第4話 幸せな家庭
俺の能力はだいたいわかった。
変身のオンオフについては、けつの穴に力を入れることで可能ということもわかった。
そして何より、スライムに変身する能力は、スキル無しだった俺にとっては朗報だ。
スライム状になると、隙間を通ったり、衝撃を吸収できたりする。
それなりに使い道がありそうだ。
着るいる服はスライム状にならないのが少々不便だが・・・。
スライム状態で動き回る練習や、衝撃をどの程度吸収できるのか実験を繰り返したりと、数日を過ごした。
当然、プリムとは毎日ハッスルした。
スライチロウの護衛付きのハッスルである。
スライチロウに情事を見られるのはさすがに恥ずかしい。
だから、町で買ったテントを木のそばに設置し、その中でいちゃいちゃしている。
そして、プリムは百発百中で妊娠、出産してくれた。
スライチロウに続き、スラジロウ、スラサブロウ・・・。
あっという間に大家族である。
その間の食べ物は息子たちが川や森から調達してくれた。
普通のスライムは何も食べないらしい。
だが、息子たちは特別なスライムだ。
生き物や植物から魔力を調達することで、より強くなるらしい。
「父上!
今日は大漁です!」
「スライチロウったら、泥だらけなのです!」
息子たちが獲った魚をプリムが慣れない手つきで調理してくれる。
そして、一家で食卓を囲み、今日の出来事などを話しながら食事をする。
なんて幸せなのだろう。
この生活がずっと続いてもよいのではないか。
過去のことなど忘れ、スライムとして生きていくというのも、なかなか良いかもしれない。
俺はスライム家族とのこの生活が好きだ。
町での俺は、母親が残したボロい平屋とわずかな貯金での一人暮らし。
アブソルティア魔術大学を落第した落ちこぼれ。
お先真っ暗である。
人間での生活に未練などない・・・。
本気でそう思うようになっていた。
---
スライムたちと過ごして3か月が経った。
この3か月でいろいろあった。
まず、プリムとは相変わらず子作りに励んでいるが、別のスライム娘に手を出すこともしばしばあった。
それに、俺の子供は100パーセント男だ。
(スライムには性別の概念がないらしいから正確には違うのだが。)
俺の子供は、俺や嫁を守るための兵隊のような立ち位置なのかもしれない。
そして何より、俺の子供も生殖機能があったのは驚きであった。
---
2か月前の出来事である。
俺が他の嫁候補を探しに森を散策しているとき、情欲に身をゆだねた男女の声が聞こえてきたのだ。
こんな野外プレイをするとは、どんな変態カップルなんだろうな。と、
俺はおそるおそる草陰からその情事を覗き込んだ。
他人がハッスルしているのは普通見られないのだ。興味を持ったっていいじゃないか。
すると、そいつは俺の息子、スライチロウだった!
つい見とれた。
俺はあろうことか、息子とその彼女の情事に欲情してしまった。
そして、俺の発情フェロモンはめちゃくちゃに強い。
「はぁはぁ・・・。
ス、スライチロウ様?
もう一人、殿方のかぐわしい香りがしますわ。」
「このにおいは・・・。
ち、父上!?」
当然、2人にバレた。
俺は事情を説明し、スライチロウには先に帰ってもらった。
そのあと、スライチロウの彼女と1発したことは、死んでも言えないだろう・・・。
その夜、俺はスライチロウと話した。
「スライチロウよ。
さきほどの件だが・・・」
「申し訳ございません、父上!
私も早く父上のように立派になりたいと思い、
父上と母上の行為を真似てしまいました。
勝手なことをしてしまい、面目ありません!」
俺が声をかけるなり、スライチロウは土下座をして謝罪した。
「いや、問題ない。
プリムはお前に、好きに生きろといった。
お前はその通りにしたにすぎん。」
「寛大なお心遣い、感謝します。」
まあ、俺はこいつの嫁を寝取った手前、叱ることはできん・・・。
情けない父である。
「それで、子供はもうできたのか?」
「は、はい・・・。
近々お伝えしようとしていたのですが。
報告が遅れ、申し訳ございません。」
スライチロウはばつが悪そうな様子で白状した。
スライチロウとしては、欲望に負けて自分勝手なことをしてしまったとでも思っているのだろう。
「いや、問題ないよ。
ただ、これからは遠慮なく相談してほしい。
父として、お前をサポートさせてくれ。」
俺はあっさりと許した。
---
この出来事は新たな発見だった。
俺だけでなく、子世代も子作りできるのだ。
スライチロウたちにはアソコが無いから、てっきり生殖活動ができないのだと考えていた。
思えば、プリムもアソコは無かった。ややこしいが、無いはずのものが無いのだ。
俺の息のかかった魔物は、局部らしいものは見えないが生殖は可能なのだろう。
あれ以来、スラジロウ、スラサブロウたちにも子作りを推奨した。
俺の一族は瞬く間に拡大することだろう。
そして今、新たな問題が勃発している。
近々起こるだろうと、薄々予測はしていた。
そう、寝取られ展開である。
「父上!
