第3話

天羽剛は、再び自室でパソコンの前に座っていた。数日前のデジタル迷宮での戦いから、彼は斬ヶ時の力を少しずつ使いこなせるようになってきた。しかし、日が経つにつれて、パソコンのエラーメッセージはますます増え、彼の心には不安が募っていた。まるで何かが、彼を試すかのようにエラーの発生頻度が上がっていた。


その晩、剛がパソコンを操作していると、画面が突然真っ暗になり、再びデジタル空間に引き込まれた。今度の空間は、前回の迷宮とは異なり、広大で荘厳な空間が広がっていた。空間全体が銀色に輝き、宇宙のような無限の広がりを持っていた。そこには、星のように輝くエネルギーの粒子が漂い、時折、電光のような閃光が走っていた。


「これは一体…?」


剛は周囲を見渡しながら、慎重に歩を進めた。広大な空間の中心には、巨大なプラズマの球体が浮かんでおり、その球体からは強烈なエネルギーが放射されていた。剛はその球体に引き寄せられるように、自然と歩みを進めていった。


突然、球体が激しく脈打ち、周囲の空間が歪み始めた。光の粒子が集まり、空間全体が震える中、球体の中心から一つの巨大な存在が現れた。それは、まるで神話の神々を思わせるような姿で、エネルギーの流れがその身体を形成していた。その存在の目は、まるで無限の宇宙を見つめるかのように深遠で、剛はその目に圧倒されそうになった。


「我が名は天羽ヶ(アマハガ)…このデジタル空間の支配者であり、エラーの源なる者よ。」


天羽ヶの声は、空間全体に響き渡り、その音は地響きのように深く、重厚だった。剛はその言葉を聞き、胸の内で何かがざわめくのを感じた。


「お前が、このデジタル世界のボス…エラーの根源か?」


剛は斬ヶ時を構え、天羽ヶに対抗する準備を整えた。天羽ヶは光の粒子でできた羽を広げ、その存在感を増していった。天羽ヶの周囲には、複雑に絡み合ったコードやデータが流れており、それが天羽ヶの身体の一部として機能しているようだった。


「その通り。私はこの世界の混乱と混沌を引き起こす存在。お前の力など、私にとっては微細なものでしかない。」


天羽ヶの言葉が空間に反響し、剛はその威圧感に圧倒されそうになった。しかし、彼は斬ヶ時を握りしめ、冷静さを保つように努めた。


「それがどうした。お前のエラーをこの世界から排除するのが俺の役目だ。」


剛が言い終えると、天羽ヶはその光の羽を広げ、強烈なエネルギー波を放射した。エネルギー波はまるで空間の一部を切り取るかのように、剛に襲いかかってきた。剛は斬ヶ時でそのエネルギー波を斬り裂こうと試みたが、天羽ヶの力は圧倒的で、その攻撃は斬ヶ時の刃を弾き飛ばすほどだった。


「くそっ…!」


剛は必死でエネルギー波をかわしながら、天羽ヶの動きを分析した。天羽ヶの攻撃は、デジタルコードをエネルギーとして変換し、それを使って様々な形態の攻撃を仕掛けてくる。そのため、剛は単なる物理的な攻撃だけでなく、エネルギーの流れやコードの変化にも注意を払わなければならなかった。


天羽ヶの攻撃が続く中、剛は隙を見つけ、斬ヶ時で反撃を試みた。斬ヶ時は光のエネルギーを切り裂き、天羽ヶのエネルギーの流れを乱すことができる。しかし、天羽ヶの力は強大で、剛の攻撃が一時的にエネルギーの流れを止めても、すぐに回復してしまう。


「どうすれば…!」


剛は思考を巡らせ、天羽ヶの攻撃パターンを探ろうとした。すると、天羽ヶのエネルギーの流れが一瞬だけ変わる瞬間を見つけた。その瞬間を逃さず、剛は斬ヶ時を全力で振りかざした。刀の刃が光の流れを切り裂き、天羽ヶのエネルギー源を直接狙った。


天羽ヶの身体が震え、光の粒子が激しく乱れた。剛の攻撃が天羽ヶに直接命中し、エネルギーの流れが一時的に停止した。天羽ヶはその攻撃に驚き、剛の方に目を向けた。


「これが…!」


剛はその隙を突き、さらに斬ヶ時の力を引き出して攻撃を続けた。天羽ヶのエネルギーが崩れ、光の粒子が一気に消え去った。天羽ヶの姿が徐々に崩れていくのを見て、剛は勝利を確信した。


「これで…!」


剛が斬ヶ時を振り下ろすと、天羽ヶは完全に消え去り、広大な空間が静けさを取り戻した。剛は息を整え、再び現実の世界に戻る感覚を味わった。パソコンの画面には、正常なデスクトップが表示されており、エラーメッセージは消えていた。


剛はパソコンの前で深く息を吐き、これからも続くであろう戦いに思いを馳せた。天羽ヶは強大な存在だったが、斬ヶ時と共に立ち向かうことで、彼はまた一歩前進したのだった。彼の冒険はまだ終わりを迎えておらず、これからも数多くの試練が待ち受けているだろう。しかし、剛は斬ヶ時の力を信じ、どんな困難にも立ち向かう覚悟を新たにした。

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