第3話 スライム息子

俺は父親になる・・・らしい。


子供はスライムなのか、人間なのか、それともハーフなのか。


そもそも、本当に生まれるのか。


なんにせよ、俺は責任を取らねばならんだろう。


妊娠中の嫁のサポートのため、家からここまで毎日通うか、それともここに住み込みで暮らすか。


また、子育ての方針はどうするのか。


今後についてプリムと色々と相談する必要がある。


「なあプリム。

 俺たちの今後について相談なんだが。

 妊娠と子育てででプリムも大変になるだろう。

 だから、プリムと一緒に暮らしてサポートしようと思う。」


「ラル様ったら、そんなにわたしを愛してくれているのですね!

 でも、わたしは大丈夫です!

 今日にも出産しますし、子育てもわたしだけで全く問題ないのです!」


へ?


予想外の返答に俺は拍子抜けする。


プリムとわが子に添い遂げる必要があるのではないかと思っていたのに、どうもそんな必要はないらしい。

しかも、即日出産だと?

スライムと人間の常識は異なるようだ。


「随分と頼もしいな、出産経験があるのか?」


「いえ、わたしの純潔はラル様に捧げたのです!

 ただ、この子は手をかけずとも丈夫に育つのだと、本能でわかるのです!」


プリムは続けざまに言う。


「ラル様さえよければ、わたしは100は生むつもりなのです。

 それと、わたし以外のスライムとも交尾してあげてください。

 わたしがラル様を独り占めすると、他のスライムから反感を買ってしまうのです!」


スライム界では一夫多妻制を導入しているらしい。

ハーレムも築けるのか、それは素晴らしい。


「わかったよ。

 ちなみに、俺みたいなオスのスライムはいるのか?」


「いえ、魔物には性別の概念も交尾の概念もありません。

 ただ、ラル様のあまりに男らしいフェロモンに、みな発情しているのです!」


なるほど。


寝取られ展開はないようだ。

安心ではある。

出会ったばかりとは言え、嫁だ。できることなら寝取られ展開は避けたかった。


魔物はどこからともなく出現すると聞いたことがある。

だが、魔物が出産によって出現するなど聞いたこともなかった。

これは、俺のユニークスキルによるものなのだろう。


そうこうしていると、プリムが俺に声をかける。


「ラル様!

 もうすぐわたし達の子が生まれます!」


すると、プリムの体が光を発し始めた瞬間、光が一帯に広がる。

俺は思わず目を閉じる。


・・・


あたりから光がなくなることを感じたので目を開ける。


すると、プリムがスライムの赤ん坊を抱きかかえている。


見た目は普通の小さいスライムだ。


俺と魔物の子は、人間でも半魔でもなく、魔物になるらしい。


「ラル様、わたし達の子です。

 なんとたくましい子でしょう!

 さすが、あなたの子なのです!」


「俺も初めての子だよ、ありがとう!」


まさか自分の子供がスライムとは、夢にも思わない展開だ。


だが、新たな生命の誕生に感動した。


「ラル様もありがとうなのです♡」


すると、プリムは子供にお乳を与え始めた。


見た目上はお乳なのだが、実際は魔力供給なのだろう。


魔物は自然界や魔王から魔力供給を受けると聞くが、赤子のうちは親からの直接供給が必要なのかもしれない。


そういえば、お乳で思い出したが、プリムはずっと全裸だ。


それを意識したとたん、俺のナニは徐々にそそり立ってしまった。

子供の前だからと我慢しても抑えがきかない。


すると、プリムはにやりと笑みを浮かべ、俺に視線を向けた。


「ラル様!

 発情のにおいがするのです!」


ぎくっ・・・!


そうか。

俺のフェロモンを感じ取ることができるなら、発情のにおいを感じ取ることができてもおかしくはない。

プリムに隠しごとをするのは難しいのかもしれない。


「いや、たしかにハッスルしたいところだが、子供の目の前だ。

 いまは我慢しておくよ。」


「子供がいても問題ないのです!

 さあ、ハッスルハッスル! です!」


言われるがまま、俺はプリムに襲われた・・・。


---


今日だけで2回戦。

もう俺の装弾数はゼロだ。


プリムは満足気に俺の肩に頭を寄せ、目を閉じている。

これはこれで幸せだ、いっそ、スライムとして一生過ごしてやろうか。


そんなことを考えつつ、ふと子供を見ると、かなり成長しているではないか!


子供が俺の視線に気づくと、即座に俺にひざまずいてくる。


「これは父上!

 先ほどは、母上とお楽しみだったようで。」


て、子供もしゃべるんかーい!


赤子のときと違い、人間っぽい見た目に成長している。

勇ましい感じの細マッチョな好青年だ。

こいつもプリム同様全裸だが、アソコがない。


「お、おう。

 随分と成長が早いのだな。」


「はい、父上の優秀な遺伝子のたまものでございます。」


遺伝子を褒められると素直にうれしいな。

しかし、親子というのに随分と他人行儀だな。


「なぜそんなに他人行儀なのだ?

 親子なんだから、もっと砕けた感じで良いぞ?」


「とんでもございません。

 私にとって父上はあまりに偉大であります。

 尊敬の念として、お受け取りいただきたく。」


たしかに、俺は町の外に出ただけでそこらじゅうのスライムを発情させてしまう。

それほどに、魔物にとって俺のフェロモンや遺伝子は一級品なのだろう。


「そこまで言うのなら、まあいいだろう。」


子育ての方針をプリムと相談するつもりだったのだが、どうもこいつは子育てが不要なほど自立していそうだ。

さて、こいつにとって、どんな人生が幸せなのだろうか。

俺はスライムの常識を知らない。


「一般的にスライムは何をして過ごすんだ?

 お前のやりたいことは何かあるのか?」


「一般的なスライムは特に何もしないのです。

 ただ、この子は特別なスライムです。

 なので、好きにさせるのが良いのです!」


プリムがそう言うのならそうなのだろう。


「私のやりたいことですか・・・。」


子供はしばらく考え、絞り出すように口を開く。


「父上や母上のおそばにお仕えする、もしくは・・・。」


うーむ、子供も何をすれば良いかよくわかっていない様子だ。

まあ、生まれたばかりでは無理もないだろう。

18年生きてきた俺でさえ、将来の夢など特にないのだからな。


「まあ、特に決まっていないのであれば、プリムを守るようそばにいてやってくれ。

 それに、そのうち兄弟もできるだろう。

 お前がリーダーとなって、兄弟を導いてやってくれ。

 他に何かやってほしいことがあれば、俺から何かお願いするかもしれん。

 そのときはよろしく頼む。」


「承知しました、父上!」


子供は晴れやかな表情で返事をした。

自分のすべきことが明確になり、すっきりしたのだろう。


「そうだ、兄弟もできることだし、名前を決めよう。

 今日からお前は、スライチロウだ!」


「ありがとうございます!

 このスライチロウ、誠心誠意、父上と母上にお仕えします!」


こうして、俺は父親になったのだ。



<<作者あとがき>>


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