一大事でございます!
スラジュウロウが、父上の第6夫人様と不貞をはたらきました・・・。」
スライチロウは何とも気まずそうな顔をしている。
額から汗がツーっと滴る雰囲気だ。
スライムだから汗などかかないが。
「ほう・・。」
俺は額から汗がツーっと流れた。
なぜなら、2か月前、このスライチロウの彼女に俺は手を出している。
それについて今まで隠し通し、謝ってもいないのだ。
俺のこの動揺は、俺の出すフェロモンによってそのうちこいつに気付かれるだろう。
もしバレたら威厳に関わる。
今、謝ろう。
「あのな、スライチロウよ。
実は俺は、お前の嫁をだな・・・。」
俺が謝ろうと口を開いた。
しかし、スライチロウはハッとした顔をし、俺の話を遮った。
「父上!
その件ですが、お礼がまだでございました。」
ん・・・?
礼を言われる筋合いなどないのだが?
スライチロウは続ける。
「父上が私の第1夫人とおたわむれになったことは存じております。
1人だけ、わが子とは思えぬ遺伝子の強さでしたゆえ、すぐに気付きました。
その父上のお子が私の子を害獣から救ってくださったのです。
これは、父上が私の第1夫人に子種を授けていただいたおかげでございます。
私の第1夫人も、また父上とご一緒したいと申しております。
誠にありがとうございました。」
なるほど。
俺の孫よりも子世代のほうが力が強いのか。
これもまた発見である。
しかし、俺が息子の嫁を寝取っていたのがバレていたとはな。
まあ、息子夫婦の容認があるのであれば問題ないか。
何はともあれ、息子から失望されなくて良かった。
「し、知っていたのか。
まあ、俺の子種が役に立ったのなら何よりだ。」
おっと、話がそれた。
スラジュウロウが俺の第6夫人を寝取った件だったな。
「話を戻そう。
スラジュウロウの件だが、問題ない。
好きにやらせてみろ。」
「父上がそうおっしゃるのであれば、承知しました。
一族にはそのように伝えておきます。」
「うむ。
いつもありがとう。
頼りにしているぞ、スライチロウ。」
スライチロウは笑顔で一礼し、その場を去った。
スライチロウは長男として実によく動いてくれている。
隣にいるプリムも、スライチロウが去る姿を感慨深そうに見ている。
「スライチロウは本当に立派なのです!
さすが、ラル様の長子です!」
「そうだな。
やつは、一族の先導者となるだろう。」
プリムは俺を見つめて涙を浮かべている。
「急に涙なんか流してどうした? プリム。」
「いえ、ただ・・・。
ラル様と出会う前、あたしはただ無意味に野に生きるスライムでした。
でも、そんなあたしにラル様は生きる意味をくださいました。
ラル様がくださったこの子たち、みんなが幸せに生きていけるようにする。
それがあたしの生きる意味です!」
このユニークスキルを知るまで、魔物の気持など考えたこともなかった。
特にやることもなく生きる魔物は、退屈でとても苦しいのかもしれないな。
「そうか、それは良かった。
俺もあの日、町の外に出て、プリムと会えて、本当に幸せだ。」
俺は隣に座るプリムの肩を抱き寄せ、2つのゼリーをもみもみする。
くすぐったそうにしながら俺を見上げるプリム。
可愛すぎる。
嫁への愛が加速している。
互いの発情を感じる。
交じり合う視線。
俺はたまらずキスをする。
いつにも増して激しく。
「んっ。
んっ・・・。」
「愛してるよ、プリム・・・。」
---
俺は家族を幸せにしてやりたい。
スライム一族を拡大し、スライムの楽園「スライム王国」をつくりたいと考えるようになった。
<<作者あとがき>>
ご覧いただきありがとうございました!
☆をポチっとしていただけると大変ありがたいですm( _ _ )m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます