第7話 魔人誕生
俺は、アブソルティア帝国に対し反旗をひるがえす。
テロリストだ。
俺の考えをスライムたちに伝える必要がある。
俺はスライムたちを招集した。
「集まってくれてありがとう。
鍛錬に励んでくれたおかげで、みんな予想以上に強くなってくれた。
俺たちの強さは、アブソルティア帝国の脅威となるほどだろう。
そこでだ。
悪い人間を退治することを考えている。
そいつらは俺の母の仇だ。
ぜひ、みんなに協力してほしい。」
昔の俺は、ただ人類を滅ぼしたいと考えていた。
しかし、今は少し違う。
──── 弱者を救い、悪を滅ぼす。
これが今の俺の考えだ。
弱者は、貴族たちにいいように使われている庶民、つまり昔の俺のような人々だ。
この人たちを見捨てることはできない。
悪は、弱者を見捨て、搾取する貴族どもだ。
スライチロウが発言する。
「父上!
もちろん、協力させてください。
私たちスライムは歴史上、人間に蹂躙されてきました。
今こそ、立ち上がる時です!」
スライムといえば、最弱の魔物だ。
歴史上、人間に一方的に討伐されてきた。
恨みもあるだろう。
スライチロウの号令に対し、全員、勇ましい雄たけびを上げている。
「実は海岸近くに、多くの貴族が使う別荘地がある。
今はちょうど夏だ、そこに貴族が集まっている。
そこを襲撃し、貴族たちを一網打尽にしたいと思う。
何か良い作戦はあるか?」
「はい。
最近思いついた技なのですが、スライム同士でくっつくと巨大化できます。
これで応戦するのはどうでしょう?」
スラジロウが自慢気に発言した。
なるほど、いい案だ。
すべてのスライムで合体すれば相当な大きさになるだろう。
「そんなことができるとはな、驚きだ。
スライム全員で合体すれば、町を覆いつくして敵を壊滅できるだろう。
人間をすべて合体スライムの中に取り込む。
子供も残らずだ。仇討の種も一網打尽にする必要があろう。
一応、合体スライムの練習をしてみようか。」
俺は子供たちを数人かき集め、合体した。
なんと、合体すると指揮権が俺に渡るらしい。
集合体を自在に操ることができる。
「俺の意のままに動かせるようだな。」
俺はひとしきり、スライム集合体で武器をふるったり少し器用な動きをしてみた。
「よし、解散してくれ。」
合体スライムが個々に分かれた。
「さすが父上です。
全員の意思を一つにまとめ上げてしまうとは・・・。
父上無しで合体すると、それぞれがバラバラに動くので、操作が難しかったんです。」
そうなのか。
合体スライムのすべてを操る能力は俺にしかないらしい。
責任重大ではあるが、戦況の全体を把握できるようになるのは大きな利点だ。
「よし、ではこれで行こう。
20日後、5000匹のスライム戦士を別荘地の海岸近くの群れに集めてくれ。
全員で合体して攻め込む。
では、解散!」
「承知しました、父上!」
スライチロウがそう言うと、子供たちはすぐに身支度を始めた。
周囲の群れに招集をかけに行くのだ。
俺は貴族の別荘地の様子や地形を下調べに行くことにした。
「プリム、俺はしばらくここを離れる。
その間は、ここを頼むぞ。」
「はい!
ラル様、ご武運を祈っているのです。」
プリムの手をとり、テントに入る。
俺はプリムにキスし、ゼリーと尻をもみながらプリムを押し倒す。
しばらくプリムとは会えない。
思う存分堪能させてもらおう・・・。
---
襲撃前夜。
さて、俺は貴族の別荘地の地形や敵戦力の調査を一通り終えた。
結果としては、なんとも拍子抜けだ。
護衛として用心棒を付けている貴族はごくわずか。
しかも、肝心の用心棒は並程度の実力の者が雇われているだけだ。
この程度であれば、10分もあれば別荘地は陥落するだろう。
さすが、魔王が勇者に倒されて以来魔物がスライムしかいなくなっただけあり、人間たちの戦力も地に落ちているらしい。
合体スライムのテストも順調に終わった。
スライムは流体だ。
無数の触手を伸ばすことができるため、各触手にヤリや盾を持たせて戦うことも可能だ。
貴族が部屋の中へ逃げ込んでも、ドアの隙間から侵入できるだろう。
準備は完璧だ。
俺は、5000のスライムの前に立ち、軍を鼓舞する。
「戦士たち!
集まってくれてありがとう。
俺はお前たちスライム戦士の始祖である!
スライムの歴史はあまりに無念だ。
何の罪もない我々の先祖たちは、ただ一方的に人間たちの手で葬られてきた。
しかし、我々は今、その歴史に終止符を打つ!
スライムに栄光あれ!
合体だあああー!!!!」
5000のスライムが一気に合体する。
その様子は圧巻だ。
意思を持った災害である。
今ここに、魔人スライム「ジェラルド」が誕生したのだ。
<<作者あとがき>>
ご覧いただきありがとうございました!
評価をポチっとしていただけると大変ありがたいですm( _ _ )m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます