。

よし、エントリーも完了したことだ。

宿をとろう。

ベルから軍資金をそこそこもらっているから少しお高めの宿にしちゃおう。


俺は町を眺め、いい感じの宿を見つけたのでそこに泊まることとした。

(この部屋の隣に勇者が泊っていることは知る由もない。)


「シャドウ、いるかい?」


「はい、ラル様♡

 お疲れでしょう?

 さあ、わたしで癒して?」


「あー/// あーーー///」


---


「まったく、隣人ときたら・・・。

 この勇者、クリスタル・クリムゾンハートが宿泊していると知っての狼藉か?

 まったく眠れぬではないか!!!」


隣人のせいでまったく熟睡できない勇者であった。



<<作者あとがき>>


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